『ま』た俺のターン!〜趣味の話〜

 映画を観るのが好き。今やサブスク全盛の時代、手軽かつDVDよりも早く配信が始まったり、下手すれば配信限定で傑作が公開されたりと腹立たしくも娯楽に富んだ時代になったなと常に思う。一方で、レンタルDVDを借りに行くことがなくなったり、劇場公開されない作品があるのはなんとも物悲しい気持ちになる。“レンタルビデオ屋”が概念として霧散していく日も近い。

 レンタルDVDの良さはなんといっても作品を探しているあの時間である。棚にズラリと並べられたDVD群から、あれかなこれかなと作品を探っていくこの探索感。当然、最新の話題作なら入口早々にドドンと多くの本数を置いてあるのだが、数年前に公開されたものやウケが微妙なものは棚の中にごちゃりと混ざっていたりする。これを探し出すのが楽しい……というより、これらにたどり着くまでに出会う作品と触れ合う時間が楽しい。
 なんとなく観損ねていた作品やビデオスルーとなった作品、知らない間に出ていた続編、あからさまなパチモン邦題にうっかり訴えられてほしいパロディ作品など金銀財宝のオンパレードから取捨選択をしてレジに借りに行く体験を込みでレンタル屋に行っていたといっても過言ではない。もちろんそれ相応の数くだらない作品を引いたし、本当に観るに堪えなければ止めればいいと思える程度の金額で借りられたのも大きい。

 だがしかし、やっぱり映画は映画館で観たい。もはやこれは私のワガママでしかないが、あの空間、あの音響、そしてそれなりの金額を支払い覚悟を決めて観るまでをセットとして鑑賞する映画館での経験は何物にも代え難い。面白い作品と出会えるのがいいに越したことはないが、脳が痺れるくらいのドハズレを引くのもたまらない。あれはいいぞ、「いつか面白くなるだろう」と観続けて場内が明るくなった時の気の抜ける感じがいい。噂に聞くととのうってのはきっとアレのことだろう。
 それに映画館はあれがいい、予告編が見られる。普段自分の琴線に触れたものしか劇場情報や公開日の収集をしないから、こうある程度ランダムに向こう側からピックアップされたものを見ると「おっ、これもなかなか良さそうだな。」と観たい作品が増えてありがたい。まぁ、大手シネコンとなると予告編のローテーションがその作品が公開されるまで変わらなかったり、配給元の推し作品がジャンル問わず長期的に流されたりするのであんま「行くたび観るたび最新の情報!最高!」とはならないんだけど。鈍色の青春時代を送った人間に青春恋愛映画は眩しすぎるんだよ。

 あとちょっと面白いのが映画館で流れるその地元の広告。地域の特色が出ているというか、ものによってはとてもハンドメイドで微笑ましい広告が流れたりもする。ウワーッ!会議室みてーな音!!ってのもままある。あれもまた面白い。無論、あの広告費も映画館を運営する資金になっているのであれらを無碍にしたり、ましていらないだのというのは失礼である。でももうちょい収録はちゃんとしてほしい。
 ちなみにアレ、同県内でも同じ広告が流れているとは限らないのであれらのCMのモノマネは内輪ですら伝わらないどころか、SNSでツイートすると割と場所がバレるのでそこいらを隠している人は気をつけたほうがよかったりする。シネコンとて同じCMを流していないし、半券もってはしゃぐ忍者は日比谷シャンテでしか流れていない。


 映画を観る、という娯楽に果てはない。同じ作品をずっと観ていてもいいし、最新を追い続けてもいい。最近では考察するのも面白いらしい。
 確かにあまり安価な娯楽とは呼べないが、それでも体験する価値は大いにあると私は思う。きっと今日も、明日も、これからも、映画を面白がって生きていくのだろう。

 エンドロールを観ながら死ぬ。これでいい、これがいい。