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ブリティッシュ・ロックの雛形となったハードでソウルフルなロックンロール

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今日、ご紹介するのは、ブルース/カントリーやR&B/ソウルの流れを汲むハード・ロックです。

1970年代のロック・ミュージックを俯瞰的に捉えてみると、ロック・シーンの主流は、ハード・ロックでした。

ハード・ロックは、同年代、あらゆるスタイルを確立させていますが、その始点を改めて遡ってみると、ブルース・リヴァイヴァルのバンドのサウンドから発展(1)し、ブルースやフォーク・ロックのルーツとの関連をより密接に維持した性格(2)との事です。

なので、今回は、ブルース/カントリーやR&B/ソウルなどの要素を色濃く反映したルーツ・ロック寄りのハード・ロックを取り上げてみました。

彼らは、60年代半ばにブリティッシュ・ビートを確立し、サイケデリック・ロックへの寄り道を経て、60年代後半にはルーツ・ロックへと辿り着きます。

そして、70年代前半においては、それらを応用したスタイルでハード・ロックを展開し、音楽面や商業面含め、ブリティッシュ・ロックにおける一つの雛形を提示しました。

彼らのロックンロールは、パンク/ニューウェーブやオルタナ/インディ・ロック以降、アティチュード面からもある種の境界線が引かれてしまった側面もあります。

しかしながら、その裏を返せば、パンク/オルタナ・ロックにはないオールド・ロックならではの味わい深さがあり、改めて再評価しておきたいところです。

『Sticky Fingers』/The Rolling Stones(1971) 
作品評価★★★★☆(4.5stars)

オルタモントの悲劇で60年代の幕を閉じた彼らは、唇と舌のロゴマークが印象的な自主レーベルの下、ウォーホルの挑発的なアート・ワークと共に、70年代の幕開けをタフなロックンロールで飾ってみせた。

このハイクオリティなアルバムは、ミラー/ジョンズ兄弟が監修を務め、ソウルの聖地/マッスル・ショールズを中心に録音され、新たなギタリスト/テイラーやスワンプ・ロック・サークルの面々も巻き込みつつ、堂々たる完成へと至った。

黄金期を謳歌するストーンズではあるが、やがてバンドはロックをコマーシャル化させた功罪も併せ持つこととなり、それは、批評的な評論家やリスナーにとってロック・ミュージックにおけるある種の思想を考察するうえでの一つの命題となった。

『An Old Raincoat Won't Ever Let You Down』/Rod Stewart(1969)
作品評価★★★★(4stars)

後に英国を最も代表するロック・シンガーの一人となる男は、スウィンギング・ロンドン期の下積みを経て、ジェフ・ベック・グループで陽の目をみる事となり、少しばかり遅咲きのデビューを飾った。

ロッド・ザ・モッドがこの1stで披露したのは、旬なブルース/フォーク・ロックであり、脇を固める面々による確かな演奏力やアレンジ・ワークと共に、その特徴的なハスキー・ヴォイスが冴え渡る。

70年代初頭にリリースした2枚のアルバムで天下を取ったスチュアートは、ナイト爵位授与が示すように、現在に至るまで多くのヒット作を積み重ねるが、玄人好みなファンの心を満たしてくれるのは、やはりある種のハングリー精神を宿した初期の作品だ。

『First Step』/Faces(1970)
作品評価★★★★(4stars)

ブリティッシュ・ロック・シーンの層の厚さを改めて再認識させられるこのバンドは、スモール・フェイセズとジェフ・ベック・グループで主役を支えた面子によって結成された。

フェイセズの1stは、シーンに与えたインパクトこそ欠けたものの、各メンバーがそれぞれの持ち味を随所で発揮し、アーシーかつブルージーな酒臭いロケンローが楽しめる。

しばしばストーンズの好敵手とも目されたこの酔いどれバンドは、やがてスチュアートのソロとの掛け持ちが仇となって亀裂が生じてしまったが、良くも悪くもルーズであり続けたそのスタンスは、往年のファンから長く親しまれる秘訣となった。

『Humble Pie』/Humble Pie(1970)
作品評価★★★★(4stars)

スモール・フェイセズとハードの二枚看板によって結成された彼らは、イミディエイトからA&Mへの移籍を機に、かねてからの野望であった米国での成功へ向けて躍動し始めた。

名エンジニア/グリン・ジョイスを迎えたハンブル・パイが制作した3rdは、マリオットのハードなブルーズ・ロックとフランプトンのソフトなフォーク・ロックのコンストラストがより明確となり、プログレッシヴな一枚に仕上がった。

その後の彼らは、マリオット色が濃くなると共に、バンドの持つポテンシャルを発揮し、しびれすぎるライヴ盤から成功を収めていくが、不思議な事に、時代が持つ空気感を内含していたのは、袂を分かつ事となったフランプトン在籍時であったような気がしてならない。

註(1)(2)キャサリン・チャールトン『ロック・ミュージックの歴史 下 スタイル&アーティスト』佐藤実訳、音楽乃友社(1997)


それでは、今回ご紹介したアルバムの中から筆者のお気に入りの楽曲を!

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