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広州のロボットレストランから見える未来

中国では、近年ロボット開発にも力を入れています。今後、少子高齢化社会を迎え、日本同様に若年層の労働者不足が見込まれていることが背景にあります。

今回は、広州市内にあるロボットレストランの様子をレポートしたいと思います。

1. 広州のロボットレストラン

広州のロボットレストランは、白雲区というエリアに立地する大型ショッピングモール「広州百信広場」の中にあります。

ピンクを基調としたカラーリングで、入り口では、早速案内のロボットが出迎えしてくれます。

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中に入ると、エントランスの正面には、大きなガラスの奥で、回転しながら炒め物をする自動調理機械が縦2段の高さでズラリと並んでいます。

ガラスに張り付いて覗いていると、注文された料理の食材が次々に自動調理機械に放り込まれていきます。食材はグルグル回転しながら炒められ、出来上がると機械の下に置かれた皿に盛り付けられます。その後、皿ごとベルトコンベアで天井付近まで持ち上げられ、天井に張り巡らされたベルトコンベアーを通って注文したお客のテーブルまで運ばれます。最後は天井が開いて料理が上からスルスルと降りてくる…、という流れになります。

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その他にも、大きな皿の料理などを運ぶ配膳ロボットや、スイーツを作るためのロボットなどが店内で働いています。ただ、店内には、店員の影はなく…、という訳でもなく、それなりの数の従業員が働いています。完全に人の力を省くというのは難しいのでしょう。

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料理の数は意外と多め。表のロボットが作っていない料理は、裏で人が調理しているのかもしれません。また、エントランスに生け簀があって、海鮮の食材が泳いでいましたが、流石にあれはロボットでは調理できないでしょう。

ここでのロボットは部分的な工程を担っているだけで、どちらかというと客寄せパンダ的な扱いになのかもしれません。

また、肝心の料理ですが、有名シェフのレシピを完全再現しているということで、しっかり作られており、それなりに美味しくはあるのですが、やはりロボットが作っていると強調されているせいか、心なしか味気ない感じがしてしまいました。

2. ロボットレストランの悲哀

ところで、この広州のロボットレストラン、私は訪れるのが2回目になります。

最初に訪れたのは、2020年1月17日。

広州市の副都心部「珠江新城」地下に広がる飲食店街にオープンし、その当日に行ってみました。ただ、行ってみたものの、あまりの人の多さに怖気付き、外から外観を見ただけで帰ってきました。

当時のロボットレストランでは、店内に46種類のロボットが配置され、ロボットがハンバーガー作ったり、料理炒めたり、ご飯を炊いたりするとのことでした。

このレストランで調理に要する時間は3〜5分。
従来の店舗よりスタッフの数が1/5で済むということでした。

手がけているのは、広東省に拠点をおく大手不動産企業の「碧桂園」。

750人の開発チームにより、2億元(約32億円)を超える予算を注ぎ込んで開発しており、2年間で上海や深圳など中国各都市に1,000店舗以上の展開を目指していると目標を述べていました。

大量に広告費を注ぎ込んだのか、多くのメディアやインフルエンサーが集い、文字通り鳴り物入りのデビューを果たしたのでした。

しかし、恐らく、彼らにとっても予想もしていなかったであろう事態が、その数日後にやってきました。新型コロナウイルス感染症による武漢の封鎖です。

それから、1年半以上が経ちましたが、世界は依然、コロナとの戦いを続けています。

感染が広がると飲食店の営業が制限されるのは中国も同じです。飲食店の人手不足の問題が表面化する前に、飲食店にとって苦難の時代に突入してしまいました。

そして、ロボットレストランは、ひっそりと元の場所を離れ、郊外のショッピングモールにスケールダウンして移転していたのです。

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(2020年1月17日撮影のロボットレストラン)

3. 侮るなかれ、中国のロボットたち

さて、こうした話だけを聞くと、中国でロボットレストランに挑戦して失敗しただけの話に聞こえます。

「中国は色んな挑戦をよくやるよねー」で終わるところかもしれません。

しかし、この事業の主体が、飲食店ではなく大手不動産企業の碧桂園であるということは、一つ注目しておくところだと思います。

実は、碧桂園は、そもそもロボット開発に力を入れており、ロボットを実用化した開発エリアの実現を目指しています。

そうすると、こうしたロボットレストランの開発は、単なるハイテク飲食店の店舗展開による経営多角化を目指したものというよりも、もっと違う意味を持っているのだろうということが想像できます。

例えば、高齢者専用のマンションに設置された食堂。そこには、食材をセッティングすれば自動的に調理を行うロボットが備わっており、定期的に食事がマンションに張り巡らされたベルトコンベアーを通って各部屋に運ばれていく…、なんてことが可能です。

飲食店来店者の料理代に少しずつコストを転嫁するよりも、不動産売却時の費用に転嫁できる分、開発費用の回収はしやすくなるでしょう。

更に、彼らにとっては、こうしたロボット開発に関するノウハウが蓄積されていくということも大事なことでしょう。

最近見た動画では、碧桂園のマンション建設現場で、既に多数のロボットが作業を担っていました。

コンクリートを平面に均したり、室内の塗装や高層階の外壁の塗装、工事現場での掃除などを、イメージカラーのピンク色をしたロボットが行っています。そもそも工事現場では、人の力では運べないものや、大型の機械を使わないといけないものも多く、今後もロボットが代替していく余地は多く残っているような気がします。

このように、多くの挑戦が、知識と経験の蓄積を生み、今まさにハイテクを活用した新たなビジネスが生まれようとしています。

栄光と悲哀を含んだロボットレストランの1年半でしたが、ここで使われていた技術が、次は思わぬところで現れてくるように思えてならないのです。

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碧桂園動画「中国智能建造科技来了」より


《 ライチ局長の勝手にチャイナ!vol.18 》

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