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カワイイのはクチでした #5 アザラシのクチ

 この写真を見て「カワイイ!」と思ったあなたは、ω(すなわちクチとその周辺)好き人間に違いありません。自覚していようがいまいが、間違いなくあなたは私の同類です。握手握手!
 この幸せそうな動物は、生後間もないゴマフアザラシの赤ちゃんです。大人のアザラシもまあ十分に可愛らしくはあるのですが、赤ちゃんアザラシの可愛さはまたひとしおですね。
 ゴマフアザラシやワモンアザラシなど流氷の上で出産するアザラシの赤ん坊は、このように白い産毛で覆われた状態で生まれて来ます。氷の上で目立たないための保護色と考えられています。しかしこの産毛は、次第に抜けて生え変わり、生後3〜4週間ほどで大人と同じような毛色にかわってしまいます。それも、たいてい、クチのまわりから抜けはじめます。お母さんのおっぱいを飲むときに鼻先をこすりつけるからではないかと、私は思っています。
 ですから、この写真のように口先まできれいな白い産毛に覆われた赤ちゃんアザラシを撮影するには、野生のアザラシの出産地まで出掛けて生後間もない赤ちゃんを探すか、水族館での出産情報をキャッチしてすぐに見に行くしかありません。この写真は、2011年4月に、北海道小樽市の「おたる水族館」まで急行して撮影しました。
 陽光を浴びてくつろぐ白い赤ちゃんアザラシのクチまわりたるや、この世の幸せをそのまま形に表したかのような素晴らしさ。少しだけ開いた鼻の穴、キリっとした垂直線、ωの形を描いたかのような唇の合わせ目、全体を覆うモフモフした白い毛。うん、最高!

このnoteは、2013年に新聞で配信したコラム(全12回)です。