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キャリーケースを引いた女神

天気がとても良い。

温度も、湿度も、全てが丁度良い。
こんな日はなかなか巡り会えるわけではない。そしてこの天気の〔感じ〕が一番好きだ。
夏が近づく高まりと、春の爽やかな風とをどちらも味わえる。

あまりの開放感に、なんだかとても幸せな気分になって、無償に泣きたくなる。最高すぎて泣きたくなるって、何だよって感じだけれども。

こんな日は、お気に入りの服を着て、一番好きな香水を纏って、最後に気合いの口紅を。夏を感じるメロンフラペチーノを片手に、柄にもなくaikoとかを聴いちゃうくらい、浮かれてしまってもいいじゃないか。

ああ、幸せだなぁ。自分が満たされる方法で、自分を満たしている時間が一番好きだ。

こだわりは、多いくらいが丁度良い。

先日、素敵な女性に出会った。

「私の友達が泊まる場所探してるんだけど、おすぅの家泊めてもらえないかな?」

きっかけは一通のLINE。送り主は、私が尊敬している友人だった。彼女は自分の生き方を持っていて、毎日エネルギッシュき活動している。シンパシーを感じることも多くて、「ユーミンが好き」という運命のような共通点が発覚して仲良くなった。

そんな彼女が言うのだから、きっと素敵な女性に間違いない。私はすぐにイエスと答えた。
ちなみに、普段なら知らない人を家に泊めるなんてこと、私は絶対にしない。人見知りだし、そんなアクティブな人間では無いからだ。
でも、その時は何故か、「会ってみたい」と直感で思ったのだ。友人が、わざわざ私を指名してくれたことも、就活の最中、ちょうど刺激を求めていたことも、全てが引き合わせのような気がした。

「初めまして。」

初めて彼女を見たとき、なんて綺麗な人なんだ、と思わず見とれてしまった。

少し茶がかかった、柔らかそうなロングヘア。筋の通った鼻。薄い唇。私の憧れている顔立ちだった。

スーツにキティちゃんの小さなキャリーケースを持って現れた彼女は、奇妙な格好のはずなのに、とても様になっている。

人と話すのが得意のようで、この人見知りの私が、会ってすぐに打ち解けることが出来た。彼女のコミュニケーション力にリードしてもらって、最初からとても話が弾んだのを覚えている。

47都道府県に1人以上友達を作りたい。
人を集めてパーティーをすることが好き。
キャンドル屋さんとワインバーで働いている。
海外でたくさんの景色を見たい。
好きな服を着て、好きなアクセサリーをして。
和服が好きで、美術館が好きで、水タバコが好き。

彼女はたくさん〔好きなもの〕を持っていた。
そしてアイデンティティを大切にしていた。

以前も言ったが、やはり、好きなものに囲まれて、好きなものに自信を持って、生きている人は美しい。
確固たる軸があること。たくさんの自分ワールドを持っていること。

私に本を進めてくれた先輩(『とるにたらないこと』参照)も、今回紹介をしてくれた友達も、そして家に泊まりにきた彼女も。

みんな個性的で、アイデンティティを大切にしている。
そしてそんな人と会うたびに、私は刺激を受け、自分のことを大切にしないとな、と思わされるのでおる。

彼女の素敵なところをもうひとつ。

彼女はサプライズで人を喜ばせることが上手い。家に来るなり、「お世話になりますの気持ちと、私ってこんなことやってます、の紹介を込めて」と、差し出されたピンク色の小包。

何だろうと開けてみると、それはピンク透明なケースに入った、これまたピンク透明のジェルキャンドルだった。なんと彼女の手作り。

ピンクのジェルは、気泡がまるでラメのように、きらキラキラと輝いている。
『ピンクのキラキラ』に弱い私はぎゅんと心を掴まれた。
仄かに鼻をつく香りは、私の大好きなバラな香りであった。

ああ、初めて会うというのに、私の好みのど真ん中に来てしまうなんて。

その瞬間、既に出会いに感謝している自分がいた。

さらに、別れの日。
家をでる瞬間に、「はい!これ。おてがみ書いたの。」と、軽やかに手紙を差し出してくれた。

白い紙に、大きなマリリンモンロー風のピンナップガールが描かれていて、周りにはハートがちりばめられていた。
一目で私が「好き!!)と感じるデザイン。
文字も、イラストも全て彼女の手書きなんだけど、それがまるで一つの作品のようで。
ものづくりが本当に好きでセンスがあるんだろうなぁと、脱帽した。

その手紙に書いていた言葉を、私は大切にしようと思う。

『私はあなたこそ、自分の軸を持ってものごとを判断している素敵な女性だと思うの。心のどこかでそれを誇りに思っているハズなの。』

最近、自分って何なんだろうとか、長所ってなんだっけ、とか、自分は意外と何も出来ないし残念なくらい普通で平凡な人なんだな、とか、自尊心を悉くへし折られていたのだけれども。

追い討ちをかけるように、自分より遥かに素敵な女性に出会ってさらに平凡さを自覚して縮こまってしまったのだけれども。

そんな素敵な彼女から、まさかこんな言葉をもらえるとは思わなくて。
忘れかけていた自分のアイデンティティを思い出すことが出来た。

私は、こだわりが強いし、「自分」というコアを大切に生きる人間だ。
良く言えば、軸がある。悪く言えば、我が強くて頑固。

でも、これからもこの生き方を貫いて行こう、それでいいんじゃないかしらって、改めて思う。

ぐるぐるとうねり回っていた道が、一本の真っ直ぐな道に戻った。

彼女は私のメシアだ。

次に会えるのは、いつだろうか。

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