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クソ暑い夏に特濃の甘酸っぱさはいかが?『サイダーのように言葉が湧き上がる』レビュー

「夏休み」「引っ越し」「初恋」「思春期のコンプレックス」「花火大会」 この要素を並べて甘酸っぱくならないわけがないっ

最初のとっかかりは90年代を代表するイラストレーター・わたせせいぞうさん風のタッチで描かれたサマーウォーズ的なイラストが目を引いたことです。 あらすじを読んでみて、「なにやら夏の甘酸っぱい感じがプンプンしやがるぜ」と思い、鑑賞してみました。 観てみたら大当たり!王道の夏休み青春恋愛映画。 しかも、登場人物全員もれなくいい人! 何のストレスもなく安心してみられるほっこりストーリーに、スーパー銭湯で豪遊したような心地よさを得られました。

個人的にはボケ始めてるおじいさん・フジヤマさん(声優は安心安全の山寺宏一)が奥さんとの馴れ初めを思い出す回想シーン、自分が勤めるレコード工場の屋上でキスをするトコがグッときました。
奥様がコンプレックスである出っ歯を気にして一度、キスをためらうも、「そんなの気にすることないよ」といったふうに首を振るフジヤマのおじいさんの優しさと愛にうるっときます。
歌手だった奥様のためにレコード店まで立ち上げるほど愛していたのに、その奥様を早くに亡くされて…ボケてもなお「奥様を思い出したい」とむせび泣くフジヤマさん…の愛情の深さに、私の心も簡単にコロッとやられました(笑)
誰しもこんな風に人を好きになるのに、その気持ちのままでいることがどれだけ難しいか、だからこそ青春の頃しかできない恋愛模様というのは普遍的な美しさがあるのかもですねー。

物語の舞台を大型ショッピングモールにしてるのは、やっぱり今の中高生の恋愛の舞台がそうなってきてるからなのかしら? 私らの頃は今のイオンモールのような場所ってあんまりなかったなー イオンよりもジャスコが多かったし。

ヒロインの女の子・スマイルちゃんも終始、マスクをしてコンプレックスを隠しているあたりも、コロナ禍から思春期を迎えたティーンネイジャーの子たちが直面している青春の悩みなのかな。
やだよねぇ、マスクをつけた状態ですごく仲良くなった相手に対して 「いつ自分のマスクを外すのか」 「マスクのない自分でも受け入れてくれるのか」 そんなことで不安になったり、傷ついたりしないといけないんだもんねぇ。
でもサイダーのように湧き出した言葉がそんな不安をかき消してくれるストーリー展開はホント胸アツです。

※閲覧注意
尊さがだいぶ濃い目に濃縮されておりますので、時と場合によっては回復に時間のかかる心身のダメージを負う可能性があります。用法・容量を守って、あまり病んでいない時に鑑賞してください。

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