青空

2019/03/05

夜勤から帰ってきて最寄駅で降りると綺麗な青空が広がっていた。雲もそれなりにあったけど、それでも空は清々しい色合いを見せていた。最寄駅を降りるのは大体いつも同じで7時前くらいになるのだが、今日はやけに明るく感じた。春が近づいてきているのだ。すでに朝の冷え込みも和らいできている。浮ついた気持ちで家路をたどっていると、コートを胸の前で掻き抱いているいかにも寒そうなおばさんが前から歩いてきた。そんなに寒いかなと思ったが、ふと見ると下は短パンで、足にはサンダルを履いていた。なぜ? とは問わないでおこう。おばさんにはおばさんの事情があるのだ。「あたしはこれでいく」と覚悟を決めたミニマリストの成れの果てだったのかもしれないし、孫に「似合ってるよ」とおだてられて以来それしか着なくなってしまったのかもしれない。いずれにしてもミニマリスト思想の推奨者あるいは小遣い欲しさの孫の餌食になっていることは疑いようがない。おばさんはそれでもまっすぐな強い眼をしていた。ぼくはいたたまれないような気持ちで俯いて横を通り過ぎた。人間社会というやつは異常の集積所のようなものだと思う。理解するのは難儀だ。支配しようとするのは性欲の肥大だ。捨てる神あれば拾う神あり型ネグレクトで各自勝手に生きたらよろしい。

ここから先は

542字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?