スーパー歌舞伎Ⅱ 新版 オグリ 3/3

3幕

 冒頭の能楽でようやく重厚さが戻ってきた感じがする。ここはやや古典的に能の塚のセット。隼人くんの遊行上人、若過ぎ。ジーンズを組み合わせた衣装はかっこいいね。それにしても、若いわー。閻魔に頼まれるけど、それで千僧供養とか言い出すのが、もう、こいつペテン師かってツッコミたくなる。

 照手が判官と知らずに餓鬼病の車を引いて過ごすシーン。二人の芝居は落ち着いてていいのだけど、照手さんの距離が判官に近すぎて餓鬼病さまが勘違いしちゃいそうで困る。ぼんやりと、近江屋で女郎のねぇさんたちばっか見てたからナチュラルにそうなっちゃうのよねーとか思ってしまった。すいません。いいシーンです。

 何とか熊野についたはいいけど、薬師如来もなーんか軽いのよね。直接助け起こすんじゃなくてさ、岩割ったら一段上後方で偉そうに立っていればいいじゃん。手下に支えさせればいいじゃん。閻魔大王も軽い。ここで、閻魔大王初め神仏の軽さの袁術が、悪い意味で響いてくる。結局罰を与えたり、許されたり、餓鬼病が治る奇跡が起きたり、という感動がすっっっごく薄まってしまい、主題がずれちゃう感じなのよ。もっと神仏に威厳を!!そういう演出を!!

 そして文句つけたい宙乗り。馬出してくれるのはいいけど、遊行上人が乗る必要全然なくね?そして馬がちゃちすぎる。1幕のゴリゴリの造形の馬と比べたら、おもちゃの木馬でなぁ。かっこ悪い。神仏のありがたみのなさと遊行上人の何でお前が乗るの感と、馬のおもちゃ感で、全然宙乗り心に響かんかった。残念すぎる。やっぱさ、歌舞伎の方の照手姫とタンデム乗りの方がロマンティックで感動的でいいんだよねぇ。

 最後の二人纏まってやんややんやはまぁいいや。生き返った六人衆の罰、わけわかめすぎじゃね?歓喜の舞踊る前に光るリストバンドの説明は丁寧でよかったわ。一つだけ、もう少しだけ照手と小栗判官がみんなに祝福されて踊るシーンを時間とって欲しかったなぁ。大団円でいちゃつく姿が見たいのよ。喜びたいのよ。カーテンコールみたいに、全員出てくる矛盾とかは気にしないからさ。こういう観客参加型はありだと思った。「ワンピース」だと、ノリノリな人に臆してしまって、いまいち乗り切れない人が多くて居心地の悪さを感じたからなぁ。今回はみんな座ったままだし、振りも手拍子と万歳だけだから、で誰も文句つけようのない大団円のシーンだからさ。


総評
 梅原先生のちょっと説教くさい台詞が横内さんのちょっと聞いててむず痒くなる青臭い台詞に変えられて、良くも悪くもフレッシュ感あった。以前の「オグリ」は3代目という大柱ありきの作品で、それを求めて見ていたのだけれど。今回の「新版」は4代目や、新たな役者の起用、御曹司軍団の発掘、横内先生の脚本、照明、LEDパネルやプロジェクションマッピングなど、小さな柱を束ねている印象を受けたのです。「ワンピース」もそうだったはずなんだけど、なぜもう一度みようという気にならなかったか。今回は建物の土と基礎部分に小栗モノという話と梅原先生の原作、3代目がやった舞台化があるからに他ならないと思う。骨子がしっかりしているのだ。ようやく私が観たいスーパー歌舞伎Ⅱが出てきたと思ったよ。
 そして今回目を見張ったのが、照手姫の坂東新悟さん。透明感と声の綺麗さがとても良い。弥十郎さんの息子さんだというけど、声がすごく綺麗で似てないのよ。(弥十郎さんの野性味のある声も味があって好きですが。)かつての笑也さんを思い出すようだわ。遜色なく照手だったもんなぁ。すごい。
 衣装が物によっては素敵で、物によっては微妙に感じた。その他モブの衣装が雑すぎというか、何というか。例えば最後小栗判官が国主としてやってくる時、お付きのものは普通の本歌舞伎にも出てきそうな衣装だったが、小栗判官だけ気合入りすぎてラメが目に痛い。モブキャラももっとデザイン考えてあげて欲しかったなぁ。

 今の作り方で、脇の押さえをもっとしっかりした人を当てて、八犬伝やればいいんじゃね?オグリを2年やって元が取れたら、八犬伝やって欲しいなぁ。

演劇界の10月の批評を見て、隼人くんのオグリも見たくなってきた。

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