スーパー歌舞伎Ⅱ 新版 オグリ 2/3

2幕

 照手姫が流れ着いた塩ひき浜のシーン。噂話の婆達のSNS映像とスマホ・タブレットのシーン。この演出、余計なことしたの極みに思えて仕方ない。歌舞伎にこういう世界観を持ち込んでドヤってる演出家の顔が透けて見えて、大変不快。てか単純に面白くない。や、物語通して、現代的な要素もふんだんに盛り込んでシニカルな表現をずっとするんだったらいいんだよ。(好きじゃないけど)でもそうするわけでもなく、ここだけだから益々違和感に感じる。浮いて見えるんだ。せいぜいさ、噂話してる人の一人だけスマホで写真撮ってて、それを本人に見せる、というくらいのさらっとした演出ならクスっと笑えたのに。もしも現代的要素をふんだんに盛り込むなら、最後の宙乗りはヘリか、ドローンにつかまって空飛ばなきゃいけなくなる。

 それから婆さんが嫉妬の炎で小屋燃やしちゃうのも意味不明。え、この婆さん普通の人じゃないの?普通に持ってる火打ち石で火つければいいじゃん。あの遠隔操作で嫉妬の炎で引火できちゃうくらいだと、その後清姫バリにその身を蛇に変えるくらいのエピソードないと辻褄合わないでしょ。照手が連れてかれたあとの爺婆のやりとりも無駄に長い。男女の情愛とかをしっかり描く作品に仕上げたいわけじゃないんだから、こんなに時間咲かなくていいよ。だれる。
 
 地獄のシーン。ここも言いたいこといっぱいある。まず、閻魔大王。軽すぎ。弱すぎ。浅野さんは正直ミスキャストだと思う。閻魔大王であっても悩むことや人間に心動かされる人間臭さがある、という表現はいいけどさ。それにしても閻魔大王という神仏級の力が全く見えない。浅野和之本人が舞台にいるだけじゃんね。演出が悪いのか、役があっていないのか。両方だと思う。閻魔大王が大王感ゼロってのが、これは結構2幕3幕ずっと悪く響く。ここは右團次さんとか呼んで来れなかったの?98年「オグリ」の団蔵さんはきちんと人外感も威厳も少しチャーミングさもあってよかったのよ。威厳がないから、ただの訳わかんねぇ喧嘩にこのシーンが成り下がっている。一応台詞の応酬としては、物語の根底のテーマを語っているんだけどね。軽いシーンに成り下がってる。黒姫とかいう娘も台詞回しが早口の割に声量が足りない。一本角の鬼もいまいち。現代劇の役者を連れてくるのが悪いとは思わない。でもさ、クオリティが追いついていないのは本当に起用するのどうかと思うよ。芝居がいちいち下手さが浮いて見える。

 六郎責めのシーン。こんなに長くする必要ある?他の人は?いまいち小栗判官が裁かれるような悪事が描かれてないんだよねぇ。ちょっとイキってるヤンキー兄ちゃんみたいな印象しかない。過去の悪事を暴く鏡?てっきり閻魔大王達がつけた3Dゴーグルっぽいってのがギャグかと思いきや、判官が目の前に拳ふるうと割れるから大きな鏡だった?設定がわからん。

 そうだ。地獄シーンの冒頭のダンスシーン。現代のダンスが踊れない人間に踊らせない方がいいよ。ダンスじゃなくていいじゃん。舞踊のような殺陣とかでいいじゃん。なんで無理にエグザイルみたいに現代的にして客に媚びるかねぇ。冷める。

 小栗衆と閻魔大王軍の戦い。六郎の、梯子の殺陣を取り入れてくれたのはよかった。単純に私が好き。文句なしにかっこいいさ。もうちょっと歌舞伎よりの殺陣があってもよかったのでは?これ以後はそれ以外目立って盛り上がる殺陣がなかったのが残念。

 本水使っての立ち回り。これが必然性がない。地獄を燃やしてるのに、何故水?火を消すため、とか、三途の川だ、とかそんな説明台詞一つでいいのよ。それだけでも違うのよ。単に私が聞き逃しただけ??黒姫の立ち回り、見栄で真っ赤な口を全て見せるの、何かかっこ悪い。上下の二層になってる本水だが、仕切りの下から吹き出す噴水のせいで、奥行きが生かし切れていない。六人と小栗判官揃っての三重はかっこいい。そして水を客席に飛び散らすと受けるねぇ。判決やいかに!?という幕切れは嫌いじゃない。

→3幕に続きます

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