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"逃亡日記" 第12夜 日下部民藝館・落合陽一個展クロージング・パーティー潜入記


これは…新しい"祭"の形かもしれない

落合陽一個展を追いかけて、飛騨高山に行ったら、計らずも身体性と祝祭性(コンヴィヴイアリテイ)と"祈り"について思考するきっかけになった。今日はそんな話を。(…ちょこっと落合文体まねしてみた…マニアックすぎw😆)

落合陽一の…っていうか、メディアアートはその場にいって体験することがすごく大切だと思ってるので、仕事と体力が許す限り落合アートは追いかけてます。

今回の落合さんの個展は、なんと飛騨高山の日下部民藝館…片道約4時間…ギリギリ日帰りか⁈…などとを繰り返して考えてたところに飛び込んできた、最終日の"クロージング・パーティー"のお知らせ‼︎
え⁈日曜日じゃん‼︎
翌日午前中半休取って最終新幹線になっても絶対行くーー✨って脊髄反射で申し込みメールを送ったのが、"旅のはじまり"

…どうなったかって??
ちょっと長いけど、お好きなところから、読んでくださいね。

1 遍在する身体 交錯する時空間

今回の個展の正式タイトル……大丈夫‼︎落合さんの個展はいつもちょっと難しいタイトルだけど、観ればわかる✨ポスタービジュアルの力強さと美しさ。



"こんにちは"と心地よく古びた引き戸を開けると、そこはもう異空間…。

どっしりとした梁が走る吹き抜けの天井から伸びる"足長"の彫刻。低く流れるビートの効いたBGM…mush upされた唄や声やさまざまな時代の音楽(落合アートはいつもBGMがたまらない!)囲炉裏の内から溢れ揺らぐ光の渦(通称ワームホール)ターンテーブルで回る円空仏…一気に時空を超えるスピードにめまいがする。

ワームホール 噂では新宿の落合写真展会場と繋がっていたらしい


なんだこれ⁈めちゃくちゃテクノロジーに満ちてるのに、100年越えの古民家にすんなり溶け込んで、しかもめちゃくちゃ心地いい✨

囲炉裏のそばでスマホ片手にくつろぐ人、"見て見て!"とあちこちの展示に夢中なこどもたち、"まぁ懐かしいお家ねぇ…ハイカラな床の間も素敵"と微笑み合うおばあちゃま方、写真を撮る人、思索にふける人…

京都の"河井寛次郎記念館"も、おしゃれなおじいちゃんの家に遊びに来たみたいに心地よかったけど、ここはもっと空間の懐の深さを感じる。

落合さんの言葉を借りれば"日下部民藝館の木組みの広い伝統建築が持つ空間には空想上の余裕がある。それが空間の持つ豊かさであると思う。"(パンフレット『物象化する願い変換される身体(足長、手長)』解説より)

天井から伸びる手長は、採った銀口魚(鮎)をデジタルの波に変換中

豊かな空間…は茹だるように暑い夏と足先が凍るほど寒い冬を100回以上見てきたんだろう…酷な時代もあっただろうな。
それでも、この時空を超えて美しく調和するテクノロジーと古民具と光と風は、コロナで分断され傷ついた心とデジタルに引き裂かれた身体を優しく包み込んでくれる。自然と呼吸が深くなる。身体と心の中で何かが回復していくのを感じる。
…ここに来てよかった✨



※有料ですが、個展会場をかなりの高解像度3Dにしたコンテンツが公開されてます!
美術展1.5回分くらいの課金ですが、旅費のことを考えると合理的だし見応えあり‼︎


2 飛騨高山という街 -山と風と水と祈りのかたち-

飛騨高山は、山に囲まれ水が豊かな古い街。高地特有の強い紫外線が目に肌に眩しい。
時おり、さらりと乾いた風が通り、日陰に入るとひんやり涼しい。

宮川を渡る鍛冶橋で、手長さんと足長さんにご挨拶。思ってたより小柄でかわいいおじさまたちだった😊

手長・足長も異形の妖怪だけど、高山には古くから両面宿儺の信仰がある。
大和朝廷に反乱を起こした最強の勇者であり、農耕の守り神。
1つの頭に2つのお顔、4本の腕に、うなじとかかとがない2本の脚…。
今回の個展の予習をしてたとき、落合さんが"高山の街と文化、両面宿儺と円空見とくとわかりやすくなる"…的なことを言ってたので、千光寺にお詣り。

両面宿儺の石像は、思ってたよりずっと巨大で重厚で…でもどこか少年のような表情で、任那とか百済とか大陸の香りがした。
正面からのお顔は外に向かう戦いの貌…反対側は印を結んで内面や宇宙を想う貌…なのかなぁ。んー…"外面と内面"とか"陽と陰"とか"オンラインと現実"とか考えちゃいました。

両面宿儺の凛々しい横顔


印を結ぶ視線の先は、何を見つめておられるのかな…?



円空仏って、1本の丸太から3体作られる"量産型"(‼︎)の仏像だったんですね!(千光寺で初めて知ったw)
立ってる木を丸ごと1本使ったダイナミックな像もあるし、緻密に彫られた小さな像も、落合個展に"召喚"された有名な像もある…なかで、"貸出用"の素朴な仏像がふと心に残りました。死が身近にあった江戸初期…大切な人のために、誰かの命のために、祈る人たちの想いに寄り添ってきた仏さまたち…なんか切なくて愛おしくて。
どんなにテクノロジーが発達しても、人はきっと"祈る"んだろうな。


千光寺は、とてもよい風が吹き抜けていく心地よい場所で、かすかに雪の残る乗鞍岳(?)も見えました✨

深呼吸したくなる風景✨

…これだけ山と水の恵みがあれば、縄文時代からの狩猟採取文化の方が合理的だったのかも…だから大和朝廷の中央集権とは対立しちゃったのかなぁ…。 


3 クロージングパーティー -魔界の夜✨-

一般公開が終わった16時すぎ…再び会場を訪れると…すごい熱量の人たちが埋め尽くしてる‼︎…こんなに人数入れるのかー‼︎

"わぁ‼︎久しぶり‼︎""やっと会えたねー!""はじめまして‼︎"が交錯する。
コロナ禍で会えなかった懐かしい人たち、オンラインで繋がっててやっとリアルに会えた人、落合アートに魅せられた人たちとグルーヴを感じたくて集まった人たち、こどもも若い子もいいオトナも目を輝かせて、ドキドキしながら"その時"を待ってる…‼︎

予定時刻を少し過ぎた17時すぎ。視界のすみを、シュッと風のようによぎる黒い影

人々の歓声に目を上げたその時………2階の小窓にDJ落合降臨✨

筑波大准教授にして最先端の研究者、テクノロジーを社会実装する企業代表で、大好きなメディアアーティスト…が目の前でノリノリで踊りながらグルーヴを投下してくるーーー‼︎

初めの挨拶で、"手長、繊細なんで触れないように…あ。囲炉裏にも注意してくれたら、あとはだいたいOK"とか、"お酒足りてますかー?人間、腰を上下に動かすとグルーヴが生まれます!"とかのMC入るの、なんだこのテンション、超絶楽しすぎる🤣 

古民家に響くビート×めくるめく光のアート×くるくる回る円空仏…ここはいったいいつの時代でどこなんだ?

ワームホールに吸い込まれる人たちw

連投されるmush upされた謡、語り、演説、YOASOBIからTMネットワーク…
聞き取れただけでも、柳宗悦、坂口安吾、Mr.trump、岸田パイセンにグレタ嬢…風刺の効いたオトナのJoke、ここでしか聞けないInstallation music

…初めはオトナしく聞いてたけど、気づいたら踊ってたー🤣
(こんなチャンス、楽しんだモノ勝ちだもん‼︎年甲斐とかダンス下手とか言ってられない✨)

冴えた思考と未来を俯瞰する視線、ヨウジが似合って、ちょっとヤンチャでたまに毒舌…だけど心優しいサムライみたいな、落合陽一さんのことがやっぱ大好きだなぁ…生きてる間はリアルタイムで彼が生み出すアートを追いかけちゃうな…。(何の告白w)

こんなfabulousでコンヴィヴィアルで楽しい時空間がワンドリンク付き2000円って…日下部民藝館さんも落合さんもなんて太っ腹なんだーーー😆
ありがとうございますーーー‼︎

"来年また会いましょーーー‼︎"
YES‼︎落合さんのその言葉は、何よりも嬉しい😆‼︎きっとまたこの空間で‼︎

4 旅のおわりに 

ここまで読んでくださって、ありがとう。

めちゃくちゃ濃厚な体験だったけど、実質滞在は6時間。

途中で立ち寄った古民家カフェが、涼しい風が通ってとっても素敵で居心地よくて。
もっとまったりしたかったなぁ…。

旅の思い出に、日下部民藝館で一目惚れしたショットグラスを連れて帰ってきました。

高山の吹きガラス作家 安土草多さんの作品でした



アリスはウサギを追いかけてワンダーランドに行ったけど、落合さんを追いかけて行った高山には縄文時代から続く文化と自然と、最新のアートやテクノロジーを受け入れる懐の深さがありました。

今回の個展を観に行って、地域の文化と融合したアートの形(手長足長や円空仏は3Dデータから木工職人さんが削り出したそうです)や、地域の人を巻き込む祝祭感(クロージングパーティーの年齢層の多彩さ、日本中からの集結感)と身体性(グルーヴ!)を強く感じました。

新しい"祭"のかたちが生まれた瞬間に、立ち会えたんだなぁ…と、今も旅の余韻をたのしんでいます。

読んでくださってありがとう🌟ぽちぽち書いていきますね。