見出し画像

小説 『箱の中』 を絵画に

 木原音瀬さんの『箱の中』を読んだ。
 居ても立っても居られなくなったので、「感じたものを絵に表したい」と作品を制作しようと思い立った。

 木原音瀬さんの作品はどれも大好きで、今回絵画作品にした『箱の中』も勿論知っていたのだが、なかなか手をつけられずにいた。『美しいこと』『罪の名前』『コゴロシムラ』を過去に読んでおり、この『箱の中』という作品も気軽に読むべきでないと思っていたからだ。

 学期末テストと溜まっていたレポート課題も片付き始めた頃、『箱の中』を学校の図書館で見つけたのでいざ読んでみようと手に取った。

木原音瀬『箱の中』

 内容についてはのちに述べたいのだが、とにかくこの本を読んだ衝撃が大きく、ひどく感情が揺さぶられた。なんとかこの気持ちを表したいと改めて新書を購入し、好きな表現やシーンに付箋を貼り、そこから感じた情景をメモして絵で表現したい構図のイメージを固めていった。 
 大学一年目のアパートでは大型作品は作成できなかったので、春休みに帰省して久しぶりに筆を大きく動かせたのはとても嬉しかった。

「情」
M60,キャンバスに油彩

 上の絵は完成した作品だ。泡とともに水に浮かぶ二人を描いた。右が喜多川、左が堂野のイメージである。
 キャンバスの中を箱である四角形でしきり、その中に二人を配置し周囲の色は淡い色を使った。「檻の中」という章が大好きなので、四角の上下に檻をイメージして色を抜いた部分を作った。

 周りの植物は花言葉を大切にし、アイビー、桔梗、クローバー、カリンをメインに配置した。
 泡というと泡沫とも表されるように、すぐ消えることから儚いことの例えとして用いられるものだが、私はこの作品でその意図としては泡を表現していない。

よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。

 方丈記の一文であるが、中学で学んだこの文を、私は当時泡は消えたままで無くなるのではなく、消えては生まれ、生まれたら消えるという強いつながりがあるように感じたのを思い出した。水に浮かぶ泡つぶでなく、洗剤を泡立ててできたような多くの泡が繋がっている様子を表すことで、二人を繋げたいと思った。

【内容】
 痴漢の冤罪で実刑判決を受けた堂野と母親に請われるままに殺人犯として服役する喜多川の物語である。喜多川の一途すぎる愛情が胸が痛くなるほど切なく書かれている。互いの間に芽生えたほのかな感情はどのようなものなのかを考えさせられる場面が多い。


 小説の中の一場面を書くと言う案もあったが、結局小説全体の二人の情景を表現することにした。

 タイトルは「情」
情 という文字には多々意味があるが、「こころ」と言う意味合いを含んでいることに惹かれた。物語の中にも「情」という言葉は何度か現れており、それが「同情」なのか「愛情」なのかと分けられている。

 この『箱の中』という作品は深くて重くて切ない物語であって、余韻が凄い物語であると思う。是非読んでほしい作品であるし、このnoteを見てくれた方には私が描いた彼らがどう映っているのか、是非教えてほしいと思う。

 制作過程をtiktokにも載せているので、是非見てほしいです!!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?