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【俳句】はるのゆき

   木々の間に春雪を踏む音すなり   梨鱗

気のせいばかりではありません。
立春をすぎると、なんだかやはり春らしい。
空の色なんて
チューブの中でカチカチに固まった
絵の具のようだったのに
このごろは水で溶いたようにゆるんでいます。

それでも今週は、たいそうな雪にやって来られました。
1月はほとんど降らなかったので
今年はじめての雪らしい雪は、立春すぎでした。

もとより雪の少ない地域です。
雪が降るだけでも特別ですが、春の雪となると
その言葉の美しさから、一層とっておき感がまします。
「はるのゆき」「春雪」
いい言葉を歳時記の中に埋め込んでおいてくれました。

つぎの日には、あっというまに溶けてしまいます。
正直言って、もっと長持ちしてくれればいいのに。
でも、こんなにあちこちがびしょ濡れで
それが日ざしにあたって眩しいのも、
溶けた水がそこかしこで音をたてているのも
雪の降った次の日だけなのです。
街中が、ちからづよい。

「雪解け」という言葉は、
何か月も雪に閉じ込められた地域の人たちが
使う言葉なのでしょう。
それでも、その言葉を使ってみたくなる
賑わしさです。

   雪解や吞みくち厚きカプチーノ





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