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南の島のビールのはなし

今日はちょっと重めのはなしを。
こんな経験をみんながしたら、
少なくとも知るだけでも、
世の中ってもっとやさしくなるんじゃないかなあってはなし。

大学3年の夏、教授のプログラムで、ミクロネシアのヤップ島での2週間のサバイバル生活をしました。海や緑で溢れた美しい島です。

私たちは伝統的なログハウスに泊まり、
村の人々の知恵を借りながら、
ココナッツの殻を燃やして煮炊きをし、
バストイレも自分たちでつくって、
暮らしました。

数日間地元の人のお家にホームステイする期間があって、わたしは村一番の物知りお母さんと評判のファミリーの元へいきました。

村の伝統的なこと、たくさん教えて貰うんだ〜

と、わくわくしながらお家に行くとびっくり。

家は半壊状態。割れた窓にはビール瓶がいっぱい刺さってた。息子はバイオレンスゲームに夢中。

聞いてた話とちゃう!!!

どうやら10年ほど前の台風から、
家を直してないらしい。

楽しみにしていたお母さんは、毎日毎日ビールばっかり飲んでて。出てくるご飯も毎日「SAPPORO ICHIBAN」

聞いてた話とちゃう!!!

「村のみんながお母さんのこと、村一番の物知りだって言ってたよ〜!!いろいろ教えて!」とわたしが言うと、

「それは昔の話なの。外からやってきたビールとかラーメンを知ってからわたしは怠け者になってしまったの。本当はこんなにビールだって飲みたくないのに」

外から新しい文化が入ってくることはもちろん悪いことじゃないけど、これじゃ島の美しさがなくなってしまう。外国から送られてくるものの多くはプラスチックで、それを処理する場所もなくゴミは溢れかえっていた。

わたしが一番ショックだったのは、
アメリカのビール会社が
プロモーションとして1年間村の人たちに
無料でビールを提供して、味に慣れてもらったところで、販売を拡大させたってこと。

飲み方を知らない島の人たちは
アルコール依存になったり、
犯罪が増えたりしたらしい。

ビールの売り上げは拡大して、
沢山販売した人はエリアで表彰もされた。

そんな酷い会社があるなんて信じられない!!!だって人々の美しい暮らしが壊れてるだぞ!!自分さえ良ければいいのかよ!

日本に帰り、家族にその怒りをぶつけたら
「ビジネスなんてそんなもんなんだよ。売れて拡大しなきゃ。」と既に社会に出てる兄の冷たいひとこと。同じ家で育った優しい兄ですらこれが当たり前だと思ってるなんて。

私も兄も、もちろん社会の全てを知ってる訳ではない。世の中そんなに悪い会社ばっかりじゃないと信じたい。
少なくとも私が関わる仕事によって誰かが傷つくことは絶対にしたくない、強く思った瞬間でした。

小さな島の小さな村の家族のはなしを
機会があるとよく人に話します。
みんなびっくりするし、最悪だねって
共感してくれる。
だけど、「じゃあ自分の仕事はそんな風に誰かを傷つけてないかな」って考えたりすることってあまりないとおもう。考えても分からないし、考えたくもない。社会に出てみて、それがどんなに難しいことか痛感した。どうしたらいいのかねえ。

こんなどうしようもない話、知りなくなかったって人がいたらすみません。
でも知ることでちょっとでも社会が良い方向に向かっていったらいいなあ、と思って書きました。

以上です!


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