将棋の封じ手暗号プロトコルが量子コンピュータに対応

リュディアです。今や暗号化は日常生活に欠かせないものです。皆さんが意識していないだけで様々なところで使われています。しかし報道でもし量子コンピュータが普及しだしたら、今使っているような暗号はすぐに破られるといわれているのを見聞きしたことはありませんか。実際には大げさな報道であって、どのような暗号でもすぐに突破されるというものではないのですが、量子コンピュータが進歩する前に耐性を持つ暗号を準備しておく必要があります。皆さんは次のような報道をご覧になりましたか?

この将棋の封じ手暗号プロトコルですが非常に重要なプロトコルです。将棋の封じ手についてご存じですか?将棋の対局を途中でいったん中断する場合、例えば翌日から再開する場合に次の一手を公開せず紙に書いて封じ手と書かれた封筒に入れて立会人に預けます。将棋で複数日にまたがるようなときに封じ手が使われます。再開の時にはこの封じ手を指すところから開始になります。なぜこんなことをするのでしょうか?

もし封じ手を公開して中断すると、次の指し手は中断の間、ずっと次の指し手を考えることが可能です。つまり考える持ち時間を長く確保できるわけです。通常、持ち時間は決まっており、その持ち時間の中で考えるゲームなので持ち時間に不平等が発生してはいけません。そのため封じ手というシステムがあります。

暗号化の分野でコミットメントという言葉があります。このコミットメントという言葉が将棋の封じ手を電子的に実現する暗号プロトコルです。つまり、以下の2点を実現可能な暗号プロトコルです。まず将棋の封じ手に即して書いてみます。

  1. 封筒に入れられた封じ手は封筒をあけて公開されるまで秘密が守られる。

  2. 封筒に入れられた封じ手は後から変更できず、公開された後は必ず指さないといけない。

次のこれを暗号理論的に記載します。「封筒に入れる」ことを「コミットする」という言葉に置き換えます。

  1. コミットした情報は公開されるまでは秘密 = 秘匿性

  2. コミットした情報を変更することはできない = 拘束性

今回、このコミットメント = 将棋の封じ手暗号プロトコルを量子計算機からの攻撃を受けても安全であるように設計した、というのがNTTのプレスリリースです。一方向性関数を使って実現したとのことです。ここから先に技術的な詳細は省きますが、私がこの報道を最初に見て思ったのは親書の扱いが変わりそうというものです。メールで書留のような重要書類を送ることができそうです。

これは画期的な方法ですね。NTTの展開に期待します。

では、ごきげんよう。

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