父としっぽ

  父としっぽ   

 
家畜の往診を終えると、飲み始めてしまう父が、不意に大学時代の友人の卒論が「どんなしっぽの猫もしっぽの骨の数は同じ」ってテーマだったと話し始めた。
「それって一匹一匹触って数えたの?」と尋ねた私に、笑って「そうだろうなあ。」と答えていた。

何故かレントゲンで確かめるなどということは浮かばなかった。猫と言えば触って撫でてめでるしかなかったから。
(またまた酔った父の言うことはな…)と子ども心に思ったのに、いつまでも忘れられない。
アジトのようなアパートで、大家さんに叱られるまで一緒に過ごした(ぷー)という猫に始まり、しなやかに伸びたしっぽの猫とは暮らしたことがないのだけれど。


 こりこりと数えたくなる 
 どんな猫をみても
 その しっぽに触れて
 「この子のしっぽの数も?この子も?」
 季節を透過するレエスを重ねるように
 少しずつ遥かになる
 もう、確かめようもない
 父(あなた)に向かって


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