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心地よい隙間ができる瞬間「GGBC'23」


移り変わりがある季節で、寒いような暑いような季節、春に考えるときがある。ひとまず忙しさ開けたお休みの日や、ほっと一息つけるリラックスできる日はなにをしよう。いつもは移動中にワイヤレスイヤホンから掛かる音楽を、大切な人と一緒に太陽の光を浴びながら、ソファでゆっくりと聴いたり、仲間と一緒に、ドリンク片手にいつもより大きめの音量で聴いたりすること。日々の合間から、また行きたい気持ちが芽生えるようなあのお店あの場所、もしくはメモ帳やマップアプリで整理していた、行ってみたいお店や場所へワクワクしながら向かうこと。目まぐるしく変化する季節の中では、オフ日も同じくあっという間に過ぎてしまうが、一人でも誰かとでも街のコミュニティに繋がりに行って、新たな繋がりを育むことで、まだ見ぬ心地よい隙間ができる瞬間もあった。忘れられないできごと、「GGBC'23」。

2023年4月22日と4月23日、この日ぼくは野外パーティ「GGBC'23」に来ていた。G(ごぼ天)・G(ごま鯖)・B(バリカタ)・C(コミューン)。福岡ならではの美味かもんの頭文字をあわせたイベント「GGBC」。2022年から開催されている福岡発の野外パーティで、今年2023年は2回目となるイベント。

春のぽかぽかの野外にあったら心地よいもの、まず良き音楽と美味しい食べ物は外せないだろう。さらには特定の人に限らず、子どもから大人など、いろいろな人々がわくわくするような非日常体験ができれば、それは最高なパーティと呼べるはずだ。2023年4月22日と23日、それは確かにあった。最高なパーティ「GGBC」の断片を切り取った写真とともに、思い出を振り返っていきたいと思う。

【DAY1(4月22日)】


福岡・天神から大濠公園付近まで歩くこと約15分。お堀と堅牢な城壁の跡から福岡の歴史を感じる鴻臚館広場に来た。会場に入る直前の、鴻臚館跡の石畳の道路の坂道を通ったときから雰囲気のある音楽がかすかに聴こえていて、入る前からすでにワクワクの予感を感じていた。

入場手続きを済ませて、入るとそこには楽園のような光景が広がっていて、これから楽しめることが間違いなさそうという確信に変わった。香ばしい食べ物の匂いと、福岡をやや目下から見下ろせることができる、ちょうどいいくらいの自然の風景とともに、バックで流れるグットなミュージックで、五感が刺激されるところがたまらなかったからだ。

まずは美味しそうな香りにつられてご飯屋さんへ。「GGBC」で忘れてはいけないのが、どれも選びがたいほどの豪華な人気の飲食店の出店。今年の出店では福岡で馴染み深いお店から、この機会に食べておきたかったレアなお店まで、さまざまな注目のお店が来ていた。

ぼくがその日、お昼に食べたのは福岡・美野島で鉄板焼きの料理を提供していた「音℃」さん。系列の「STEREO COFFEE」さんや、「Cotty / 喫茶コティー」さんの飲み物や料理が大好きなので、一度「音℃」さんの料理も食べみたく、この機会に立ち寄った。食べたのは、「塩焼きそば」。

ドリンクは、天神・今泉の地で人気のデリカテッセンのお店をしていた「Delicatessen 三月の水」さんに決めた。頼んだのは福岡のいちごで有名な「あまおう」を贅沢に使用した「あまおうシロップ」。青空の下、「音℃」さんの絶妙な焼き加減で麺が美味しい焼きそばと、「Delicatessen 三月の水」さんの清らかな水色と、苺の赤色が美しいシロップの飲み物で食を楽しむ瞬間がたまらなかった。

いざ、腹ごしらえと喉を潤したあとは、メロウな音楽が流れていたエリアの方へ。この時間、音楽を鳴らしていたのはDJ KROさん。ヒップホップミュージック、R&Bをメインに極上のDJmixをYou Tubeなどで配信をされて活躍されている方で、レーベル「Chilly Source」のファウンダーもつとめている方。音楽好きの人ならば、みんなが大好きなこと間違いなしのポピュラーな楽曲から、最先端の気鋭の楽曲まで滑らかにまとめて響かせ続ける、エンターテイナーの作り出した空間は最高の一言に尽きた。

しばらく鴻臚館跡にいて気づいたのが、この会場はトンビのようなサイズが大きめの鳥から、定期的に遠方へ飛び立っていく飛行機まで、いろいろな空を移動するものが飛行していて、上を眺めていると「GGBC」の会場は空と近いと思った。今年の「GGBC」を象徴するような会場中央の青のモニュメントの中では、傘の下から空を眺めると、より一層空と接近できた感覚を覚えた気がしてよかった。

次に聴くことができたのが、ヒップホップアーティストのRin音さん。福岡出身のラッパーで、SpotifyやYou Tubeなどのサイトで楽曲が高視聴率をたたくなど、人気のアーティストの方だ。出身地である福岡・宗像の「むなかた応援大使」もつとめている方で、軽快な宗像の郷土愛あふれる話で、福岡県全体の人も親しみやすい地元トークを繰り広げながら、大人気の楽曲「snow jam」で会場を沸かすなど、福岡発のパーティの良さを再認識することができた。

そうそう。「GGBC」では食べ物と音楽のほか、行く人ならば必見のライフスタイルショップも揃っていたのだ。農産物を販売するお店、お土産にぴったりなお菓子を販売するお店、美容系のお店、服飾系のお店など、福岡で人気のお店や、県外各地の話題のお店が揃っていた。ぼくが立ち寄ったのは、福岡・六本松で人気のショップ「AMS SHOP & Hep Donuts」さん。中でも「Hep Donuts」さんは主に週末に営業している店舗の方や、定期的なお祭りの出店などで絶品のドーナツを販売されているお店で、過去に一度食べたときから感動が忘れられず、今回も要チェックしていた。ドーナツ好きの『羊男』や『しまじろう』に一度は食べさせたいぐらい、ドーナツフリークにはたまらないほど、ドーナツ愛が輪っかに詰まっているお店なので、帰ってからの余韻も残しておきたいと思い、お土産として持ち帰った。

次の音楽はお待ちかね、DJブースでステージに立っていたぷにぷに電気さん。ネットで音楽を発表されるなどして近年話題となっているシンガーソングライター/音楽プロデューサーで、人気のアーティストととも共同で音楽を作られている方。普段は、よく聴くSpotifyのプレイリストなどに入っていて耳にしていた方なのだが、実際のライブ会場で聴くと、電子系の音と、ぷにぷに電機さんの歌声が合わさった都会的な音楽で、室内でなくとも野外で聴くのもまた別のグルーヴが広がって、心地いいと思った。

ぼくがこの日、最後に聴くことができたのが、ギターと電子音楽を使用しムーディーかつ、エモーショナルな楽曲を多数輩出している人気の音楽プロデューサー・Shin Sakiuraさんのステージ。気持ちのいい天気に、四つ打ちの心躍る音楽や、電子音楽とともにギターで演奏される熱い音楽で、アルコールはもちろん、いろいろな飲み物の美味しさが大きくなりそうな、会場全体が爽快な気分になった気持ちを覚えた。

ぼくにとっては初めての「GGBC」は2023年のDAY1からはじまった。気持ちのいい天気に、豪華なアーティストが奏でる音楽で、唯一無二の世界観を味わうことができていたと思う。その日は明日も楽しみに、会場を跡にした。(帰ってから食べた「Hep Donuts」さんのドーナツはいつもと変わらず美味しかった)。

【DAY2(4月23日)】


DAY1の初日とは打って変わって、今年の「GGBC」を締めくくる最後の日、DAY2は今にも雨が降りそうな天候で、気温も少し肌寒かった。が、終わってみて振り返れば、天候も何のそのの魅力満載の体験がたくさんできたと思う。

寒い野外イベントで暖を取る秘訣。美味しくて温かい飲み物を飲もう。「GGBC」では、福岡で数店舗お店を構えて、街の人々に愛されているお店「manucoffee」さんも来ていた。普段定期的にコーヒーを飲むためにお店に立ち寄ることが好きなぼくなのだが、「GGBC」のイベントの中でも、それは例外ではなかった。この日は気分と、気温も兼ねてあったかいレモネードを飲んだのだが、これがまた身体に染みてとても美味しかった。

あったかいレモネードに落ち着いているのもつかの間、音楽のステージでは福岡のパーティではお馴染みの、会場を揺れに揺らすパーティロッカー・NONCHELEEEさんがお出まししていた。ユニークなイラストを手掛けるなどして、イラストレーターとして活躍されている方なのだが、福岡の地はもちろん、各地のパーティ会場で、音楽のパフォーマンスをメインに場内を沸かすことでも有名な方だ。ユニーク全開な出で立ちで、「GGBC」でも面白おかしい独特なステージパフォーマンスで盛り上がった。NONCHELEEEさんの痛快、何とも言えないようなムーディーな雰囲気は、どんよりとした天候とも反比例して、とても面白いものに。

GGBCでは小さな子どもたちも、楽しめる仕掛けがいくつもあることで有名だ。今回仕掛けを手掛けているのは、福岡のイベント会場をメインに、子どもや親子連れが楽しめる企画を催している「コドモディスコ」さんと、知る人ぞ知るシャボン玉に愛し愛されて、シャボン玉を自由自在に操るシャボン玉おじさんさん。会場ではカラフルな登り台のようなもの、ユニークな縄跳びや絵本の読み聞かせなどがあって、その空間ゆえの愛らしい瞬間をいくつも目にした。特に大人のぼくまで感動したのが、シャボン玉おじさんさんが手掛けるいろいろな形と色、ほのかにいい匂いがする一風変わったシャボン玉たち。ご本人が空にシャボン玉を放つパフォーマンスだけでなく、子どもたちからのリクエストがあればその内容によせて、自在にいろいろなシャボン玉を飛ばしていて、純粋に「すごい」という思いと、笑顔あふれる空間に微笑ましい瞬間があった。

そんな感動をよそに、次は時代を超えて、いろいろな世代に愛され続けるバンド「オリジナル・ラブ」の田島貴男さんがステージに立つときがきた。熱く、熱く、ときにメロウな田島貴男さんの音楽は、クラシック「接吻」の楽曲のほか、田島貴男さんの声とギターでロックミュージックの至高たるものを見ることができて、伝説的な瞬間に立ち会えた気がした。ステージの途中では、シンガーのTENDREさんも途中で立ち入り、二人の人気の楽曲「優しい手 ~ Gentle Hands」を即興で演奏されて、演奏中は二人の作り出すグルーヴにうっとりと聴き惚れた。田島貴男さんのステージ終盤では、座っていたオーディエンスもほぼ全員が立ち上がって、クラップで参加するというオーディエンス全体も巻き込んだパフォーマンスで、曇の気候の中に燦々の太陽よりも熱い気持ちが沸き上がる瞬間があった。

今年の「GGBC」もラストスパートということをお知らせするように、気づくとすっかり景色は夕方の景色になっていた。ふと落ち着いた頃に肌に感じたように、DAY2は少し寒かったと思う。また温かさを求めるときが来て、カレー好きならば要注目の「THE CURRY UNIVERSE」さんの出店で来ていた、福岡・高宮で「チャイ」が有名な人気店「Chai Tea Heron」さんのチャイで暖を取った。系列のお店でカレー屋さんの方の「モリトネリ」さんと同じく、スパイスを絶妙に美味しく扱う「Chai Tea Heron」さんのチャイは、お店で飲んだときと同じように、少し漢方っぽいほろ苦さと、独特な甘さを感じて、とても美味しかった。

音楽ステージの方では、次第に段々とヒップホップのムードに。なにを隠そう、このときDJステージに立っていたのは、近年業界では欠かせない存在といっても過言ではないillmoreさんがいたからだ。DAY1のDJ KROさんと同じく、「Chilly Source」のレーベルメイトでもある方で、大分を拠点に活動されているビートメイカー。段々と空が暗くなって、綺羅びやかに輝きはじめる場内の蛍光色のライトと共鳴するように、クールに、ときに艶やかに、終盤でもさらに盛り上げていく姿はかっこいいの一言。

もうそろそろこの最高な野外パーティ「GGBC」の空間が終わる。いろいろな夕方のパーティ会場を散歩もかねて外から内から、目に焼き付けながら名残惜しさゆえの干渉に浸っていた。自然と、雨が降りそうな気配は収まっている。一方で気温の低下とともに、風の強さが次第に強くなり、さまざまな旗がゆれにゆれていた。

DAY2の最後、「GGBC‘23」の最後を締めをくくるのは、音楽好き、ヒップホップ好きには欠かせない、同時代に生きて聴けること自体が最高なジャズ/ヒップホップバンド、我らの「韻シスト」さん。はじまりは、MCのサッコンさんの巧みなマイクパフォーマンス、ギターのTAKUさん、ベースのShyoudogさん、ドラムのTAROW-ONEさんの華麗なジャズの演奏で、気持ちよくゆれる音楽を場内で響き渡らせ、今にも踊りだしそうな気持ちにワクワクした。

この締めの「韻シスト」さんのライブ、演奏とトークを含めたライブパフォーマンスはさることながら、会場内では愛らしいできことがたくさんあった。オーディエンスにいる小さな子どもが途中で絵を描いているならばメンバー全員が、オーディエンス全員が、その絵に称賛する愛あふれる光景を目の当たりにする瞬間。メンバーのShyoudogさんは、数年ぶりの韻シストのライブとして好きだという福岡の地に訪れたことに感動して演奏した、ご自身の子どもへの愛を歌に込めた「パパはブルースマン」の曲にほっとする瞬間。まだまだたくさんあったのだが、そのどれもが段々と暗くなる福岡の夜空を温かく照らすような、ここだけの灯火がついた時間が思い出として残っている。終盤の頃には韻シストさんが参加している大人気曲「HOT COFFEE」を特別バージョンで演奏し、さらにその灯火は眩しいくらい光っていた。

最後の最後は、韻シストさんがステージからいったん降りて、アンコールとして再びステージに立つという、お待ちかねの瞬間がきた。歌われていたのは、海外ジャズの代表曲をカバーしたもの。サッコンさんの外国語のマイクパフォーマンスと、TAKUさん、Shyoudogさん、TAROW-ONEさんのソウルフルな演奏で、その光景はとても綺羅びやかに輝きを放ち、最高のフィナーレとなった。

「GGBC‘23」。舞台となった鴻臚館広場を去るときは、原っぱ、石畳の坂道まで一歩一歩帰路に向かうときにDAY1とDAY2の面白かった記憶を思い出しながら、満足にあふれる足取りで帰っていたと思う。タイトルになっている福岡のベストなフードはもちろん、当日、福岡の一画で間違いなく心動かされる響きを轟かせていたDJ、歌手のアーティストの方の音楽、運営の方が場内で設計、調整していた福岡だからこその唯一無二のグルーヴ間まで、ありとあらゆる意味で福岡という場所の、季節の、イベントの、そして街の人々の最高な良さを再認識させてくれたと思う「GGBC」。今年のベストな記憶として、まだまだしばらく余韻が残りそうだ。

「GGBC‘23」
期間:
DAY1 : 2023年4月22日(土) / DAY2 : 2023年4月23日(日)
場所:鴻臚館広場
(鴻臚館広場福岡県福岡市中央区城内1鴻臚館広場)