ステレオスコープよりもメガネのほうが

早朝にいつもどおり「観察者の系譜」のつづきを読み始める。昨日読み残していたステレオスコープのあたりから。


立体鏡,実体鏡ともいう。多少の横ずれをもつ2枚の絵を左右の眼に別々に提示し,三次元的な立体感を生じさせる装置。プリズムや鏡により両眼の融合が生じやすいようにしてある

ステレオスコープ(ステレオスコープ)とは - コトバンク http://bit.ly/1FTX25s


文脈としてはモリヌー問題から「完全客観な視覚はない」「視覚はそれ自体が主体と客体の中間である」「認識もそれに準じる」な流れ。昨日も少し言ったけど。

そこでは視覚装置はそういったことを考える際のメタファー的なものとしてつかわれていて、カメラ・オブスキュラもそういったもののひとつだった。カメラ・オブスキュラで映される像は反転しつつも完全に客観なものだと思われていた。ケプラーも含めて。この辺りは唯名論←イデア論の流れ。


ステレオスコープではそういった「客観」に対する人間の生理的限界、先天的な限界のひとつとして錯覚があることを示す。すなわち「複眼視された2つの像は本来すこしずつ異なるものであるはずなのに一つの像として脳内で変換され認知されている」というもの。


簡単にはステレオスコープの仕組みというのは脳内補完、統合される以前の「本来ずれている像」をそのまま現前させ展開させることで立体が生じたかのような錯覚を覚えさせるもの。

ホィートストーンなんかはそういった「人の認知の客観と主観のあいだ的なもの」を見つめるためにこの装置に感心していったようだけど、世間的にはたんなる見世物として面白がられ忘れられていった。


ステレオスコープが「時代を代表するメディアであった」と論じられていたわけではないのだけれど、視覚メディア(装置)にそういった視覚-認識をめぐる思考の痕跡、あるいは、そういった視覚-認識をめぐる思考の隠喩の痕跡が見られるという話であるならば、そして生理的な変化がうんたらみたいなことに触れるならば、眼鏡に触れてないのはどういうことなんだろう?とかおもった。

ステレオスコープは見世物的に消費されたかもだけど、メガネのほうがそういったことにおける生活への影響は大きかっただろうし。

それで眼鏡の歴史を少し見るも


眼鏡 - Wikipedia http://bit.ly/1FTXArW

単に起源がどうとかな話でそれが大衆レベルにどう普及したか、普及してから大衆の生活はどのように変わったかについては説明されてなかった。


やはり専門書が必要かあ(´・ω・`)できれば新書レベルがいいなとぐぐるにこのへんがヒット


一昔前、西欧人から見た日本人のシンボルは、出っ歯と眼鏡とカメラだった。ある者はミラーグラスでクールな自分を演出し、ある者は眼鏡っ娘や眼鏡男子に萌え、ある者は老眼鏡で己の老いを思い知る。老若を問わず現代人の生活に浸透し、実用・ファッション双方の機能を機能を果たす眼鏡。その眼鏡はいかに発生し、どのように使われ、世の人々に受け入れられていったのか。誰が製造し、誰がどのように売り、誰が何のために買っていたのか。西欧の服飾史の観点から、眼鏡の歴史を辿っていく。文化史という観点のため、技術史としての記述は控えめ。

リチャード・コーソン「メガネの文化史 ファッションとデザイン」八坂書房 梅田晴夫訳: ちくわぶ http://chikuwablog.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-15b7.html


 昨日の「メガネの文化史」が、西欧における眼鏡の歴史を綴った書物なのに対し、これは日本における眼鏡の歴史を辿っている。その過程で多くの文献を漁っているんだが、お堅い公文書から商家の取引記録は勿論、職人尽絵や黄表紙など庶民的な絵本を豊富に引用していて、当時の人々の暮らしぶりが活き活きと伝わってくる。「眼鏡がどのように普及してきたか」という文化史的な側面が中心で、技術・工学的な記述は控えめ。

白山晰也「眼鏡の社会史」ダイヤモンド社: ちくわぶ http://chikuwablog.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-225d.html


これ終わったらゲーテの色彩論と読もうかなあとか思うも、(´・ω・`)また読むもの増やしてしまった、などと


蛇足的に、視覚の生理学的な基底、たとえば「人の視覚は電気信号によって決まる」から視覚の中ににおいや手触りなどを本気で混ぜあわせようとしていた時代生理学ブームの時代があったのだけど、そこからライゾマの眞鍋さんがまだ売れない頃に発表して話題になったYouTubeの動画を思う。


日本人アーティストによる「音楽信号で顔の表情を動かす動画」 « WIRED.jp http://bit.ly/1FTYfK0


眞鍋さんはこのへん知らないかもだけど、伝えたらおもしろもの作ってくれそうな気もする(Perfumeの衣装の色彩にゲーテのそれを想いつつ

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