【詩】 模型

黒く塗りつぶされた眼球で
裸婦の視線が水の深さを確かめようとする
すると満月と太陽は共に 夜に反射した

骨粉の中で
天を向くのは全ての頭
溺れるのは性のみ
骨を砕かれても
頭に昇る血

砂浜の中で感じる
この世界を歩いていた動物は
地に降りたなまけもの
緩やかに 木に登り始める亀

古代生物は
どんな進化にも関わらず
分断の苦しみに喘ぎながら
草原に生えた根や草から
天上へ指し示す性を理解していた

血が通う最後の場所で
血が通う最後の場所を
知ることになろうとは
死が残こしたものは心臓の音
死は全ての記憶を性に運ぶ音

それはさざ波とそよ風
どちらがはじめに
生命の問いへ挑んだのか
わからないように

春のふくよかな風が吹いていた時
波は既に立っていたのかもしれない
最初の泡が潮風を作り出していた
最初の呼吸が高波を上げていた

波のまた波を潜り抜け
風のまた風を掻き分け
やっとの思いで救い出した命の元に

老人の杖はふたつに折れて
天も地も 地の悟りを見た
新たな骨は両足の支えとなり
共に 天の芸術を見た

心の中で思うがまま
膨らんでいく孤独ですら
全てが等しい果てにあるではないか
仲間よ 同じ杖で立ち
同じ天を逝く 生命よ

行き場を失った一筋の流星が
群衆の中でも孤独に耐えられず
意識すらをも失ったような色で
恐怖を忘れて暗闇を進んでいく

どこから現れたのか
その小さな光は太陽に包まれて消えた
しかし月に大きな跡だけを残し
誰にも知られない涙ともなっていたこと

石像となった命は
魂に看取れられて
その暖かな光には
同じ暗闇があった

涙を味を確かめたように
石像の染みは増えていき
縮む時が来た太陽よりも
月の痕がよく見えていた

傷を急かされるくらいならば
いっその事
傷つければいいのだろうとも
許されはしない

それは夢でも刻まれたもので
夢からも急かされたもので
空想を蝕んで来ることからも
逃れられないように思える

ただしその目が捕らえている
苦しみを理解できないことに
性は答えてくれるだろう
見えない苦しみを伝えることは
あまりにも困難に満ちていると

白濁した水へ
止まない潮騒へ
最短距離を見て大草原へ

大地が光を揺らし
閃光で闇を分かち
虹の色は増えていくに違いない

近未来からまだ見ぬ可能性が呼びかけてくる
だからここからは見えない星たちの名を
どうかあなたから聞かせてはくれないだろうか

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