汲み取る

ふと気がついて
慌てて手を差し出して
そこから応急処置をしようと試みても
治らない。
人間関係ってそんなもの。

同僚が辞めることになった。
彼は、私に心開いてくれていたのだが
私は彼の事を見ようとしなかった。
昔はよく2人で話をしたのだが、
彼の立場が『長』となり
彼に倍増する仕事量や責任がのしかかると
私はどんどん距離を置いてしまった。

私が勝手に彼を
立場の違う人
として扱って、
見ようとしなくなったからだと思う。

だから
彼が追い込まれて、
心が潰れていても
私は気がついたけど
手を差し伸べるのは私ではないと
そう思っていた。

昨日、少しだけ
最近どう?
と聞いたら
彼から感情や辛かったことが溢れるようにでてきた。
話を聞くと
あっという間に1時間過ぎ、
それでも彼の気持ちは奥底からは
治ってなかったように思う。
こんなに溜まっていたのに
私は気がつかないふりをしていた。
多分
彼は職場でこんな風に吐露できるのは
私しかいなかったはずだ。
とても申し訳なかったなと思った。
彼は辞める道を選んでいた。

『仕事を辞めても、ご飯食べに行こう
今度は俺が愚痴聞くからさ』
と言ってくれる。
彼の本質の優しさを、私は忘れていたような気がする。

次の仕事は、業界すら変えるらしい。
もう先が決まっているというのに
全ては俺の力不足だ
と仕切りにいう彼が不憫だった。
そんなに自分を責めたら、彼の心の大事なところが壊れてしまいそうだった。
もう責めなくていいよ
と声をかけたけど、まだまだ続けてしまうのだろうと思う。

大事な人との関わり方で
こういう後悔をするのが一番嫌だ。

もっと早く気がつけばよかった。
もっと早く気持ちを汲み取れれば。
そんな風に、思うのだけは嫌だ。

私はそんなにたくさんの人を守れない。
子供とパートナー。
それくらいかもしれない。

でも、彼らとだけはそういう後悔をしたくない。
少ない人たちだけしか私は守れないけれど
大切だと思う人の気持ちを汲みとり、
誰よりも寄り添いたい。



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