生成AIと人との向き合い方


1.生成AIは人間の脅威になりえるのか?

生成AIに関してX(旧Twitter)上で見られることが多くなってきました(個人の主観ですが、特に絵関係が多く見られるように感じます。生成AIかどうかに関わらず、テキストと絵(画像)を比較した場合、絵(画像)の方がSNSでは拡散しやすい印象があります)。ただし、SNS自体の特性を考えると、SNSで生成AIの脅威は過大評価(正確には、脅威を過大評価することで煽っている方々の声が大きく見えているように感じます)だと感じており、声の大きい人の言葉を鵜呑みにするのは少々危険だと思います。

生成AIに関しては、以前に生成AIについて書いた他のnoteで、生成AIに関する書籍について触れましたが、例えば、今井翔太氏の『生成AIで世界はこう変わる』という書籍では、5章構成のうち、"第3章 AIによって消える仕事・残る仕事"、"第4章 AIが問い直す「創作」の価値"と、ある程度紙面を割いて説明されています。
そして、同じく生成AIを取り上げた書籍である西田宗千佳氏『生成AIの核心 「新しい知」といかに向き合うか』でも取り上げられていました。話題として、取り上げる必要がある話題であるということなのだと思います。
ただ、このような話は生成AIが初めてではないと考えており、他のテクノロジーが生まれた際にも起きていたのではないか?と考えています。

今回の騒動に結び付くかどうかは分かりませんが、この動画と重なる部分があると感じました(もう何度も私のnoteで紹介していると思います)。

知性を持つ機械を恐れるな、協働せよ

この動画で話されているガルリ・カスパロフ氏は、元チェスプレイヤーです。同氏に関しても、私が過去に何度かnoteで紹介しています。

過去に取り上げた私のnote

「決定力を鍛える―チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣」について

AIについての個人的見解

生成AIによるSNSの創作関係の話題を見ていると、今回の動画が2017年と少し古いことを加味しても、中々示唆に富んでいる動画だと思います。私も、この手の話は、ある程度普遍性があると考えています。
上記動画の冒頭に出てくるのは、人間の代わりにコンピュータがチェスを指すチェスコンピューターに関する歴史です。
カスパロフ氏は、1985年にドイツのハンブルクにてチェスの公開同時対局を行い、(その当時の)世界最強のチェスコンピューター32台と同時に対局し、全対局に勝利したそうですが、その当時はそのことは驚くに値しないとされたそうです。
ところが、その12年後、たった1台のコンピューター(IBMが作成したチェス専門のスーパーコンピュータ、"ディープ・ブルー")相手に敗北しています。(1996年の第一戦では、カスパロフ氏が勝利しました。敗北したのは1997年に行われた第二戦です)。この流れは、コンピュータチェスの進化の歴史と捉えることも可能だと思います。

参考 ディープ・ブルー対ガルリ・カスパロフ

ただし、チェスに関しては、カスパロフ氏は著書で、トップクラスの棋士と対局して勝利する際に、そこまで高度なアルゴリズムを必要としない競技であることを記しています。

実に30年をかけて、私の愛するチェスは力づくの高速探索が威力を発揮することが明らかになった。最も優れたプレイヤーを破るために、機械は戦略的な思考を必要としなかったのだ。ディープ・ブルーの場合も、当初は膨大な労力を投じて評価機能の調整や序盤のトレーニングが行われたが、数年後に新世代のチップが登場すると、そうした取り組みはほとんど無駄だったといいう気の滅入るような事実が判明した。良くも悪くもチェスは、チェス・マシンに速度以外の解決策を探させるほど深いゲームではなかったのだ。それは業界の多くの人を嘆かせた。

『DEEP THINKING〈ディープ・シンキング〉人工知能の思考を読む』 第4章 機械にとって重要なことは? より引用

2.人間とコンピュータとの協働へ

神話からSFまで人間対マシンの戦いは生死を分ける問題として しばしば描かれてきました
(中略)
機械が家畜や手作業の労働に取って代わっていった時代とは異なり
今では 機械が学位や社会的影響力のある人間の後釜を狙う時代になっています
マシンと戦って負けた人間としてこれは素晴らしいニュースなんだと お知らせしたい
いつかは どんな職業も同じようなプレッシャーを経験する運命にあり そうでなければ 人類が進歩をやめたことを意味します

ガルリ・カスパロフ 『知性を持つ機械を恐れるな、協働せよ』の日本語字幕より引用

"ディープ・ブルー"との対局後、カスパロフ氏は人間とチェスコンピューターがタッグを組んだ"アドバンスド・チェス"を考案します。驚くべきことに、アドバンスド・チェスの最初の大会はカスパロフ氏がディープ・ブルーに敗北した翌年の1998年に行われています。
(ここまで早くできたのは、カスパロフ氏の先見性の高さの他に、カスパロフ氏の師匠であるミハイル・ボトヴィニク氏が工学者であり、AIに携わる研究をされていたことも影響していると思います)

元々、彼の先生であるボトヴィニクは工学者で、コンピューターの初期の時代から開発に携わっていたこともあり、カスパロフも常にその知見を触れていたはずで、折に触れて様々なエピソードが紹介されている。そんな背景もあって彼は多くのチェスソフトと対戦してきた。

『DEEP THINKING〈ディープ・シンキング〉人工知能の思考を読む』の巻末に掲載された(将棋の)棋士である羽生善治氏による解説より引用

この、「人間とコンピュータとの協働」という発想は、マイクロソフト社の提供するMicrosoft Copilotの発想に近いと思います。先ほどの言葉を参考にすると、「人間と生成AIとの協働」となると思います。人間と生成AIがタッグを組んで、互いの長所を生かしあうという発想はあっても良いのではないでしょうか。

3.参考文献

DEEP THINKING〈ディープ・シンキング〉人工知能の思考を読む Kindle版

生成AIで世界はこう変わる (SB新書) Kindle版

生成AIの核心 「新しい知」といかに向き合うか (NHK出版新書) Kindle版


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