国民の生活を守る。

 これは政治家の口癖であるが、その実態はどうだろうか。昨年に引き続き、今年(2023年)も、物価が高騰し、国民の生活は苦しくなった。累計で3万2395品目の値上げがあり、1回あたりの値上げ率の平均は15%に達した。
 これは22年の2万5768品目の14%を上回る記録的な値上げラッシュである。総務省が発表する消費者物価指数も、22年12月は前年同月比で4.0%上昇し、41年ぶりの高い上昇率を示した。23年11月は前年同月比で3.7%も上昇した。
 物価が上がっても、賃金は上がらない。しかも、先の見通しは暗いというなら、国民は財布を固く閉めて、食うや食わずで生活防衛をするしかない。一方、企業は円安や価格の転嫁によって利益を伸ばした。
 24年3月期の企業の利益は3年連続で最高利益を更新し、内部留保額も現在の528兆円を積み上げるのは確実である。国民が何年も苦しんでいるのに、企業が大儲けするのは信じがたい。
 22年初頭から値上げラッシュは始まり、秋になって本格化した。この原因として新型コロナウイルス感染症による人手不足、ロシアのウクライナ侵攻、ドル高・円安、地球温暖化に伴う天候不順、便乗値上げなどの要因がある。
 しかし、これらだけでは説明がつかない。3000品目、6000品目の一斉値上げや便乗値上げなどには政策的な側面もあるだろう。また、原油や食料品の仕入れ先を変更するなどの努力や対策も見られない。
 とくに食品の値上げはひどく、行き過ぎやり過ぎと言える。消費者の節約志向が高まり、販売数量が減少したにもかかわらず、価格の高止まりが続いた結果、商品の回転が悪くなった。当初想定された年間3万5000品目の値上げも実現しなかった。
 岸田政権は、「新しい資本主義」を掲げて所得倍増論を唱えたが、それはすぐに資産所得倍増論にすり替わった。そして、いつの間にかデフレ脱却が旗印となっており、今にして思えば、物価2倍論だったと納得がいく。
 この2年間、政府も日本銀行も経済界も手をこまねいているばかりで、物価の上昇に対しては有効な手段を打とうとはしなかった。経済界は賃上げとインフレ対策には消極的で、一部は「デフレは病気だ」「デフレは悪だ」と喧伝し、政財官が一体になってデフレ脱却を推進した。
 こんな状況でも、政府は東京五輪大会、コロナ対策、物価高対策、大阪万国博覧会、再開発事業などで、相変わらず業界経由の巨額な予算を重ね、中抜きが横行しているのが実情で、無駄遣いが多い。
 インフレにせよデフレにせよ、国民の生活が第一である。

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