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神田川慕情2 〜6月6日に雨ザーザー降ってきて、または、荒れ地の魔女〜

 その電話は、外出時にかかってきた。
「6月6日の10時30分〜45分に決まりました。混雑するので、くれぐれも早く来ないで下さい。」ワクチンの接種日を知らせる、主治医のところからの電話だった。近所の主治医で接種できるようになったというので申し込んでおいたが、希望者が多すぎて抽選に。その当選を知らせる電話だった。
 そもそも本心は、こんなワクチン、グズグズして打たずにスルーしようかと思っていた。開発メーカーの発表も数多の医師の発言も、それを鵜呑みにして錦の御旗よろしく振りかざす政府も胡散臭くて信用できないから。ところが、そんな母親の質をとおにお見通しの娘からピシャリと言われた。「ババに会うのを楽しみしている孫たちがいるのだから、さっさと打つように!」
 もはや、そう長くは生きられない。まして子孫を残す能力なんて、とうにない。そうそうに妥協して、申込みの列に加わった。
 突然の電話で、筆記用具を探す暇もない。とっさに、間違えずに丸暗記する手がかりを探した。月と日が重なる日は、1月1日は元旦、3月3日は桃の節句、5月5日は端午の節句、9月9日は菊の節句…… さて6月6日は何だっけ? 6は陰の月だから、そんなのなかったかも… そして閃いたのが「6月6日に雨ザーザー降ってきて〜〜アッという間にコックさん」の絵描き歌。よし、日にちはOK! 時間のみスマホを切ったら、すぐにスマホにメモすればよし!
 接種はあっけなく終わった。血液採取で、中空の太い針で血管を探られる痛みに比べれば、エッという感じ。その日は、接種した左腕が重痛い程度の副反応。
 翌日から腕が上がらなくなり、怠さが続き、仕事も、日常もやりおおせない有様。勿論、予約していたヨガ教室もすべてキャンセル。
 これはまずいと、昨日、いつも参加していた運動量の多いプログラムは諦め、リンパドレニージュ的なマッサージ中心のマイルドなプログラムに出かけてみた。室温・湿度高めに設定されたトレーニングルームでマットに座るやいなや、ダラダラと汗が出だし、マッサージ中にはさらに大量の汗! 老廃物か毒素か、はたまた自分の実体か、ともかく出て、出て… ジブリ映画「ハウルの動く城」の荒れ地の魔女(美輪明宏さんの声が印象的だった)よろしく、マットの上に不穏な液体の水たまりだけ残し、跡形もなく消えてしまうのではないかと思えた。
 その後、マッサージの効果を確認するために、若干のヨガのポーズ。プランク、ダウンドック… 全身の筋肉を使うダイナミックなポーズではあるが、いつも何ともなかったポーズが驚くほど辛い。全身の筋肉がバラバラになってしまった感じ。今までだって、1週間や10日は自主的に行けなかったことも、行かなかったこともあるし、1回目の緊急事態宣言の時には、教室自体が閉鎖されていた。それなのに、こんなことは初めてだ。これもワクチンの副反応だろうか? だとするとアスリートには深刻だろう。
 アスリートといえば迫るオリンピック。マスコミの論調も「開催反対」というよりは「やるんだとしたら…」的に変わっている。こんな世の中に誰がした? そう、私たちだ! そう思うと若い世代や子どもたちに申し訳なくて、せっかく荒れ地の魔女は消えたのに、自戒と無力感の坩堝にまたハマりそう… 
 G7で初の国際会議にお目見えする日本の首相。誰のしつらえたメッセージを読むのか知らないが、かつて世界から揶揄された「いつも意味なくニヤニヤ笑っている日本人」だけは演じないでほしいものだ。

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