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【アニラジ今昔7】「GO SQRAG」はリスナーの集いへの合言葉 ~文化放送のチャレンジ ①パソコン通信~

古くから「アニラジ」をメインコンテンツのひとつとして据えているのが、東京都港区にある「文化放送」。土曜日・日曜日を中心に多くのアニラジ番組を放送しているだけでなく、「第2の文化放送」とも言えるストリーミング形式のアニラジ専門インターネット放送局「超!A&G+」も運営していたりと、毎日様々なアニラジに関するコンテンツを提供しています。

「魔神英雄伝ワタル3」よりアニラジ番組の放送に本腰を入れ始めてから、今年で31年。その間、文化放送は様々な形で「アニラジ」を広めるためのチャレンジを繰り返していました。そこで、今回から数回にわたってそのチャレンジの軌跡を記していきたいと思います。

「インターネット」というとネットに接続したスマートフォンやパソコンさえあれば、どんなコンテンツにもアクセスできるのが現在のタイプですが、25年ほど前はまだ一般的ではありませんでした。

パソコンに「モデム」という周辺機器を接続して「プロバイダ」と呼ばれる通信事業者と月3,000~5,000円程度で契約し、最安で3分10円(※1)の電話代を払いつつアクセスする……当時のインターネットは現在よりもはるかに敷居が高いもので、そこからほんのちょっと、3年ほど遡った1994年になると「インターネット」という言葉すらほとんどのPCユーザーが知らない、研究用途中心の存在だったのです。

それより以前から広まっていたのが、テキストでのコミュニケーションを主体にした「パソコン通信」。ざっくり説明すると、プロバイダに接続してURLさえ入力すればどんなコンテンツにもアクセスできる「インターネット」に対し、「ホスト」と呼ばれる情報を集積したコンピューターに電話回線で接続して、そのホストに集まった人たちとコミュニケーションしていくというものでした。(※2)

そのパソコン通信事業者のひとつに「Nifty-serve」(※3)があり、文化放送はその1994年に「文化放送フォーラム」(FQR)と呼ばれる会議室群を開設します。文化放送の各番組ごとに会議室を設けてリスナー同士の交流の場として開放し、それが評判を呼んだことで一般番組に特化した「文化放送ステーション・レギュラー」(略称・SQRR)と、アニラジ番組に特化した「文化放送ステーション・アニメ&ゲーム」(略称・SQRAG)へと拡大していきました。

SQRAG内に開設された会議室は当時放送されていた番組のものとフリートーク用のもので、2000年以降は以下の会議室が存在していました。

【番組用】
・「SOMETHING DREAMS~マルチメディアカウントダウン」(※4)
・「ポリケロののわぁんちゃってSAY YOU!」
・「トライアングルセッション」
・「矢尾一樹のシーバス1-2-3」
・「飯塚雅弓のいたいのとんでけ!」
・「超機動放送アニゲマスター」
・「ノン子とのび太のアニメスクランブル」
・「広井王子のマルチ天丼」
 (「広井王子のマルチ天国」)
・ 「三石琴乃◎エーベルナイツ」
・ 「大橋照子のしゃべり・バビデヴー」
・ 「喜久子・麻里安のお月様にお願い」
・ 「電脳戦隊モモンガーW」
・ 「愛と由美のあぁぁ新天地!」
・「智一・美樹のラジオ ビッグバン」
・「CLUB db」
・「北へ。White Illumination」
 (番組終了による廃止などもあり)

【告知・雑談用】
・福ミミ通信AG版(SQRからのお知らせ)
・喫茶Q・AG支店-リスナーズ・ルーム(フリートーク)

それぞれの会議室では番組の感想などが書き込まれ、中にはハガキ投稿の代わりに番組のネタが書き込まれたり、番組によってはスタッフ・パーソナリティがこぼれ話を書き込んだり、ラジオドラマなどのネタを募集して実際に採用したりと、様々な形で活用。その最たるものが「広井王子のマルチ天国」で、番組内のラジオドラマ「火星物語」の新登場キャラクターなどのネタが書き込まれたり、放送時間になるとチャットルームでリスナーが実況したり、最盛期にはパーソナリティの広井王子さんや千葉繁さんも書き込んでいて、番組会議室群で一番の盛り上がりを見せていました。

また、「喫茶Q・AG支店」の会議室やチャットルームはリスナー同士の交流や雑談の場として機能し、不定期的に新宿のカラオケ店「パセラ」や、同じ新宿にあったボウリング場・ミラノボウルでオフ会が開れていたことも。特に1995年の年末に放送された年末特番の「あかほりさとるのウルトラスーパークリスマスパーティー」では、あかほりさとるさんや山口勝平さんなどのパーソナリティ・ゲストの方々がリスナーでにぎわうチャットに書き込んだりと、大いに活用されていました。

その最たるものが、1995年3月頃に開催された「文化放送オフラインパーティ」。当時東京都新宿区若葉(四ッ谷)にあった文化放送の局舎に招待するという、「文化放送ステーション・アニメ&ゲーム」の参加者を中心にして募集された公式オフ会でした。

当時学生だった自分も実際に参加して、文化放送の局舎内を見学したり、公開録音用のスタジオでゲストの広井王子さんのトークを聴いたりしたのですが、中でも鮮烈だったのは生放送中のスタジオに実際に入って見学が出来たこと。「一発逆転大放送! サンデーSUPERキンキン」という俳優の愛川欽也さんがパーソナリティを務めていた番組で、軽妙なトークを間近で見られたことに、緊張しながらもワクワクしていたことを今でもよく覚えています。

このように文化放送のコンテンツのひとつとして栄えていたSQRAGですが、インターネットの発展と隆盛によってNifty-serve、もとよりパソコン通信自体が下火となっていき、2005年3月にはNifty-serveがパソコン通信事業を終了。同時に終了までの通信記録(ログ)などはSQRAGに限らず、全て削除・散逸することになってしまいました。

それでも文化放送がインターネットに軸足を置いて番組コンテンツやPodcast、ストリーミング放送などを始めるのにあたって礎になっているのではないかと。個人的には「文化放送ステーション・アニメ&ゲーム」→「SQRAG」→「A&Gゾーン」→「超!A&G+」という形で面影が残っているのが結構嬉しかったりします。

それから既に17年経って個人用のホームページサービスなども次々と終了し、当時SQRAGのことを記す資料すらほとんど無くなり風化状態になってしまいました。今回はその流れに抵抗したくなって記事を書いたのですが、もし当時SQRAGに参加されていた方がいらっしゃいましたら「ここは違うよ!」「あの会議室はこんな感じだった」ということを書き込んでいただけますと幸いです。


※1 月数千円を払うことによって深夜帯限定で定額になる「テレホーダイ」というサービスも活用されていました。当時のインターネットは使えば使うほどお金がかさんでいたのです……

※2 「Nifty-serve」や「ASAHIネット」「アスキーネット」「ポプコムネット」のように月額料金を払い同時に大人数が利用できる商用のパソコン通信から、個人で1回線からホストを開設・運営できる草の根通信まで、さまざまな規模のパソコン通信がありました。当然、パソコン通信内の情報はそのホストひとつひとつに限定されて、インターネットのように自然と情報が広がっていくようなものではありませんでした。

※3 ニフティサーブ。現・@nifty(アットニフティ)

※4 「おっと!ドリカン」会議室として開設。

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