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ゲームに一歩踏み込んだ音の演出を!「Unityサウンドエキスパート養成講座」一條 貴彰さんに話を聞いてみよう📚 UnityBook ライターズトーク (その3)

こちらの記事は「Unity本の著者に話を聞いてみよう!UnityBook ライターズトーク」書き起こし記事、最後は「Unityサウンドエキスパート養成講座」を執筆された 一條 貴彰さん とのお話を紹介します。

▲ UnityBookライターズトーク YouTubeLiveアーカイブ

▲ 書き起こし記事 (その1) 「Unity2019入門 最新開発環境による簡単3D&2Dゲーム制作」 通称『ひよこ本』を執筆された荒川さんとのお話

▲ 書き起こし記事 (その2) 「Unityの寺小屋」 通称『和尚本』を執筆されたいたのくまんぼうさんとのお話


ーー最後は「Unityサウンドエキスパート養成講座」ということで一條さんにお話を伺っていこうと思います。今日はよろしくお願いします。一條さん、自己紹介をお願いします。

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一條: 株式会社ヘッドハイという小さい会社をやっております 一條 貴彰といいます。僕もこのスライドに書いてある通り、和尚さんが提唱している「ゲーム作家」と名乗って活動しています。代表作はNintendo SwitchやPS4などで既にリリースされている「Back in 1995」というアドベンチャーゲーム、「デモリッションロボッツ K.K」というロボットアクションゲームを現在開発しています。合わせてインディーゲーム開発者向けに色々な開発ツールの紹介やサービス展開をお手伝いする活動も並行して行っています。

ーー早速「Unityサウンドエキスパート養成講座」の書籍紹介に入ります。こちらが目次ですが、基礎知識から始まりまして、Unityオーディオ基礎の解説、次の応用編ではAudioMixerの説明もありますね。さらにVRコンテンツにおけるサウンド、サウンドミドルウェアCRI ADX2を使ったサウンド管理やインタラクティブミュージックの実装まで対応しています。

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一條: Unityの元々もっているサウンドの説明とVR向けの拡張、CRI ADX2の説明という感じで三方からサウンドに関して説明している本になっています。音に関わる要素のみで390ページほど書いてありますね。

ーーこれはもう鈍器ですね(笑) ただ電子版もリリースされたのですよね。

一條: そうですね、書籍自体の発売は昨年の8月だったのですけども、色々と調整があり電子版が出たのが6月23日となります。電子版を求められる声が多かったので一生懸命対応しました。

ーーこんな人にオススメというところでコメントお願いします。

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一條: 「ひよこ本」でUnityという存在を知るところ、和尚さんの本でUnityを使った具体的なゲーム作りやアプリリリースの手順が説明されていますが、そこから一歩踏み込んで音の演出に興味があるという方にフォーカスした書籍になっています。

あと2つ目に、ゲーム産業での就職を狙う学生さんにもこの本自体教科書としても使えるようにしていまして、書籍は「自然界にある音をデジタル変換するということは一体何か」みたいなところから順番に説明しています。かつ日本のゲーム産業ではよく使われているCRI ADX2のガイドも付けることで就職用のポートフォリオにも役立てる、そんな形をイメージして作っています。

最後は本当にマジでサウンドを用いて自分のゲームに特徴を出していきたいという方に向けて説明しています。インタラクティブミュージックはAAAタイトルでも取り入れられ始めたのがここ10年とかそういう話で、それを推しとして入れたという方にはすごく適した本だと思っています。

ーー特にオススメのポイントはどこでしょうか?

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一條: サウンドの実装部分を具体的なゲームの場面ベースで説明しています。サンプルは3Dアクションアドベンチャーゲーム、VRタイトル、カードのソーシャルゲームバトル系のものという3つを用意していまして、それぞれに対して音をどう絡めていくかというのを解説しています。ガンガンにコードを書いていまして、便利な拡張メソッドを作りましょうなど、実践的な方向になっているというのがオススメポイントの1つです。

もう一つは日本のゲーム産業の中で広く使われているサウンドツールADX2の紹介も解説をしており、これから就職する学生さんや既にゲーム会社の中で働いていてADX2をこれから使う、あるいは使っているけれども実はあまり機能について知らないという方にしっかり読んでいただけるのが大きなポイントですね。

最後はスマートフォン向けのゲームだとAndroidは結構音の遅延が激しいですが、その対策方法が書いてあったり、「いっぱいサウンドデータがあります。フルボイスです」みたいなゲームの時にどうデータ管理するかという話も書いてあったり、モバイルゲーム開発現場にも対応しているという点がオススメです。1社に1冊みたいなイメージですね。

ーーAndroidの音の遅延に関しては音ゲーを実装する人なんかは一度は引っかかるところなんですよね。

一條: この本は実は音ゲーについては特に記載していないんですね。とはいえ、音というのは本当にあらゆるゲームの中で絶対実装しないといけない要素であるにも関わらず、中々取り上げてもらえない部分だったので、あらゆるジャンル、勿論音ゲーにも対応可能な知識としてまとめています。

▲更に詳しく知りたい方はこちらのnoteもどうぞ!


ーーここでサンプルプロジェクトの紹介をお願いします。

▲こちらにてUnityデモおよびADX2の設定を一條さんが解説しています

一條: こちらは3つ収録されているサンプルゲームの1つ、ソーシャルゲームをイメージして作られているサンプルとなります。

Unity本の著者に話を聞いてみよう!UnityBook ライターズトーク (7月27日号) - Unityステーション 51-5 screenshot

例えば、ボイスが流れるのですが、セリフの途中の特定のタイミングで女の子の表情が変わるように音声側にメタデータが仕込まれています。またカードをタップすると敵を攻撃するのですが、複数のセリフからランダムに再生され、効果音も攻撃の強さに応じて音が変わるようになっています。

Unity本の著者に話を聞いてみよう!UnityBook ライターズトーク (7月27日号) - Unityステーション 52-19 screenshot

ダンジョンが切り替わったタイミングでBGMが自然なタイミングで切り替わります。次は洞窟のダンジョンなのでリバーブ (反響)を設定しています。最後はボス戦ですが、ボスを倒したタイミングでシームレスにダンジョンクリアのジングルが再生されます。これらはADX2側で音の設定を仕込んでから、Unityに渡すという手順で対応しています。

Unity本の著者に話を聞いてみよう!UnityBook ライターズトーク (7月27日号) - Unityステーション 55-29 screenshot


ーー続きまして、一條さんにもいくつかエピソード紹介ということで質問をしていきたいと思います。あらためて書籍の執筆に至った経緯を教えてください。

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一條: Unityゲームプログラミング・バイブルという書籍でサウンドに関して20ページくらい書きまして。それと並行してUniteTokyo2018にて Audio機能の基礎と実装テクニック という講演を行い、その時に「Unityゲームプログラミング・バイブルにてサウンドに関して紹介したのですが、音だけの本があったら皆さん欲しいですか?」という質問をしたらオーディエンスの方から「欲しい欲しい!」と手が上がりまくったんですね。なので、狭いジャンルの本ではあるのですが、出版社さんの企画の方に通して頂いてこちらの書籍が誕生しました。

ーー読者の皆さんからの反響はいかがでしたか?

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一條: 例えば会社で新規のプロジェクトを立ち上げる時に音周りの実装を任された方から「この本が参考になり助かりました」という声を頂いたり、ADX2を使う担当になったという方が「これを読んで理解が進みました」という感じで、プロフェッショナルな現場でゲームを作られている方からの反響がすごく大きかったです。また個人でゲームを作られている方も特に音に拘りがあり、例えば作曲もやっていますみたいな方からもご好評いただけるのがこの本のユニークな点だと思います。

ーーこういう風なジャンルに特化した本は他にも色々出てきて欲しいですよね。

一條: 「Unityサウンド エキスパート養成講座振り返り ~単著ができるまで~」のスライド資料にも書いているのですが、もっと踏み込んだ本を皆に書いて欲しいという風に思うんですよね。最初はブログにポストして、好評だったらそれをまとめて同人誌にして、さらに最近は技術書典などのイベントに同人誌を出すと割と出版社さんが声を掛けてくれることもあるんですよね。そういうチャンスを作って、自分が大事だと思うジャンルの特化した本をぜひ書いて欲しいと思っています。

ーー今後の活動の予定 / 扱っていきたい分野はありますか?

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一條: 直近の活動としてはインディーゲーム開発者向けのウェブサイトというのを実は2017年くらいからずっとやっていたのですけども、今年の5月にライターさんを雇ってガンガン情報を出しています。

次は冒頭でも紹介しました「デモリッションロボッツ K.K」というタイトルのゲームは4人対戦のロボットアクションゲームで、ロボット同士がバトルするのではなくて街をどんどん壊してもらえる点数を競う少し変わったゲームになっています。これについても先ほど紹介したADX2を使っていて、BGMが展開に合わせてどんどん変わっていくということをやっています。

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もう一つのこちらは今日の本のテーマとは結構違うのですが、先ほどの「デモリッションロボッツ K.K」というタイトルでは「Genvid」というゲーム動画配信を拡張するSDK......と一言では言い表しにくいのですが、そういったものを使っています。これについては UniteNowでも登壇の機会をいただけた のですが、日本語バージョンにしたものを再度セミナーで発表しまして、資料もアップロードしています。気になる人はチェックしてください。


ーー最後の質問となってしまうのですが、これからこの本を読まれる方にメッセージをお願いします。

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一條: ゲームにおけるサウンドというのは拘れば拘るほど実はあまり気付かれない要素だったりするんですよね。逆に雑に実装されていると耳に刺さるとか同じボイスが連続して聞こえるとか自キャラが地形ハマりすると足音が連打されて音がぶっ壊れるとか、気を付けないとクオリティが低いと思われてしまう。もし「このゲームのクオリティ高いな」と思うことがあったら、ぜひ音の演出に注目してみてください。そして「自分も音の演出をやってみたいな」と思った時にこの本のことを思い出してもらえれば一番良いのかなと思います。

ーー音の演出に興味を持った方はぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。「Unityサウンドエキスパート養成講座」の一條さんでした。ありがとうございました。



ここまで「Unity本の著者に話を聞いてみよう!UnityBook ライターズトーク」書き起こし記事を3本お届けしました。皆さんがUnityを学習する上での書籍探しにお役立ていただけたら幸いです。

Unity本の著者に話を聞いてみよう!UnityBook ライターズトーク (7月27日号) - Unityステーション 1-11-56 screenshot

今回の企画は Unityステーション というUnityスタッフによる公式セミナーの配信チャンネルにおける一環で行われました。Unity初心者向けのライトな情報からマニアックなテクニックまで様々な内容を不定期にお届けしています。もし気になったら見てみてください。

自分としても今後、Unityを広めようと頑張っている人にスポットを当てて様々な方にお話をお聞きするような企画をやりたいと思っているので、もし興味ある方がいましたら、DMなどで気軽にご連絡いただけますと幸いです。青木ととでした。

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