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たんぼLOVE「8月」

青い稲が風になびきます。
その青さは、季節によって変化します。
6月の、ようやく膝丈くらいになった青さ。
7月をすぎて、腰にとどくくらいの青さ。
丈が高くなるにつれ、色はうすくなります。
風がやめば、色薄い頃の田んぼは眠たげです。

ことしの8月はどうしたものか、
お盆をすぎても猛暑日がつづいています。
ふらりと田んぼに寄ってみると
7月よりもさらに青色が薄まって
さっと黄色がさし込んですらいます。
近づいて見てみれば、
おっと。
はやくも稲から、穂が出ているではないですか。
黄緑色の穂のおかげで、あたりが色明るく見えたのでした。

暑い暑いと思っていたのに。
こんな処にしっかりと、次の季節が来ていました。

穂に白い細かなものが、まといついています。
静電気でついた塵くずのようです。
お。
これは。
稲の花です。
塵くずなんて言って、ごめんなさい。
昔むかし、このささやかな白い花をみて
お百姓さんは、どれほど安堵したことでしょう。

田んぼを出て来た水に、指を入れて見ましょうか。
う~ん。
……ぬるい。
日ざしで温まっていました。
水まで秋、なんてことはありません。
でもこんな温くても、しっかり花を咲かせるのです。
そうだ、稲は海の彼方、南の国からやって来たのでした。
遠くには、入道雲の力こぶ。
蜻蛉が、すべるように頭上をいきます。

   
   風にゆれ水音にゆれ稲の花      梨鱗

   稲の花そらより広き国なくて



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