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エストニア滞在日記 ㊗️鍵GET!からの泥酔

14日目。朝起きて定例のゼミが開かれた。今回は日本からリモートで参加した篤彦が担当する番で、相場のテクニカル分析についての講義と、新年の抱負について披露した。篤彦は独立遊軍武蔵の一員で、今回エストニア滞在のメンバーではないが、何かあるごとに健友からタスクが振られ、会社のことを手伝ってもらっていた。

「今年の抱負は『結婚』です!」と篤彦が発表すると、みんな、おぉ〜と驚いた。篤彦には長年付き合っている年上の彼女がいる。前に僕も一度だけ会ったことがあり、その時は短い時間だったのだが、おしとやかで素敵な女性であったことを覚えている。哲誠に続いて篤彦も結婚かぁ、と全くその気のない僕はただひたすら感心するだけであったが、そういえば、哲誠はなぜか篤彦にだけ自分が結婚することをまだ告げていないのであった。結局この時もそのことは言わず、ゼミはそのまま終了した。ただ、忘れているだけかな?

ゼミの後は哲誠と昨日と同じカフェに行って作業しようとしたが、席が一杯で、近くの別の店に入ることにした。モールのなかにあるその店は、小皿からメイン料理、デザート、お酒までが何でも揃ったまさに大食堂という感じで、自分で好きなものを選んでとるスタイルの店だった。モーニングの時間だったので、クロワッサンとコーヒーをチョイス。普段あまり朝食は食べないのだが、この時は雰囲気もあってかやたら美味く感じた。初めてのエストニアモーニング、心地いい。

食後はモール内のwifiを使って作業していたが、やっぱり通信速度が遅く、哲誠と「遅すぎて仕事にならんな。」とぶつぶつ言っていた。エストニアは基本どこにでもwifiが通っているが、どこも遅いのだ。

そんな低速wifiで低速に作業をしていると、健友から突然呼び出しの電話が入った。どうやら不動産のおっちゃんから連絡があり、家の鍵をもらえることになったらしい。哲誠にそのことを告げると「きた〜!」と廃人生活からの脱出を喜ぶかのような声を上げた。やっとあの牢獄から抜け出せる。気持ちを高ぶらせながら二人で宿まで戻った。

宿に戻ると健友も興奮状態にあり、ただ、孝暁だけが何だかよくわからないという感じで冷静であった。それもそのはず、孝暁は家のなかも見ておらず、自分がこれからどこに住むのかもわかっていないのだった。あの豪邸を見たらAI人間の孝暁でもさすがに驚くだろうなぁ、と思ったが、その反応はあとの楽しみとっておこう。

健友から家の契約について簡単な説明があり、契約金をもって哲誠と二人で家まで行ってほしいとのことだった。1ヶ月の家賃は何と20万円超。1人あたり5万円と聞くと何だか普通な感じを思い浮かべるだろうが、日本では優に倍以上はかかるであろう広さと豪華さで、そんな豪邸に安く住むことができるエストニアの良さなのであった。

ATMで引き出した4人のお金をかき集め、100万円近い現金を手に哲誠と家まで向かうと、家の前でおっちゃんが立っていた。やっぱりこの時もTシャツジーパン姿でポケットに手を突っ込んでいて、余裕が感じられる出で立ちだった。ところが、前回とは変わって今回は何やら上機嫌な様子。前回にはみられなかった笑顔が顔から全面に溢れている。契約がまとまって嬉しいのかな、と思ったが、聞いてみるとバケーション帰りでテンションが上がっているようだった。欧米人らしい。

家に入ると、家の状態に問題がないかを一通り確認し、隣に住む優しそうなママさんオーナーを紹介されて、契約書の説明へと移った。そういえば、英語での不動産契約の立ち会いは初めてだ。家賃など簡単に読み合わせしてもらった。この時、銀行口座はもっていなかったが、おっちゃんが毎月家に回収に来てくれるということで、支払いを記録する契約書を失くさずにとっておいてくれと言われた。最後、現金100万円相当をおっちゃんに手渡し、おっちゃんが手で数えて、確認したあとに鍵を受け取って無事に契約が終了した。別れ際、おっちゃんはさらに上機嫌だった。バケーション帰りですぐにまとまったお金がキャッシュイン。僕でも嬉しい。

宿に帰還して、無事に契約が終えたことをみんなに報告し、夜は祝いもかねて旧市街のステーキハウスに行った。健友だけは、日本から来ていた国会議員との会食があり、「しぶー。」と一人寂しそうに去って行った。

ステーキハウスで肉にくらいついていると、何やら「夢」の話になった。哲誠は夢を自分でコントロールできるようで、2階層まで入ったことがあるらしい。僕と孝暁は目を丸くしながら聞いていたが、それってまさに映画「インセプション」の世界やん。本当にそんな人がいることにびっくりしたが、確かにそういう人がいないとあの映画は作られないよなとも思った。好きに夢をみられるだなんて、羨ましい。それができたら僕はどんな夢をみるだろう。肉は美味しくて、ビールと赤ワインも飲んで、おっちゃんに負けじと上機嫌になった。

食後は帰りにビールを買って宿で飲み直した。この牢獄ともおさらばか。ギャザで不毛な時間を過ごしたな、とほんの数日前を振り返るとしみじみする。その後、どれだけ飲んだか覚えていないが、次第に酔いが回り、再び哲誠と街に繰り出すことになった。

どこへ行くかも特に決めず、酔い冷めもかねて夜の旧市街をうろうろしながら店を決めることになった。どうしようかと話しながら、最初、前から少し気になっていた宿近くのマッサージ屋に入ろうしたが、この日は休みで断念した。次。夜の街を歩いているとネオンサインに惹かれて行くのは男の性だろうか。光に導かれるがままに気づけば哲誠と二人してサウナクラブへと入っていた。

店は、Airbnb生活のときに行ったショークラブと同じで、女の子が席の隣についてくれるスタイルだった。これまたロシア人美女が美しく、僕についてくれた女の子は昔に日本で働いていたこともあって日本が好きみたいだった。話しながら、あまりの綺麗さに直視することができず、照れたそぶりをみせたときには「Cute.」と度々言われて余計に照れた。

そして、この店のメインであるサウナに行かないかと女の子から誘われた。もちろん追加料金は発生するが、哲誠と目を合わせて迷うことなくGOサインを出し、地下にあるサウナへと4人で移動した。階段を降りるとそこには怪しい暗がりに包まれた大浴場が広がっていて、真ん中にジャグジー、そして奥にはサウナがあった。女の子とお酒を飲みながら湯船に浸かり、サウナにもいけるのだ。

服を脱ぎ、ジャグジーに4人で浸かった。エストニアに来てからこれまでずっとシャワーだったこともあり、女の子がいる関係なしに湯船は気持ちよかった。ここでもロシア人美女との"オープン"な会話を楽しみ、やっぱり「Cute.」と言われつづけた。ジャグジーでお酒を飲みつづけ、ときにサウナに行ってマッサージをしてもらい、最後ボトルを何本明けただろう。この辺りから記憶が断片的となり、店を出たときは哲誠に連れ出されたことだけを覚えている。

さらに、サウナクラブを出るとすぐにキャッチの男に声をかけられ、とうに限界には達していたのだが、なぜかもう一軒近くのストリップクラブへ向かうことになった。どこまで移動したのか、店の雰囲気や女の子がどうであったか、全く記憶にないが哲誠と1杯だけ飲んでその店を出た。

帰り道、もはや泥酔状態にあった僕は旧市街近くでふらつき思いっきりこけた。「痛ぇ〜。」と言いながら、なんとか哲誠に宿まで連れていってもらい、無事部屋に戻ると安心感からすぐにベッドに横になった。その後のことは寝ている時のことなので当然覚えがない。ただ、朝起きて健友から「まじでえぐかった。」と大避難を浴びた。寝ながら叫んでいたらしい。恐怖。

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