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どの扉から入ろうかな_doors

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映画、演劇、ダンス、音楽、マンガ……。 無指向性マイクのようにカルチャーを駆け巡りたい。そうすれば、これまで見えなかった世界が現れてくるはず。
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2022年6月の記事一覧

【映画評】 宮崎大祐《ニンゲン三部作》 (1) 『Caveman’s Elegy』トートロジーとしてではなく

《ニンゲン三部作》は、井出健介の歌「人間になりたい」から着想を得た短編三作品であり、音楽を源とする短編集と言ってもいいだろう。かつて音楽を主題にした映画フェス(現在もあるかもしれない)MOOSIC LABがあったが、宮崎大祐監督にかかるとこんなにまでも社会論的、存在論的深度に満たされた作品になるのかと、わたしは驚きと感動を隠せない。 以下、三作品の感想を書くのだが、いくぶん長くなりそうなため、2・3回に分割して掲載したい。 《ニンゲン三部作》は次の三作品からなる 『Cav

【映画評】 ガストン・ドゥブラット、マリアノ・コーン『ル・コルビュジエの家』世界は《内/外》に二等分される

世界は《内/外》で二等分されている。内にハンマーが振られ打音が鳴り響き、と同時に外は振動する。再びハンマーが振られそれが繰り返される。内が崩れるとともに外は亀裂が入り、やがては内と外は穴で繋がる。世界とは、白・黒で左右に二等分されたスクリーンのフレームのことである。 アルゼンチンの監督ガストン・ドゥブラット、マリアノ・コーン『ル・コルビュジエの家』(原題)《El hombre de al lado(隣の男)》(2009)の冒頭のシーンである。 ここからストーリーに触れてい