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一通の手紙から動きはじめた気持ち

遡ること5年前。


新しい年が明け、末っ子の成人式を目前に控えていたある日、
我が家に一通の手紙が届きました。



差出人は義母。




スープの冷めない距離に住んでいるのにこんな方法を取る時は、決まって私への不満が溜まっている時です。



喋り口調で書かれたソレはなぜかいつもの白い便箋ではなく400字詰めの原稿用紙に鉛筆書きにされたものでした。



1枚目は用紙が上下逆さま。
誤字脱字も目立ち、所々、消しゴムで消された箇所も有ります。
もちろん、内容は支離滅裂。


切羽詰まった状況で書いたのが、ひと目でわかります。
彼女の心のありようが2枚の原稿用紙にビッシリ。


その時ばかりは、あまりにも酷い内容に愕然としました。
投函するまでの気持ちを考えると…
想像するだけで震えました。


いつだったか…
ポストに投函するより手っ取り早いと思ったのでしょうか⁉︎
坂道が多い我が家までの道のりを自転車をこいでやってきた時もありました。

手紙を握りしめたまま、彼女が玄関口に硬い表情で立っていたこと…今でも忘れません。

そんな彼女の理解し難い行動に長年悩みながら…
どうしてそうなるのか…
いくら考えても解決の糸口は見つからないまま。
年月とともに彼女への不信感だけが募っていくばかりです。


一方で
夫はこんな人だと最初から諦めています。
母親に反発したらもっと事態は悪くなるから…と。
こちらの望むようなアクションはなかなか起こそうとしません。

彼女の性格を知っているからこそ。

夫婦間でどれだけ彼女のことで揉めてきたことか…
我が家に何通、手紙が届いたでしょう。
一度や二度ではないのですから…

残しておきたい手紙ならともかく、読めば読むほど、情けないやら、悔しいやらで…
ある種の挑発とも受け取れるような言葉の数々、胸に突き刺さる文字の羅列に思わず読む手が震えるほど。

最初に来た手紙は、気づいたら私の手の中でクシャクシャになっていました。


私の実家に手紙を送りつけていた事は今でも忘れられません。
結婚して10年ほどだった頃です。



『娘さんにどういう教育をされてきたのでしょうか。』


その手紙には
私のやることなす事、気に入らないという内容。まさにそれは両親へのクレームでした。

それを読んだ母は、腹を立てるどころか、私にアドバイスをくれたのです。

「お義母さんは、かわいそうな人なんやね。ankoも大変だろうけど、この手紙で一番悲しい思いをするのは○○さんだよ。」

○○さんとは夫のこと。
その手紙で一番心を痛めるのは夫なんだと母は言いました。

「心を乱さず、しっかりやるべき事はやりなさい…」
と。

「決して同じ土俵にあがってはいけないよ…」とも付け加えてくれました。

そんな事があってからも、両親は以前と同じように義父母との付き合いを続けてくれました。
言いたい事は山ほどあっただろうと思いますが、そんな事には全く触れず、どっしりと構えていてくれたのです。

それ以降も義両親からの要求はエスカレートしていきます。

長男の嫁らしく行動しなさい!
私たちを一番に考えなさい!

そんな事が書かれた2枚の原稿用紙。


『嫌い』

『不幸』


といったワードが随所に散りばめられています。

末尾には
『返事を書いてよこしなさい。』
とも付け加えられていました。

手紙が届いて2日後


「返事はまだか!」

と、今度は義父から怒りの電話。

すでにその時、私は覚悟を決めていたのです。
いつか言おうと思っていたことを伝える時が来たんだ!と思いました。


受話器を持つ手に力が入ります。


「あの手紙の返事は書けません。
ただ、夫と結婚できた事。
3人の子どもに恵まれた事。
それはお義父さんとお義母さんがいたからできた事です。
夫を産んでくれてありがとうございます。
手紙の返事にはならないかもしれませんが、それだけはお伝えしたかったので…
今まで色々とお世話になりました。」

信じられないほど、スラスラと言葉が出てきました。ある種の興奮状態だったのか…声が震えているのが自分でもわかりました。


「ん、あぁ〜」

電話口で義父はモゾモゾ…
後ろで義母が何やら叫んでいます。

「もうこれ以上私からお話しする事はありません。あとは〇〇さんに全てお任せしていますから。」


そう言って電話を切りました。



その時からです。



もう離れよう



そう思いはじめたのは。


もう諦めよう。
そう決めて、夫の両親との間に自分にしか見えない境界線を引きました。


どんなにぶつかってもなんとかなるだろう〜
長年、そう思っていました。
義両親との円満な関係を築いていく事がみんなの幸せに繋がると思っていましたから。


でもあの手紙を読んだ瞬間にもうダメだ…
そう思ったのです。
充分やってきた結果がこれなんだと思うと不思議と諦めがついたのです。
相手に期待するのはもうやめようと。

ある意味、その手紙に背中を押してもらったから今があるのかもしれません。


そんな事があってからというもの、ますます義両親の暴走は加速し、私が手を引いた事で夫への風当たりが強くなったのはいうまでもありません。

あの手この手で私を何とかなだめようと近寄ってきましたが、もう応じる気持ちにはなれませんでした。


義父が亡くなり、実家も処分した今、義母は施設で過ごしています。
コロナ禍ということもありますが、今はお互いベストの距離感を保っています。
義母も今のところは元気に過ごしているようです。


あの時、母から
同じ土俵に上がってはダメ。
心を乱さず、やるべき事はしっかりやりなさい。

そう助言してくれたことで、何とか夫と一緒に子ども3人を育て上げることが出来ました。
今は第三者の力もお借りしながら自分たちの生活ペースを守っています。


母の助言には、子育てや仕事の上で人付き合いには欠かせないヒントがあります。

相手を非難するだけでは何も始まらない。
大切なものを見失わないようにとの思いがつまっています。


今は私も姑の立場にいるので、義母とのことがたまに頭をよぎったりすることもありますが、辛い経験もあの時の私には必要だったんだと思えます。




もうすぐ締め切りだということで、noteで出会った企画に参加してみようと思い立ちました。

ららみぃたんさんのステキな企画

#一元観エピソード

に私も参加させていただきます。



noteの街の誰かに伝われば…と思います。


最後まで読んでいただきありがとうございます。




















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