【映画評】 白石晃士『ある優しき殺人者の記録』 狂気と救済のフェイクドキュメンタリー
白石晃士『ある優しき殺人者の記録』(2014)
白石晃士監督作品の暴力、それは映画のフレームの向こう側の暴力ではない。作品を見る者の眼前の、手の触れるところにある暴力、あるいは、作品を見る者自身の暴力としてあり得る。上映が終了し館内の明かりが灯されたからといって、決して安泰としてはいられない。それ故、白石晃士作品は厄介極まりない。作品の情況が厄介であるに反し、ストーリーの骨子はシンプルである。
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