災害対策について。

 近年、洪水や土砂崩れなどの災害が頻発しており、多くの人々が生命を落としたり、住まいを失ったりしている。これらは社会経済活動にも甚大な損失を与え、持続可能な発展にとって深刻な脅威となっている。
 災害防止は国家的な事業として責務だが、これほど災害が頻発すると、本腰を入れて対策に取り組んでいるとは言い難い。自然災害が多い理由は、台風や地震、豪雨などの自然現象の多発に加えて、温暖化現象と地震による気候変動や地殻変動などの影響が指摘されている。
 しかし、それだけではない。第一にわが国は列島であり、山岳地帯から海までの距離が短く、河川は急斜面を駆け下りるため、溢水や洪水が起こりやすい地形的条件がある。これに森林の伐採や開発によって土壌の浸食が進むと、土砂災害のリスクが高まる。
 また河川の護岸工事やダム建設によって水の流れが変わり、洪水や干ばつの原因にもなる。さらに都市化や工業化によって大気汚染や温室効果ガスの排出が増え、気温や降水量に異常が起きる。
 前述のことから、災害は自然現象だけではなく、人工的な要素も大きく関係している。重要な問題は森林や河川の補強化や老朽化などに手入れの不足があると、水位が上昇しやすく、氾濫の危険性が高くなり、また河川の堤防や護岸が劣化すると、少しの雨風にも耐えられずに崩壊する可能性がある。
 国と自治体は地域の意見を考慮して、対策を行なう必要があるが、水防対策は不透明な部分が多い。住民には説明会も十分に開かれず、洪水があっても対処療法に終わる場合が多く、副作用の強いダム建設などが提案される始末である。
 近年、気象情報や地図は精緻になり、浸水や土砂崩れなどの危険箇所の情報も容易に察知できるようになっても、一向に災害は減る様子はない。本来はこれらの情報を十分に活用して、役所や土木関係者、消防・自衛隊などと連携し、一丸となって災害予防に立ち向かうべきである。
 最近は大雨などの天候情報があっても、行政や土木関係者が積極的に動いて、危険を予防する姿勢や行動が見られない。昔は危ないと思われる所には総動員体制で、雨風が降りしきる中、土嚢を積んだり、土砂崩れに対する補強を行なったりした。しかし、テレビの情報と警告は喧しいが、そういった光景はほとんど見かけない。
 50年も前から導入されている都市中心のプロムナード計画などは利権の塊であり、そのため無駄が多く、現実的ではない。自然災害に対する防止は国家的な課題であり、政府と自治体は透明性と説明責任を持って、災害対策に取り組む。

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