【映画評】 杉田協士『遠くの水』
対象に視線(カメラ)を向けるのは、視線を「向ける/向けられる」ことの緊張で何かが発生するのを期待するのではない。少なくとも杉田協士監督にとってはそうではないだろうし、対象が複数であっても、複数者の視線の交換や交差で何かが振動し、思いもかけぬ時間が動き出すのを待つのでもない。ただ、対象のゆらぎのようなもの(可視化できるとは限らないゆらぎ)をただ見つめ、今、目の前に存在していることの確認としての視線の謙虚さと言えばいいのだろうか。
本作の冒頭、羽田空港から浜松町に向かうモノレー