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岐阜県博物館ですよ

カエルクリエイターズフェスタの1日前の3月3日に岐阜県に着いて、それから見学しました。

12年前に一度行って、まあまあ古生物が展示されているけど写真があまり撮れないのは残念だなとか、なんだか館内が変わった造りや雰囲気だなとか思っていたんですが、それ以降も色々な展示や研究を行っているのは聞いていたので気になっていたのです。

今回久しぶりに行ってみると、レトロな雰囲気や独特なセンスはそのままに、恐竜の展示は見やすく充実したものに変わり、自然史展示全体も撮影可能になった上に改良や新展示が加えられていて、活発に活動していることがうかがえました。
岐阜県の(つまり内陸の山や川に絞られた)自然について、古い展示も新しく追加した展示も活かして細やかに解説しています。恐竜についても地域の自然についても(ここであまり詳しく書けないのですが歴史についても)よく知ることができる素晴らしい博物館なので、主に中部地方のかたはぜひ行ってみましょう。

これは個人的なことなのですが、12年前というと色々な動水博に行き始めた頃で、その頃岐阜の近くの都市に住み始めたために岐阜県博物館という山の中の博物館に行ったのでした。
それから今まで生活環境の大きな変化なども含んでいたのですが、その途中には見学や旅行の最中にも生活上の心配事に囚われて心の底から楽しめないというつらい時期があったのでした。
その頃は「こんなことをしていていいのか」という思いが常にまとわりついていたのですが、結局私にとって実になったのは心配の種のほうではなく「こんなこと」のほうでした。カエルクリエイターズフェスタにも2度も参加させていただき、「こんなこと」を続けていてよかった……と思いながら岐阜県博物館に向かったのでした。

木々の下、足跡とともに

バスを降りてからしばらく歩き、並木道と橋を渡って博物館のある「百年公園」に向かいます。

百年公園の中は雑木林です。3月の花を見て回れたらよかったのですが。

テキサスで発見された肉食恐竜が他の恐竜のあとをつけている足跡化石を再現した坂道の先に、なんだか街中のオフィスのようなビルが見えます。これが岐阜県博物館……の手前側の建物です。

建物に入ってすぐエレベーターに乗って、博物館というより公民館のような雰囲気の渡り廊下を通って本館に進むというちょっと変わった構造をしています。

特徴的な入館通路

受付にも化石がいくつか。真ん中の恐竜はテチスハドロスといって、ハドロサウルス類の中では特に小さいのは狭い島に適応したからだと言われていました(解説もそうなっていますが、近年これは単にごく若い個体でありもっと成長する余地があったことが示されています)。

廊下ではティラノサウルス科のアリオラムスの復元模型と頭骨が……とても明るい公共施設然としたところに。

と思ったら廊下の一部分だけ薄暗い展示室内を突っ切るようになっています。こういう込み入った造りの建物が独特な見学体験を生み出している気がします。

河辺壮一郎先生による恐竜の脳の研究についての展示があります。これは国立科学博物館や福井県立恐竜博物館にもない、ここならではの恐竜展示といえます。

休憩所にいきなりでっかいタマゴタケ。こういう「いきなりある展示」も独特です。

本館中央~自然展示室2

本館中央です。恐竜の展示の中心はメインホールなのですが、そこから離れたところにもこのユタケラトプスや、

ミノタウラサウルスという他で見かけないものがあります。

1800万年程前の謎の多い海獣デスモスチルスの骨格と焼き物のオブジェが並んでいますね。どちらも大地の産物ということでしょうか。
デスモスチルスは四肢を真っ直ぐ立てた古い復元になっています。この骨格より後の検討でカエルのような這いつくばったポーズだったということになり、さらに検討を加えられて海中を活発に泳いでいたのではとも言われるようになりました。この骨格も研究史上大事なものです。

メインホールの恐竜達も気になりますが手前の展示室(自然展示室2)から。

薄暗い室内、不思議なデザインで生物の系統を表わす展示ケース、古い標本……、かなり印象的な空間です。
壁際では並行して岩石の展示を行っています。また企画コーナーも大きなスペースを取っていて、このときはマツの仲間の展示を行っていました。

展示室の一番奥にはオオサンショウウオの液浸標本がひっそりと眠っています。1971年に洪水に巻き込まれて浮かんでいたのをすくい上げられて手当されていた個体だそうです。それだけ前の柔らかい生き物の体がこれだけ綺麗に残っている……。博物館の「残す作用」の力を示す展示です。
オオサンショウウオは岐阜の特徴的な動物なので、この他にも骨格やジオラマ、化石のレプリカなどが詳しく展示されています。
また他のもっと身近な動物のジオラマもあります。貝類、昆虫、植物、魚類など岐阜の生き物の標本が大事に展示されています。

岐阜の特徴的な花シデコブシです。もう少し後なら外で咲いているところが見られたのですが。

メインホール

さて、メインホールです!

ここのシンボルみたいになっている大きなイグアノドンです。有名な割にそんなによく骨格を見かけるわけではなかったりします。他は福井県立しか思い浮かばないな……。頭や胴体はテラス部分から、大きな手は床からよく見えます。足元にも小型恐竜の骨格がいくつも。

しかしオオサンショウウオもシデコブシもデスモスチルスも岐阜のものなのにイグアノドンもここにいるのはなぜでしょう?もちろん岐阜と関係があるからです。
これは白川郷のある白川村で発見されたイグアノドンに近いと思われる恐竜の足跡です。大きな足跡が長く続いている大規模なものです。これを発掘するための調査は湖をボートで渡ったり悪天候に見舞われたりといった大冒険であったと職員のかたに教えていただきました。
手前のケースには岐阜県と世界各地で発見された恐竜等の歯があります。岐阜県内でちょっと珍しいタイプの翼竜の歯が発見されていて、それに近い種類の骨格も展示されています。

まだまだステゴサウルスやアロサウルスの骨格等もあり、テラス側にも恐竜や翼竜のなんたるかを解説する綿密な展示があるのですが、きりがないのでここまでで。
どれも見やすくて詳しい、見事な恐竜展示です。

自然展示室1

では恐竜以外の化石を見に自然展示室1へ。なにか大きな二枚貝みたいなものがありますが……。

その中ではなんと星空の下に2体のパレオパラドキシアがいます。なぜ二枚貝みたいなもので包んでその内側に星空を描いたんでしょうね!?本当に不思議なセンスをした博物館です。
パレオパラドキシアは先のデスモスチルスに近い種類の海獣です。どちらも岐阜県内から化石が発掘されています。さらに最近瑞浪市でパレオパラドキシアの素晴らしい保存状態の化石が発掘され、現在クリーニングが進められたりPR映像が公開されたりしています。
こちらの骨格は比較的新しいポーズなので先のデスモスチルスと比較できるわけです。

県内で発見された日本最古級の岩石から始まって岐阜の自然の歴史を進んでいきます。

史上最大級の二枚貝シカマイアも岐阜県内で発掘されています。しかし薄くて広いので化石はみんなバラバラ、このような全体像が得られるまでかなり時間がかかったようです。

先程の足跡の主が暮らしていた森に生えていたであろう植物の化石も。さてこれを食べていたのでしょうか。

今度は哺乳類の足跡も。というわけで哺乳類の時代に入ります。といっても恐竜絶滅からだいぶ間が空きます。

オオミツバマツ(またはフジイマツ)という1000万年前のマツのマツボックリです!いくつものマツボックリがこんなに綺麗なまま埋まっているのです。

まるでタイムマシンから飛び出してくるようなヤベオオツノジカです。あまりこうやってほぼ同じ高さの床に立ったものを目の前に見ることがないので、本当にウマくらいのサイズのシカなのだということが感じられて迫力があります。

タイムマシン?のすぐ横に外が見える休憩所があります。おや?また突然何かあるではありませんか……。

ミツバチの巣の中の展示です。県の花レンゲソウに深く関係があるそうですが、なぜこの位置に……。前に来たときに強烈に印象に残った展示でした。
もしかしたら他の季節にならこの休憩所から花が咲いてミツバチがやってきているのがよく見えるのかもしれませんね。

骨格が綺麗に映り込みました。ヤベオオツノジカもこんな野山をあの巨体で突き進んでいたのでしょうか。

さてここからは今の岐阜の大地です。北アルプスの鳥や植物。

命巡る雑木林。

川の生態系。中央の角錐は太陽のエネルギーが小さな生き物から大きな生き物へ伝わっていくことを表しています。
他にも鍾乳洞などの展示がありますが残念ながら省略しています。

木々の葉と樹皮、材の様子。見分けがつくようになりたいものです。

外来生物の展示。タイワンタケクマバチという「新手」の姿もあります。
なんとこの博物館がある公園内でもアトラスオオカブトの遺体が見付かったそうです。「自然豊かなところで元気に暮らしてほしい」というつもりで放たれたのでしょうか、こんなに良い博物館のすぐそばで見識の低い行いがされたとは歯がゆいことです。

歴史展示フロア(今回は鵜飼いのみ)~帰路

自然展示をじっくり見ていたら上の階の歴史展示は駆け足になってしまいました。ゆっくり見ても展示室内は撮影は禁止なのですが、仏像と刀剣が見事です(ヒトの歴史のことになると急にミーハーなものしか分からなくなるな)。
しかしホール部分のものはおおむね撮影OKのようです。
特にこの鵜飼いの展示は、私のような生き物や大地の歴史にしか興味のない来館者にも注目すべきものですね。恐竜類の生き残りであるウが哺乳類であるヒトと密接に関わって、淡水の歴史の賜物であるアユを捕らえているのですから。
恐竜のひしめくメインホールを見下ろす位置ですから、そのことが如実に感じられます。

閉館時間を30分勘違いしていたので本当に大急ぎになってしまいました。あっ見逃したコーナーがあった!早く撮らないと!

また(京都市青少年科学センター以来の)サウロロフスだ!なんだか結局鳥脚類に惹き付けられてしまうようです。

百年公園の中の野山もその外も、館内で描かれていた素晴らしい自然をどのくらい保っていけるだろうか……、そんな心配をしつつバス停に戻っていきました。
キノコが切り株を分解して自分の営みを続けています。

水中を見つめるサギの姿に何か励まされました。


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