スプラ3サイドオーダー:期待していたほどの出来ではない
スプラ3のDLC、サイドオーダーを、エンドコンテンツ含めおよそクリアした。
感想としては、
間口が広く、特にスプラが上手くなくとも楽しめる
ローグライトを初めて触るプレイヤーにも取っつきやすいシンプルなシステム
といった利点がある一方、以下のような点が残念だった
コンテンツのバリエーションに乏しい
事前に期待していた「スプラのローグライト!」みたいな楽しさは無かった
特にハッキング(永久的な強化)に制限をかけた中難易度~高難易度攻略では、ゲームシステム上カタルシスをほとんど得られない
本稿では、一プレイヤーとして、「スプラとローグライト、どちらも楽しむユーザーがサイドオーダーに何を求めていたのか」という点について述べていく。
ローグライトとは何か
ローグライトというジャンルは最近ゲーム界隈では流行りのジャンルである。明確な定義を聞いたことはないが、ゲーマーの誰に聞いてもおよそ以下のような回答が得られると思う。括弧内はサイドオーダーでの例。
0からスタートし、プレイヤーはゲームプレイの中で様々な強化要素を手に入れていく(チップを手に入れる)
ゲームオーバーとなると、それらの強化要素は完全に失われる(チップの消失)
一方、ゲームを繰り返すごとに、何らかの永続的な強化要素を手に入れることができる(シンジュによるハッキング)
永続的な強化要素はゲームオーバーでも失われず、これによりプレイするたびにプレイヤーは"徐々に"強くなる
いくつかの中ボスを倒し、大ボスを倒したらクリア
ローグライトは、昔のアーケードゲームのような造りでありながら、以下のような部分が楽しさとされている点で大きく異なる
永続的な強化により、ゲームオーバーになり続けるごとにどんどんクリアしやすくなる
強化要素のシナジーや、イベントにより大幅にプレイヤーが強化され、うまく強化状態を整えると("ビルドを組む"と表現される)無双することができる
サイドオーダーは何が問題だったか
ビルド構成のランダム性が強く、完成させるのが難しい
サイドオーダーの強化要素は、ゲーム内で手に入るチップを手に入れていくことである。チップは全62種類で、事前のアンロックが必要なチップや、特定武器種(パレット)でしか有効でないチップも存在するため、現実的に1プレイで出会う可能性があるチップは50種類強である。
ビルドを組んでいくシステムとしては、Vampire Survivorsに近い。多くのチップを少しずつ手に入れていくのも良いが、見た目にもわかりやすい圧倒的な強化状態を手に入れるには、特定のチップを複数回取得したり(重ねる)、シナジーのある複数種のチップをそれぞれ重ねたりする必要がある。なお、ほとんどのチップは最大5枚重ねられる。
これだけ聞くと面白そうであるが、問題は、チップの"重ねにくさ"と"狙いにくさ"にある。
サイドオーダーは、(リロールなし、ショップなしで)27回チップ選択の機会があり、各フロアで3種の異なるチップを選択できる。実際はやや異なるが、単純計算で、27*3 = 81枚のチップを見ることができる。
81枚のチップの中から27枚を取る中で、50種類の中の特定の1種を4-5枚重ねる苦労や、特定のチップの組み合わせを狙う苦労は、ゲームをプレイしていない人間でも想像できるかと思う。実際のところ、チップの出現率を弄っていない状態では、リロールを適切に行っていっても狙いのチップを5枚重ねるのは非常に難しく、ラスボス前のフロアでようやく間に合うかどうかという程度になってしまう。
マニュの無限スライドやりたいなって思って4回タワーを登り切る羽目になったことはあるか。俺はある。
リロール、ショップ(ショップに並んでいるチップを最大3枚重ねられる。ショップの品ぞろえはランダム)、ダブルチップ(一度の取得で同じチップを2枚手に入れられる)などチップを重ねやすくする方法はあれど、これらを活用するためにはアンロックを進めていく必要がある。アンロックを縛った中~高難易度ではこれらの活用は見込めず、特定の狙ったチップを複数毎重ねることは非常に困難となる。
これが、中~高難易度でカタルシスを感じられない大きな要因となる。中~高難易度では、1~2枚の取得時の強化幅が大きいチップを複数種類持つ戦略が最適で、複数枚の重ねが前提だったり、複数種のシナジーが前提だったりするようなチップを選ぶ戦略は弱い。このため、ゲーム終盤でもあまり強化は感じられず、「勝てるけど、なんだかなあ」という気持ちにさせられてしまう。
ゲーム体験を根本的に変えるような面白いチップが存在しない
ゲームを劇的に変えるビルドは存在するが、それらのチップは複数種集めることが前提だったり、複数枚重ねることが前提である。また、劇的に変えると言っても、「これクマブキでありそうだな」程度のパラメーターを弄ったものにしかならない。チャージャーを連発できたり、デカ爆風を超連射できたり。
毎回のステージが代わり映えせず、ボスも少ない
上記のような高難易度ビルドをやっとの思いで組めたとしても、プレイの最初から最後までやることは変わらない。ポータルを壊すか、玉を転がすか、エリアを塗るか、プロペラを回すか、逃げる敵を追いかけるか。しかも、せっかくビルドが完成しても、「ポータルを壊す」以外はそこまでステージクリアが短くはならない。自分は強くなったのに、ステージがそれを意識させてくれない。強くなったんなら、ステージを爆速でクリアできて気持ちィ~みたいな体験をさせてくれ。
中ボスは2回出てくるが、3種の中からしか選ばれない(ダブりはしない)、ラスボスに至っては1種類のみである。どう考えても少なすぎる。
ボスごとの有効な戦略が存在しない
一応、射程があると有利だったり、移動速度が速いと有利だったりするボスは居るのだが、前述のビルド構成難易度の高さが邪魔してボスに対応するビルドを組むことは難しい。また、どうせラスボスは一種類なのでラストに向けて何かを考える必要もない。中ボスが何か事前に知ることができるアンロックはあるが、知ったところでどうしようもないため、カスのアンロックと化している。
"トラブル"フロアがただただ不快
何かしらの大きなデメリットを抱えた状態でステージクリアを目指す"トラブル"フロアがある。トラブルの内容はいくつかあるが、内容の半分くらいが特定の2種のビルドを破壊するような性質を持つ(このせいでラッキービルドとドローンビルドの危険性が増している)。トラブルはステージ攻略を始めるまで不明で、そのフロア内のみで有効。
トラブルフロアを無視して別のフロアを選択すると、その後のトラブルフロアの抽選確率が上がる一方(は?)、トラブルフロアを選んでも特に恩恵は無い。しかも、狙っているチップがトラブルフロアだった場合、基本的に避ける選択は取りにくい(同じチップを重ねる難易度が高いため、見逃す選択肢が取りずらい)。
このためトラブルフロアは「リスクを取って大きなリターンを得る」ようなフロアではなく、「リスクを払って、それ以上のリスクを得ないようにする」苦痛と化している。
トラブルフロアでビルド破壊されて7分間ガチエリアやらされたことはあるか。俺はある。ちなみに普通のフロアなら最大1分半で終わる。
ラスボスのステージの解放感が無く、曲が雰囲気にそぐわない
タワーの屋上に出たんだからもうちょい解放感出してくれてよかった
何あの曲? ボーナスステージか1面中ボスの曲だろ。DJタコワサがバレスピ抱えて泣いてるぞ
スプラ&ローグライトプレイヤーとして何を求めていたか
ビルドを組む楽しさをくれ
中~高難易度でも、同じチップを重ねやすくしてほしかった。具体的には、リロールは一回目は常に無料で良かったし、所持中の任意のチップを重ねられるようなイベントがあって良かった。
ちなみに、似ているゲームの例で出したVampire Survivorsでは、約25種の武器の中からの抽選で(DLC除く)、6種の装備スロットが埋まったのちは装備武器の強化しか出ないため、非常に重ねやすいシステムになっている。
ビルド組めたんなら気持ちよく無双させてくれ
ボール転がし、追いかけるフロア、ガチエリアは序盤以外出さないでほしかった。敵の全滅が目的のフロアを追加したり、敵を倒しながら奥に進むスピードが重要なフロアを追加したり、ポータルフロアの地形バリエーションを増やしたりしてほしかった。あとプロペラは火力高かったらもっと爆速で進むようにしてくれ。
クマブキのパクリとかじゃない、新しい遊びを提示してほしい
既存のローグライトだと「何らかの大きなデメリットの代わりに大きなリターンを得る」ようなユニークな強化がある。自分はゲームデザイナーではないから、具体的な案は出しにくいが、例えば他のゲームでもありそうなものを持ってくるとすれば、
無敵になるが、攻撃を食らうとインクが減る。インクが無くなると死ぬ
弾を撃つとダメージを食らうが、敵を撃破するとHPが回復する
ヒト状態でもインク回復量がセンプク状態と同じになる代わりに、ネリコインが得られなくなる
イカ状態で泳ぐスピードが大幅に遅くなるが、ヒト状態の歩くスピードが大幅に速くなる
無限にスライドできるが、スライドしていない状態では撃てなくなる
現実性や面白さはともかく、いずれも、クマブキのパクリとはまた違った遊び方を提案してくれていることが伝われば幸いである。
ボスから強力なチップを手に入れられるようにしてくれ
ボスを倒すことのカタルシスを増やしてほしい。上記のような「デメリットの代わりに大きなリターンを得る」強化は、ほかのローグライトでは中ボス撃破時にもらえることがほとんどであり、そのような支持されているプラクティスに従ってほしい。
トラブルフロアは大きなリターンが見込めるフロアにしてくれ
任意のチップをなんでも1枚入手できるとか、ランダムのチップ1種を3枚入手できるとか。あとトラブルフロアを見送るデメリットは無くしてくれ。
ボスの種類を増やして、ボスごとの有効な攻略を明確化してほしい
せめて、1面ボス2種の中から1種、2面ボス2種の中から1種、ラスボス2種の中から1種くらいにしてくれ。ヒーローモードのボスの使いまわしでも良いから。
できれば、アンロックなしでもボスの正体が事前にわかるようにして、ボスごとに有効なビルドを分けて対策のしがいがあるようにしてくれ。ビルド構成の難易度低下とセットではあるけど。
パレットの多さの是非について
明確に変えてほしいポイントではないが、パレットの多さについては少し疑問に思った(毎回のランが楽しければこれくらい多くても良いのだが)。
ボスごとの戦略を分けるのとセットではあるが、初期パレットは少なくし、途中でブキを変えることができても面白いかもしれない。チャージャーから始めて、途中でバレルか弓に変えられるとか。シューターから始めて、途中でブラかマニュに変えられるとか。
このゲームは誰向けだったのか
ここからは完全な筆者の憶測パート。サイドオーダーをプレイしていて一番感じたことは、「ローグライトを触ったことが無く、スプラトゥーンもあまり触っていない」層向けのゲームとして作られている、ということ。
ある程度シンジュでアンロックした状態であれば、シナジーや強いチップとかを考えずとも、適当に色で選んでいけばそれっぽいビルドになるし、エイムが上手くなくともなんとかなるゲームになっている。クリアできなければシンジュでどんどん強くなっていくし、いつかは必ずクリアできるようになるゲームとして作られていると感じた。
スプラというゲームは間口の広いゲームなので、その特性を考慮しこのようなゲーム性になったんだろうな、という感じ。大手メーカーのビジネスであることを念頭に置くと、そこらのインディーゲーと同じような尖りを求めることがそもそも違うのかもしれない。
でも、個人的には、一年前にサイドオーダーのティザーを見たときはワクワクしたし、半年くらい前に「これローグライトっぽいぞ!」となったときのワクワク感を裏切られた気分はした。スプラ上級者やローグライト上級者向けの遊びをもっと提案してくれるものと期待していたばっかりに、残念でならない。
こんな長文をここまで読んで、「いやサイドオーダー神ゲーでしょ!」て思った方は、ぜひ世に色々あるローグライトをプレイしてみてほしい。サイドオーダーは、ローグライト入門としてはかなり良いゲームだと感じている。
筆者のローグライト歴
最後に、今までプレイした主要なローグライトを述べる。個人的にはハマったものもハマらなかったものもあるが、いずれも世間では好評なローグライトなので、興味がある人はぜひプレイしてみてほしい。残念ながらSwitchではプレイできないものもあるのでご注意を。
シューター/アクション系
Gunfire Reborn
最高難度(輪廻9層)クリア済
Risk of Rain 2
2種エンド到達済
Vampire Survivors
本編クリア済、死神未討伐
Hades
全武器種クリア済(最高懲罰10くらい)
カードゲーム/ターンストラテジー系
Slay the Spire
全キャラで隠しボス討伐済(最高アセンション2くらい)
Inscryption: Kaycee's Mod(本編クリア後の無料DLC)
Skull Stormクリア済
Backpack Hero
隠しボス討伐済み、最高難度(ハードlv5)クリア済
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