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世界の食卓からSDGsを考える本「世界の食卓から社会が見える」

本(世界の食卓から社会が見える)

世界中を旅して、各国の家庭に滞在し食卓で家庭料理を味わいながら、その国々の社会情勢を検証した本です。筆者の岡根谷実里さんはクックパッド勤務後に独立した世界を旅する台所探検家で、以前「世界の台所探検」を読んだことがあり、今回も同じ筆者ということで読んでみることにしました。

訪れた国や地域は、アジアがベトナム、インド、中国、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル、中南米はキューバ、メキシコ、コロンビア、ヨーロッパはブルガリア、フィンランド、モルドバ、ウズベキスタン、アフリカがボツワナ、スーダンといったそれぞれ独自の食文化がある地域です。

各国の食生活にも時の政治の影響が色濃く影響する場合がありますが、キューバの国民食といわれる黒インゲン豆のスープ、フリホーレスは、ご飯に合わせてカレーライスのように食べます。この黒インゲン豆は、化学肥料なしのオーガニック農業で収穫できるものですが、今やトレンドなオーガニック農業も、キューバの場合はキューバ革命によるアメリカの経済制裁で化学肥料は輸入できなくなり、必然的にそうした農法になったとのことです。

またブルガリアの伝統食といわれるヨーグルトも、実は旧ソ連の衛星国であったブルガリアに対するソ連の社会主義体制の一環で、栄養面で効率が良いヨーグルトが人民食として普及していったものであり、まさに「政治的に強化された人民食」との解説がありました。

さらに食と地球環境の関係も避けて通れない問題ですが、アフリカのボツワナでは養殖魚のティラピアについて述べています。海洋資源の生産量は横ばいで、世界的な食糧事情を考えると養殖魚の増加が必要となってきますが、この魚は海面養殖ではなく内水面養殖、つまり池や湖で小規模にできるのが特徴で、容易に養殖が可能だということ。 

ティラピアは身にくせや魚臭さがなく、骨は太くて身離れがよい。よってフィレステーキなフライなどに向いているということで、西洋料理に活用されています。
さらに世界で1番厳しいといわれる、インドのジャイナ教の菜食と生命観についての章もあります。

筆者は食と政治や地球環境の他にも、食と宗教、食の創造性、食と気候、食と民族など各章でそれぞれのテーマに沿って、滞在先での食生活や食文化に関する考察を行っています。SDGsにおける地球環境の課題には、再生可能なエネルギーや脱酸素化社会への移行にも、食の問題は密接な関係があります。

勿論、日々の食生活からそうした問題意識を持つことは大事ですが、こうして世界の食卓から、問題提起することもまた違った視点からの指摘があり、興味深いものだと思いました。

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