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新型コロナで見直される日本的雇用の価値

新型コロナウイルス以降、米国では失業者が相次いでいる。失業保険の申請数は8週間で3600万件を突破し、5月の失業率は20%に達する可能性もあると言われている。日本においても、その割合は一桁%にとどまっているが、失業者の数は増えつづけている。

こうしたなか、FRBのパウエル議長はオンラインセミナーの講演で次のように述べている。

"失業が長引けば持っているスキルの価値がなくなり、人脈も失われるため、労働者のキャリアに傷がつくか、終わる可能性がある。"(引用

実にアメリカらしい印象を受けた。政府が最も懸念しているのは雇用の喪失そのものではなく国民のキャリアを傷つけてしまうことなのである。働く側もキャリア思考を持っていて、彼らは主体的にスキルを身につけ仕事を選択する。企業としては人材の流動性が高くリストラもしやすい。

一方で、日本の場合はどうだろうか。おそらく政府は雇用をどのように創出するかという観点で考える。働く側は誰かから仕事を与えられているという意識が強く、彼らは受動的あるいは機械的に仕事をこなす。企業としては彼らを歯車のように働かせる代わりに守られた環境を提供する。

最近では日本においても若者を中心にキャリア思考をもつ人が増えているが、新型コロナウイルス以降、個人事業主や派遣社員など、いわゆる守られない人たちの問題が顕在化しており、改めて日本における雇用の価値が見直されている。この状況で日本が世界と比べて失業者を抑えられているのは戦後の終身雇用が根付いているからこそである。

もちろん、個人で考えれば自分で作るキャリアを歩んでいくことが理想である。しかし、社会全体でみたときには守られる雇用のあり方もやはり重要なのだと気づかされる。新型コロナウイルスをきっかけに、どちらか一方を極端に否定するのではなく、双方が融和した新しい雇用の形を考えていかなければならない。

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