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エストニア滞在日記 Bad Day 〜携帯紛失〜

15日目。昨日飲みすぎたせいで朝から猛烈な頭痛と吐き気に襲われた。気持ち悪すぎて吐くものも出てこず、うおぇ、うおぇと何度も声だけが漏れた。ただでさえ気分はどん底なのに、さらに極めつけとなったのは朝起きてから携帯を失くしたことに気づいたことだった。室内をあれこれと探してみても一向に見つからない。家に帰るまでの流れを振り返ろうとしても当然記憶はなく、今日はみんなで新居に引っ越す日であったが、荷物を整理するどころか、むしろ辺りが荷物で散らかった。

結局最後まで見つからず、チェックアウトを済ませて気持ち悪いまま新宅までみんなでタクシーで移動した。ここに来るまでに「最悪や。」と何回言っただろう。気が気じゃないとはまさにこのことである。海外で落としたということが余計に不安の色を強め、家に着いてからも僕は這い上がれないくらいのどん底にいた。

そんな僕を見て、一緒に飲んでいた哲誠も二日酔いにはなっていたが、毎度の酒の失敗をネタに笑っていた。健友は夜中に僕がうめく声で寝れなかったらしく「えぐかった。」と連呼をし、孝暁は3人でステーキを食べて別れたあとに一体何があったんだというような顔で驚いていた。

午後にはエストニアに来て初めての現地企業インタビューが入っていた。同席する健友からは「酒臭いから、とりあえずシャワーを浴びろ。」と言われ、僕はひとまず温かい水で酒の匂いと一緒に沈んだ心を清めることにした。落ち込んだときに浴びるシャワーの威力は絶大である。身体全体に染み渡り、不思議と上がったあとには酔いが冷めたような気がした。

服装もきれいに着替えていざ健友とインタビューへ。旧市街すぐ近くにあるガラス張りのおしゃれなオフィスにその会社は入っていた。さすがICO(イニシャル・コイン・オファリング)で資金調達した企業、お金が手元に潤っている。おしゃれすぎて入り口に戸惑ったが、何とか警備員さんに案内されて中に入ることができた。

受付の電話から呼び出し、奥からやってきたのはクルクルヘアーのあんちゃんだった。簡単な挨拶を交わしたあと、ミーティングルームへと案内され、飲み物を聞かれて2人ともアイスコーヒーを頼んだ。「Hi. Nice to meet you.」から始まる、英語の教科書ではお決まりの会話の流れである。

ミーティングルームの中も外国のスタートアップらしいおしゃれな感じだった。僕らはソファに腰をかけ、戻ってきたクルクルあんちゃんはどこに座るのかと思ったら、日本でも流行りのYogiboにもたれかかった。一瞬、健友と顔を見合わせたが、気にせずそのまま本題へと移った。先日日本からエストニアにきたばかりであること、暗号資産・ブロックチェーン関係の調査をしていることなど、自己紹介をしながらプロジェクトについて話を聞かせて欲しいとお願いすると、陽気なクルクルあんちゃんは快諾し、用意してきた質問を一つずつ聞いていくことになった。

クルクルあんちゃんと話し始めてすぐに気づいたことだが、話すスピードがものすごく早い。リスニング教材を1.5倍いや倍速で聞いているような感覚だ。事前に調べた内容と合わせて何とか要点は聞き取ることができたが、細かなところはほとんど聞き取ることができず、英語力不足を痛感した。最後、質問を終えてプライベートな話になり、この業界に入る前の職業を聞いて全ての納得がいった。「I'm a comedian.」今も副業で続けているらしく、近々イベントがあるから来ないかと誘われた。道理で早口なわけだ。

インタビューが終わった後は健友と少し遅めの昼食を食べることになった。この時には二日酔いも治ってきていて、吐いて空っぽになった胃袋を満たそうと余計に食に飢えていた。二日酔いの日はやっぱり汁物が欲しくなる。そのことを伝え、前に健友が一人で行ったというアジア料理屋に入ることになった。頼む前から味は渋いと言われていたが、そんなことはなく普通に美味しかった。汁物であることに加え、久々のアジア料理であったことも舌を助けただろう。

帰宅してからは4人の部屋割りを話し合って決めた。1Fにプール部屋、3Fに小部屋と大部屋があり、大部屋だけがシェアルーム、シェアベッドであった。揉めるかとも思ったがすぐに決まり、1Fが健友、3F小部屋が孝暁、そして大部屋を僕と哲誠でシェアすることになった。それぞれの荷物を部屋へと運び、備え付けの棚に荷物を納めて環境構築した。エストニアに来てようやく安息の地に行き着いた感じである。

その後、哲誠にも確認して昨日行ったであろうクラブに電話をかけたが、早い時間だったからかどの店も応対せず、結局その携帯は諦めた。だが、幸いなことに、エストニアに来る前に哲誠からもらった携帯をもう一台持ってきていたため、今回はSIMカードを買い直すだけで済んだ。たったの2週間でこの様だ。この先が思いやられる。

夜は2Fのリビングで孝暁が作ってくれた料理とともに新居への引越しをみんなで祝った。食卓テーブルに座って辺りを見まわすと、改めて家の広さが感じられ凄さを実感した。どこで買ったのかもわからない謎の置物があちこちに飾ってあり、オーナーのセンスと裕福さがにじみ出ていた。

今日は一日中何だか疲れたな。セイント兄さんを観て笑っている哲誠を横目に先に就寝。

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