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【読書感想】地政学から自分自身のことを考える

13歳からの地政学を読んだ。
Wikipediaによると、地政学とは国際政治を考察するにあたって地理的条件を重視する学問のことである。


この本の主人公は高校1年生の大樹とその妹・杏、中学1年生。
この2人に地球儀を介して身の回りで起こっていることが世界のどのようなことと繋がっているか、7回のレッスンを通して伝えていくのが職業不詳・謎の人物カイゾクさん。
この3人のやり取りが物語として描かれているので非常に読みやすい、かつ地政学という言葉・学問を知らなくても理解できる内容だ。

地球儀を様々な角度から見ると見える景色が変わる。当たり前、と思うかもしれないが実際にやったことがあるか。残念ながら私はやったことがないし、我が家にはすでに地球儀がない。

世界一大きな太平洋と二番目に大きな大西洋に挟まれた国・アメリカ。カナダも同じなのに、アメリカが超大国となったのはなぜか。
アフリカ大陸から日本は見えない。
なぜ日本は極東と言われるのか。

地球儀を様々な角度からで見ると今まで気付けなかったことに気付き、自分なりのなぜ・自分なりの解に行き着く。

では、キャリアに関する仕事をしている私がこの本の感想を残そうとしたのはなぜか。
私が感じたことは、「地政学」という切り口で書かれているが、私達にとって大切なことが散りばめられている、ということ。キャリア支援の立場から以下に紐解いてみた。



どんな人間になりたいか

妹の杏には夢があるのに、自分には夢がない、と俯く大樹にカイゾクさんは、
夢は職業のことだけでなく、自分がどんな人間になりたいか考えることの大切さ」を語り、「なぜ、と自ら考える」ようになった、と大樹に伝えるシーンがある。

どんな職業につきたいか、職業=夢、と描ける人がいる一方でそうではない人だっている。今の世の中は職業が増え続けていて、すべての職業が目に見えるところにあるわけでもない。自分がやりたいと思うことを探すことのほうが難しいことだってあるし、なんとなくこの仕事に惹かれるんだ、ということだってあるものだ。

どんな人間になりたいか。
私自身はこれが大切だと思っている。
様々な経験をすることで得られること、考えることがあるだろう。その経験がどんな人間になりたいか、を導くきっかけにもなる。言葉にすることが難しい場合もあるが、どうなりたいんだろう、を考える機会を持ってほしいと思うのだ。

そして自ら考える。
検索すれば解がわかることが多い世の中。
それを鵜呑みにするのではなく、自分で考えることが大切。
なぜ?本当にそうなの?
疑問を持って考える。他人事が自分事になることがあるし、遠くの問題が身近な問題になることもある。
考える、を繰り返すことで自分なりの答えの導き出し方がわかってくる。

目標のその先を見据える

勉強が得意で進学校に通う大樹。
「情報、知識・手に入れた物を使えなければ意味がない」と言われ、勉強し続けてきた自分を否定された気持ちになり「手に入れたものを上手く使うにはどうすればいいのか」とカイゾクさんに問うた答えが「目標のその先を見据える」だ。

目標のその先を見据えることの大切さについて、私の仕事上の経験からよくあるシーンとして2つ、お伝えする。

「資格取得しようと思います」
「資格取得してどうしようと思う?」
「就職に役立つと思うんで」
「うん、役立つと思ってるのね。その資格取得してどう活かしたいの?その資格持ってるとどんな仕事ができそう?」
「いや、それはわかりません」


「職業訓練校で〇〇を学びました。〇〇の資格を取ったので△△の仕事につきたいです」
「求人探してみた?」
「…それが、通えるエリアにないんです」
「□□のエリアにはありそうだけど?」
「転居、できないんです。通勤にしても時間かかかりすぎるので無理です」
「…そうなのね」


資格取得にしても、学ぶにしても、通過点に過ぎない。資格取得してどうしたいのか。職業訓練校で学んだことを活かしたいと思ったときに、自分が働きたい条件を満たしてくれる求人はあるのか。資格取得したけれど、学んだことはよかったけれど…にならないためには、その先を見据えておくことが大切なのだ。

私自身に照らし合わせると「国家資格キャリアコンサルタント」という資格保有者だ。これについての目標とその先を見据える、はまた別の機会に記したい。

別の立場に立ってものを考える

日本は大国だ、ということをここまで5回のレッスンで理解したであろう2人に
日本は大国、強者の立場だ。外国とのことで疑問に思うことがあれば、自分の常識を押し付けず、一度立ち止まって別の立場に立ってものを考えることを忘れないでほしい」と告げるカイゾクさん。

地政学を切り口に日本のことを少しだけ触れておくと、日本の国土面積は194カ国ある中で世界ランキング61位。GDPは現時点で世界第3位。
国土の狭さから小国と考える向きがあるが、GDPは現時点で世界第3位、決して小国ではないのだ。

「他者の立場で物事を見る」とその国の地理的有利・不利が見えるし、その国に暮らす人々を理解することに繫がる、とカイゾクさんは2人に告げるのだ。

繰り返すが私はキャリアの専門家だ。その私がこの内容を紐解くと以下のようになる。一足飛びの感があるかもしれないが一読していただきたい。

人間は自分の育った環境を標準に世界を見ようとする

日常会話でよく聴く言葉に「普通」という言葉がある。「普通」はその人にとっての普通であり万人にとっての普通ではない。だが自分の主張を理解してもらいたいが故、声高に「普通はさ〜」を繰り返す。私を含め誰にも心当たりがあるのではないか。相手の立場に立てば、それが自分にとっての普通に気付けるはずなのに。

声の大きい人とか、人数が多い方の意見がなんだか通る

多数決。
物事が決まらない時、往々にして取り入れるのではないだろうか。多数決、なので多くの票を勝ち取った方の意見が取り入れられる。少数派の意見は、残念ながら取り入れられない。

地政学、という学問上だけでなく日常的に私たちの岨には、権力が大きいもの、声高なもの、数が多いものに有利に働くことが多い。少しだけ、相手の立場になって考える余裕を持ちたいものだ。

就職活動で相手の立場に立つとは

〇〇ができます
△△が得意です

自分の強みや武器を知っていることは大切なこと。
だがその言葉のままでは自分の立場を主張しているに過ぎない。
企業を研究し相手は何を求めているのか、どんなスキルが欲しいと思っているのか。そのスキルをどう活かして欲しいと思っているのか。どうやってうちの戦力になってくれるのか。

自分の立場はちょっと横において、相手の立場で考えることを忘れずにいたいし、忘れないでほしいとおもうのだ。

まとめ

目標のその先を見据え資格取得し今に至る私のキャリア。たどり着くまで順風満帆だったわけではない。いろいろな方々のお力を借り、多くの気付きを得、行動してきた。躊躇したことだってもちろんある。
一足飛びにありたい自分になれるといいが、そうはいかない現実。このGAPを自分なりに見つめ、一步ずつでも思い描く自分に近づきたい。その為には何をすればいいのか。ここにも「目標のその先を見据える」が必要だ。結局のところやり続けるしかないけれど、自分のキャリア(人生)は誰のものでもなく、自分のものなのだ。

「13歳からの地政学」の主人公、大樹と杏。
彼らもまた、彼らなりの悩みや不安を持つ中でカイゾクさんと出会い、知らなかったことを学び将来について考える、彼らは地政学を学びながら自分自身について考える機会を得た、と感じさせられた1冊だった。


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