ミスミG(9962)に関するメモ(1)

25日に出された業績上方修正を再度引用。

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「利益に関しましても、IT活用や自動化による効率化の徹底、投資の厳選等により収益性の改善が見込まれ」のフレーズが気になった。それでいろいろとググって調べてみた。どうやら、確変が起きている。

この上方修正をきっかけに meviy について力を入れて調べ始めたが、まあパワーワードが出るわ出るわでびっくりしている。まず、meviy そのもでなく、meviy という新システムを顧客に認知させていくのが同社にとってはチャレンジであったという記事。(ここからの太字は筆者による強調)

2016年には、カタログではカバーできない部品をウェブ上でオーダーできる新規サービス「meviy(メヴィー)」の提供を開始し、顧客を拡大している。一方、長らく「カタログが営業担当者の役割を果たす」というスタイルであったため、meviy事業ではゼロから営業組織を立ち上げることになった。そこで抱えていた課題を、「The Model」の概念とSalesforceの活用推進で解決したという同社。新しい営業の手法に柔軟に対応した同社の取り組みの軌跡と、Salesforce活用のポイントをうかがった。

あ、そうだったのか。ミスミGは営業がいらないビジネスを展開してきてたのか。

現在、カタログで扱っている商品は約3,100万点で私の知る限り世界最大です。何十年もカタログを毎年作って見込み客を含むお客様に送付しており、カタログは営業担当者としての役割を果たしてきました。現在はグローバルでも、約31万社以上のお客様がいます。世界中のものづくりの現場に確実短納期で部品を提供させていただいているという意味で、当社は「ものづくりの社会インフラだ」と考えています。お客様から「電気、ガス、水道、ミスミ」と言っていただくこともあるくらいです。

早速パワーワードその1。「電気、ガス、水道、ミスミ

meviyの構想自体は1985年から始まっています。カタログのビジネスモデルは非常にイノベーティブでしたが、ものづくりの現場では、独自の形状を持つ部品を必要とすることも多く、ここまで取り扱い部品を増やし続けてもカタログだけで購入できる部品は半分ほど

うーん、筆者も大学卒業後製造業に在籍したことがあるが(海外営業部)、工場は新人研修でいただけなのでここまでのことは知らなかった。

カタログで選べる部品は早く届きますが、カタログで選べない複雑な部品はこれまでと同様に設計図面を作成し、FAXで見積もりを依頼し、長い製造納期を待つこととなります。お客様側は部品がすべて揃わないと設備や装置を完成させられませんから、複雑な部品に関しては「待つ」時間が発生してしまっていることで、ものづくりのスピードが速くならないという大きな課題がありました。この課題に対し、我々ミスミはものづくりの社会インフラである企業として長年研究開発を重ねながら解決策を模索してきました。

この自己認識はパワーワードその2だね。「ミスミはものづくりの社会インフラ」という言葉を経営陣が外部に向かっていうのは凄い。

meviyはこの「カタログでは選べない、図面を書いてFAXを送らなければならない部品」をターゲットとしたクラウドサービスです。設計データをウェブサイトからそのままアップロードするだけで、部品の形状などを自動的にAIが認識し、3秒ほどで価格と納期を表示します。お客様が注文ボタンを押せば、設計データが工場の機械に転送され、加工が始まります。この工程も、以前は人間が1時間ほどかけて、紙の設計図面を見ながら加工を行う機械にプログラムを入力していましたが、meviyでは設計データからプログラムを自動生成して工場の加工機械に転送することで、デジタルデータだけで見積もりから加工までを一気通貫で行っています。

いろいろなクラウドサービスの説明を読んだが、「カタログでは選べない、図面を書いてFAXを送らなけらばならない部品」をターゲットとしたクラウドサービス、ときた。これ以上ターゲットをピンポイントに具体的に絞り込んだクラウドサービスが他にあるだろうか。はい、パワーワードその3も決まり。

Salesforceは以前から導入していたのですが、正直使いこなせていない状態でした。営業の結果を記録として残す“箱”としての使い方にとどまっていたのです。ただ、私たちは製造業ですから、さまざまなプロセスを厳しい目で見て、無駄を排除することが身についています。その感覚で、営業においても多くの無駄が見えてきました。

製造業の現場の生産性の視点で営業プロセスに切り込んだわけだ。

The Modelは、お客様の状態をステージに分けて、それに合わせた役割分担を行い、それぞれのシングルミッションの中で生産性、効率を上げて、全員でお客様の成功を目指すという概念やプロセスです。ミスミの営業の現状に照らし合わせると、継続的に接触できていないお客様がいる、定着化に向けたご支援ができていないケースがあるなど、抜け漏れの多い状況が明確になりました。The Modelの枠組みを導入することで営業効率を劇的に向上し、より多くのお客様に価値をご提供できると考えました。
 そこで、meviyカンパニーの一大プロジェクトとして、トップマターでThe Modelの導入を決定しました。ミスミに合うThe Modelの導入を考えると必然的にその概念を体現するSalesforceの活用も必須になりました。

次のやり取りもすごい。

――Salesforceを使って良かったと感じた点について教えてください。
深田 Salesforceは、営業・マーケティング組織にとってデファクトスタンダードのツールになりつつありますから、使いこなすスキルを持っていれば転職やキャリアチェンジしてもすぐに戦力になる営業・マーケターになることができるはずです。単に記録を残すだけでなく、自分でいろいろとアイデアを考えて形にできるツールであるSalesforceを使えることは、自社の営業やマーケティングメンバーのキャリアを考えても、身につけておくべき必須スキルであると感じています。
吉田 個人的に、BtoBの営業・マーケティングのために作られているツールはまだまだ少ないと感じています。BtoBの取引は非常に複雑で、企業と個人の紐づけをしっかりデータとして残していかなければなりません。Salesforceでは標準の機能ですから、経営者から見ても非常に使いやすいです。

経営陣が他社ベンダーのソフトをここまで理解して使い込んでるのか。びっくり。自社の社員のキャリア形成、売れる人材になるために Salesforce の使いこなしは必須というのもかなりなメッセージ。

吉田 私たちは、The Modelの概念にもとづき、標準化・一元化・自動化の3本柱とSalesforceの活用で営業スキーム、営業プロセスを大きく変革しました。結果、meviyのユーザーは5万人を突破、対前年比で3倍と急拡大することに大きく貢献できたと思います。根源にあったのは、きちんと自社の営業のスタイルやプロセスがどうあるべきかを顧客目線で考え直すきっかけを得られたことでした。The ModelとSalesforceを導入すれば、自分たちの業務を効率化でき、労働生産性を上げることでサービス開発や顧客との時間を長く持つことができるようになりますから、必ず企業としての競争力を上げることができるはず

つまり、同社は世界一の製造設備部品のカタログによって営業がいらない組織だったのが、meviy という新システムを営業しなければならないこととなり、それで、同社に営業の革新が起きたと。ならば営業は既に確信されたので、meviy 自体がきちんとしたシステムならものすごく強いビジネスになる。では、それについて探っていこう。

ダイアモンドに次の前後編の連載があった。

「meviyはミスミだけでなく、製造業全体のDXを目的としている」と語るのは、ミスミ常務執行役員 兼 ID企業体社長の吉田光伸氏。サービスの立ち上げから現在に至るまで、meviyの成長を担ってきた人物だ。

製造業全体のDXを目的、とな。大きく出るなあ。

吉田氏の経歴

株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 兼 ID企業体社長
日本電信電話株式会社(NTT)へ入社後、日本オラクル株式会社を経て、2008年から株式会社ミスミグループ本社へ参画。 事業責任者として国内事業の再構築・中国事業の成長加速を経て、ミスミグループ内の新規事業である「meviy」(メヴィー)の立ち上げに従事。 2018年よりmeviy事業を展開するID企業体を設立、企業体社長に就任。製造業のDXを推進する革新的なものづくりプラットフォームとしてmeviyの成長を牽引。 インターネット黎明期から一貫して「デジタル」を活用した数多くの新事業の立ち上げ、事業責任者としての経歴・実績を持つ。

な、る、ほ、ど。

金型部品の提供から始まったmeviyは、2019年には板金部品や切削プレートなどのFAメカニカル部品も取り扱うようになり、本格展開。2020年12月時点で5万を超えるユーザーが利用し、リピート率は8割超、450万を超えるデータがアップロードされるサービスとなっている。

お、おう。

「日本の製造業38万社のうち99%が中小企業にあたる。月45時間以上の残業禁止が適用されたことで、これまで残業でこなしていた業務量がこなせず経営が悪化し、やがて廃業の道を選ぶ企業も出ている。1980年代のジャパン・アズ・ナンバーワンの時代は労働人口も1人当たりの就業時間も最大にふくらんでいた。それが、いずれも年々減少して総労働時間が減る中で、限られた時間で多くのアウトプットが必要となっている。製造業はやり方を根本的に変える“改革”が必要だ」(吉田氏)

そう、残業しないと受注がこなせない製造業は多いんだ。世の中。

「GDPの2割を構成する製造業の競争力向上は、日本の至上命令だ。仮に1社当たり年に1台、例に挙げたような機械を組み立てるとすれば、各社で1000時間が調達時の『作図』『見積もり』『待ち時間』に費やされることになる。製造業38万社すべてがこの状況のままであれば、3.8億時間、コスト換算では年間2兆円以上の間接コストが調達で消える計算になる」(吉田氏)

途中をかなりはしょって結論部分だけをもってきてしまったが、上記の間接コストがかかるのを meviy は劇的に減らせる可能性があるわけだ。ワクワクする話ではないだろうか。

一方で、部品表のうちの残る48%は、独自に設計が必要な図面品のままだ。購買プロセスをどう短縮しようとしても、見積もり・納品の工程で約3週間がかかる図面品。手配から商品確保までに、規格品との間で時間のギャップが発生する。結果として顧客は、入手が遅い、図面品の到着に合わせて待つことになってしまう。
「複雑な部品は標準化が難しい。仮に標準化できたとしても、今度は標準化された部品が膨大な数になって、顧客はその中から選ぶということができなくなってしまう。そこで、部品表の半数を占める図面品を、標準化という手法をとらずにいかに短納期で納品できるか、研究開発を繰り返した結果、誕生したのがmeviyだ」(吉田氏)

これは革命的なシステムのような気がする。

続編はこちら。

 従来はマシニングセンターで作りたい部品を加工するには、設計データに基づき人がプログラミングを行う必要があったが、meviyでは製造プログラムを自動生成するため、人手や時間を省くことができる。このフローにより、最短で即日出荷を可能としている。meviyの登場により、カタログで扱ってきた部品3100万点、800垓(10の20乗、兆の1億倍)の組み合わせを「無限大に広げることができた」と吉田氏は言う。
 meviy導入企業の規模は大手から中小まで幅広く、2020年12月には5万を超えるユーザーが利用。テクノ・システム・リサーチの2020年調査によれば、オンライン機械部品調達サービスの中では、ユーザー数で半数以上のシェアを占める。ユーザーのリピート率は8割を超え、450万を超える設計データがアップロードされるサービスとなっている。
 リコーの産業プロダクツ事業本部では、研究・開発における試作品の検証でmeviyを活用している。リコーでは、これまでは3Dで試作品を設計した後、見積もり・発注のために2D図面を作成する手間がかかっており、業務負荷の軽減と、開発のトライ&エラーのスピード、精度の向上が課題となっていた。
 それがmeviyの導入により、設計から納品までのプロセスが2週間から3日に短縮。従来の1回の開発サイクルで、2~3回のサイクルを回すことが可能となり、精度が向上したという。
パナソニック インダストリアルソリューションズ社では、電子デバイス製品の生産設備の設計に活用。ライン全体では部品数が5000点にも及ぶことがある同社では、多量の部品の設計開発をいかに高精度で効率的に実現できるかが求められていた。
 meviyを導入することで、紙図面の作成時間や業務負荷の削減ができ、大きく効率化できたという同社。浮いた時間を“試行錯誤して考える時間”に充てることができるようになり、設計品質が向上したそうだ。また、エラー時に製造不可能な箇所がすぐ表示されるmeviyの仕組みのおかげで、若手設計者の設計知識も向上したそうだ。
 吉田氏は「1500点の部品で構成される機械なら、設計から製造までの約1000時間を約80時間に削減できる。つまり、92%もの時間の削減だ。我々がやりたいのは労働生産性の改革。meviyという道具で余計な時間を省くことだ」と語る。
「meviyでものづくりに創造と笑顔をもたらしたい。製造業はよりクリエイティブであってほしいと願っている。紙図面から始まった『部品調達1.0』の時代から、40年前にミスミが実現したカタログ販売による『部品調達2.0』、そして設計データによる『部品調達3.0』へと調達を変え、ものづくりの進化に貢献していく」(吉田氏)

はい、いつもの通り株探で業績、財務、年足をチェック。

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ここ3期、営業利益率が一桁に落ちている。低迷しているようにも見える。

しかし直近の四半期は営業利益率二桁を回復。前年等四半期の増益率も20%を超える。

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今回の上方修正に基づいて計算すると下期の回復率はこうなる。

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営業益、経常益は過去3期の下期を上回る。急改善である。

財務履歴はこう。

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有利子負債無し、利益剰余金、自己資本は順調に積み上がり、自己資本比率も70%~80%台と鉄板の財務である。

年足

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基本的に右肩上がり。2018年の3700が上場来高値。

自分としては、meviy の開発ストーリー、営業ストーリー、顧客の反応を読んで、今年中の上場来高値更新の確度は高いと思っている。

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