ミスミG(9962)に関するメモ(3)

同社の決算説明資料、決算短信、有価証券報告書にはなぜか meviy の単語がほとんど見つけられない。不思議に思っていたが、株主に基本的に半期ごとに送られる株主通信にはその記載があるのがわかった。今まで、meviy に特化したサイトを情報源としていたが、株主通信の記載を見ることで、同社のなかでの meviy に対する思いというか、meviy の全体的な立ち位置が探れるのではないかと思って、株主通信を時系列に追ってみる。

ミスミグループ通信アーカイブ

同社の株主通信のアーカイブで2015.03期からの株主通信がアーカイブされている。

2015.03 期の株主通信は meviy の記載はなし。

2016.03期の上半期の株主通信にも meviy の記載はなし。

2016.03期の本決算の株主通信に meviy が初登場

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テキスト部分では「RAPID Design」には言及があるが、「meviy」にはない。この時点では会社全体としては RapidDesign の方が期待が大きかったということだろう。図でも、RAPID Design 上に位置している。

2017.03期の上半期の株主通信で、meviy について図だけでなくテキストでも言及

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meviy について

利便性が着実に浸透することによって利用者が確実に増加しており、商品領域の拡大による今後の業績への貢献を見込んでいます

とのこと。まだ、数値的な言及はない。

2017.03期本決算の株主通信では、RAPID Design とmeviy が並列関係に

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設計プロセスの革新に向けて、当社ならではのユニークな展開として、設備支援設計支援ツールを随時拡充しています。その代表例が、設計者が利用する CADと連携した「RAPID Design」と「meviy」です。

同社の中でも、この時期に「RAPID Design」に対する期待と同等の期待が「meviy」にもかけられるようになってきたことが想像される。

当社では、紙カタログ、eカタログに次ぐ、第3のメディアとしての3D-CADシステム連携ツールと位置付け、サービスの定着を図っていきます。

どう考えても、同社内での 「meviy」の位置づけが高まっている。

2018.03期の上半期の株主通信では meviy の記載が図でもテキストでも消える。

2018.03期の本検査の株主通信でも、meviy はおろか、RAPID Design への言及なし。

2019.03期の上半期の株主通信では meviy の記載なし。

RAPID Design については以下の記載があった。

本格展開を開始しました。まず日本と中国市場でスタートし、利用者は順調に増加しています。下期からは本ツールを韓国と米州、欧州にも展開していきます。
2019.03期の本決算の株主通信で meviy の言及が復活。しかも力強いメッセージ。

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本年3月より新たにFA用部品の切削プレートを影響範囲に加えています。今回のサービス拡充によって、顧客が設備・装置の設計で使用する大部分の図面加工品に対応することが可能となり~顧客に高い利便性を影響しながら、競合他社に対する高次元な優位性の確保を目指しています。

太字は筆者による強調。このテキストで同社全体としてもまた一段と meviy に対する認識を変えたことがはっきりとわかる。

2020.03期の上半期の株主通信では meviy への言及が大きく増加

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同社の meviy に対する認識は大きく変わっているのが、この株主通信の面積の取り方でわかる。

2020.03期本決算の株主通信ではトップメッセージでコンパクトに meviy RAPID Design に言及

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ここで重要な点は、meviy と RAPID Design を並列に表記しているものの、その順番である。かつては、RAPID Design が先に来ていたが、ここでは meviy が先に来ている。並列関係ながらも地位の逆転があったことが窺われる。

2021.03期上半期の株主通信では meviy への言及なし。かわりに、RAPID Design のモデルチェンジが大きく扱われた。

以上、同社の株主通信を時系列に見て、meviy について同社全体としてどのように認識しているか、また、その認識が変わってきたのかを見てきた。自分としては、同社の中でも meviy の重要性がどんどん高まってきているように取れたのだがどうであろうか。今期の決算発表や、株主通信で meviy についてどういう言及がなされるか今から楽しみである。

おまけとして、前回のエントリーの時に、気づいていたかった吉田氏と入山教授の対談にもリンクをしておく。引用部の太字は筆者によるものである。

入山 meviyは日本の製造業界ではもしかしたらその先駆けかもしれない、グローバルBtoBプラットフォーマーになる可能性を強く感じています。あるいは、もうすでになりかけているようにも感じますが。 正直に言って、テック業界におけるBtoCプラットフォーム争いでは、日本企業はGAFAに惨敗しました。私の理解では、その理由の一つは、ネットやスマホ、SNSといった新しい分野だったから。つまりスマホは「さら地」なので、既存プレイヤーとの調整や交渉がそれほど必要なかった。 超高速でPDCAを回し、 エコシステムをつくり仲間を集めてプラットフォーム化し、ネット上で巨大化すれば勝負あり。一度プラットフォーマー化するとそう簡単に他社が割って入れない。テックビジネスにおけるスマホベースでのBtoCプラットフォームは今この状況にあると思います。しかし、BtoBのプラットフォームはまだこの段階に来ていない。多くの分野で、まだ他社の追随を許さないプラットフォーマーは存在していない。この観点でみると、ミスミは部品製造と調達分野におけるグローバルプラットフォーマーになる可能性があり、とても良いポジションにいます。 何より、長年のカタログビジネスで培った実績と顧客基盤がある。ここはBtoCビジネス以上にBtoBは顧客との信用や信頼が大事ですから、とても重要です。そして、グローバルビジネス体制がすでに築けている。さらにカタログとmeviyを組み合わせたイノベーティブで参入障壁が高いデジタルサービスを持っていますからね。
吉田 そうですね、あとは近年グローバルでオンデマンド製造サービス企業が増えていますが、殆どがテック側からの参入なんです。 そういった企業の参入により業界が盛り上がることは勿論好ましく思っています。が、製造業にとって一番肝心な“品質”や“納期”に関してプロが求めるレベルに達しているところは多くありません。 だからこそミスミはものづくりに長く携わる企業として、徹底的な製造業のプロ目線でのサービスの提供と、高品質・確実短納期に、こだわり続けます。




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