早乙女まぶた

一行小説と散花集と窓外集を公開していました。「傘と包帯」というWeb詩誌もつくっていま…

早乙女まぶた

一行小説と散花集と窓外集を公開していました。「傘と包帯」というWeb詩誌もつくっています。→https://note.mu/kasatohoutai/magazines

マガジン

  • 窓外集

    こちら側とあちら側との隔絶。あるいは入口のない世界。目に映る出来事のすべてが窓の外のように感じる。2019/11-2019/12

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  • 散花集第1期(001-100)

    花は散ります。有機体は解体します。存在は空想です。有機体とはみなさんのことです。2017/3-2018/4

  • 散花集第2期(101-200)

    花は散ります。有機体は解体します。存在は空想です。有機体とはみなさんのことです。 2018/4 - 2018/7

  • 一行小説第2期(060 - 105)

    2015/3 - 2015/5

最近の記事

053

眼球のない少年が見る 一人の少女が二人 同じからだで縄跳び 飛んでいく風船は赤くなって 高いところで割れた #帰郷の問題

    • 052

      紳士の顔に蝶が留まった。他の蝶が群れをなしてその顔に蝟集した。紳士は動かない。サイレンが遠くから聞こえる。気がつくと蝶はすべて消えていて、そこには大きな穴が空いていた。穴の向こうには花畑が広がっていて、蝶はそこを楽しげに舞っていた。 #鏡の問題

      • 051

        蝶の舞があって そこには蝶がいない 見えないのだから 捕まえることもできない 舞だけがある #彼岸の問題

        • 雨の降る部屋

          おめでとう みんな絶滅したよ いきものはいなくなった 日記はそこで途切れてて 目覚めたくないぼくは続きを書いた 美しい人から順に広告になった 頭のいい人は死んでしまった だけどまだ終わりじゃないんだ 鍵ならたくさんあるのに 合う場所はどこにもなかった 諦めたら花火が上がって 宇宙がバラバラになった 降ってくる これは雨じゃなかった 物質のしめやかな終わり 実物大の夢 ぼくだけに降ってきた

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        • 一行小説第1期(001 - 050)
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        記事

          きみがよかった

          DMで声を掛けてきた女が 目の下を赤く塗って会いにきた あなたの言葉が好きです わたしには分かるの 詩集は買ってないんだけど ひとつでも間違えれば すぐにでも怒られるから 他人の感情が何もわからないまま ただ怯えるだけだった だから 誰かに好かれたいだけの 真夏に長袖を着ているきみを見つけた ぜんぶが間違っていれば 誰にも怒られないから 意味のない言葉を重ねて 詩を書いているってことにした だから すぐにでも死にたくなるような 自信のないきみがよかった ひびの入った

          きみがよかった

          窓外集は本日で終わりです。ご愛読ありがとうございました。良いお年を。(ぼくは年を越せないと思います)

          窓外集は本日で終わりです。ご愛読ありがとうございました。良いお年を。(ぼくは年を越せないと思います)

          050

          おばあちゃんが マッチ箱に水を入れていた 外装が濡れなくて不思議だった 中はどうなっているんだろう マッチは入っていないんだろうな なんて考えていたある日 おばあちゃんがこたつの上に その箱を置き忘れた いましかないと思って こっそり開けてみた その瞬間 ものすごい速さで水が飛び出してきた 驚いてマッチ箱を放り投げてしまった それを聞いて おばあちゃんが入ってきた そのふすまの隙間から それが飛んでいった 水で出来た蝶だった #水の問題

          049

          日本を転々と旅して やっと東京の自宅に戻ってきた 誰もいない部屋にただいまと言って 灯りをつけると女が首を吊っている どうすればいいのだろう と思っていると スカートの中から何かが落ちた 畳の上を少し転がって止まったそれは スーパーによくある 白い楕円形の卵だった 通報するにもなんて言えばいいのか 考えがまとまらなかったから とりあえず死体を降ろした すると女は 人様のお部屋で粗相を致しまして誠に申し訳ございません とやけに丁寧な土下座を見せた後 お邪魔しましたと言ってサッと

          048

          転校してきてから はじめての健康診断だった 体操着に着替えてゾロゾロと保健室に行く 順番が来たら入室して 前の人が終わったら 身長を測って 前の人が終わったら 体重を測って というのが前にも後ろにも 延々続いているのだなあと思うと 工場を流れる部品のような感覚になる 次は心臓の検査をするらしくて 前の人が服を脱いだ 服の下には身体がなかった にも関わらず 先生は何も気にせず検査を終えて 生徒は服を着て出て行った もしこれが普通なのだとしたら と考えると心臓の音がうるさくなって

          047

          渋滞に巻き込まれてうんざりしていると ドアガラスが突然叩かれた 驚いてそっちを見ると 物凄い剣幕でなにかを喚いているおばさんがいた 見た感じの迫力はかなりなものがあるのだが なぜだか声は少しも聞こえない 面倒ではあるけれども このままにしておくわけにもいかないと思って 窓ガラスを開けると ひどい罵声が聞こえてきた その代わり ガラスが下がっていくにつれて おばさんの姿も徐々に見えなくなっていった 最後まで開け切ると すっかりおばさんの姿はなくなり 罵声はいよいよ元気になった

          046

          窓際にいくつか椅子が置いてあるのは 人がそこから向こうを見るからだ リアリティが足りないだとか 起伏がなさすぎるだとか 彼らの口から出るのは文句ばかりだ ネットのレビューでさえ 褒めるようなことはひとつも書かれていない 正直なところ それはまったく不思議ではないのだが 不思議なのはこの商売が長々と続いていることだ 熱心なリピーターも多く存在するのだが その理由がまったく分からない 警備員として彼らの後ろに立っていると 嫌でも目に入ってくるのだが 窓の向こうには真っ黒な壁がそび

          045

          ふと見ると小指の先が赤くなっている 明らかに血液なのだけど怪我をした覚えもない ひとまず消毒をして絆創膏を貼っておいた しばらくして絆創膏を剥がすと まだ指先が赤い 血液が漏れ続けているようで 意味がわからない 手当てをしてくれた女の子が あれ わたしも と言って小指の先を見せてきた お互いがお互いの小指の治療をする 消毒をして拭き取っても 血液は後から後から滲んでくる キリがないから放っておくことにした すると血液はなぜか糸状になって 何処かへ伸びていった 糸は意外に丈夫ら

          044

          若い男が タバコを吸いながら歩いていると 警官に見つかって注意された いま消せば見逃すと言われて どうなっても知りませんよ などと飄々と応えた 警官がいいから消せと言うと 男は面倒そうに タバコを掌に押し当てた 火は消えずに まるごと飲み込まれて 跡形もなく消えてしまった 一方で警官は耐えていた 男のイリュージョンに真っ当に驚く暇も与えられず 自分の身体が引っ張られていることに 鍛えた足腰をフルに使って抵抗していた それでも 警官の鼻は明らかに伸びてしまっていて それが男の掌

          043

          制服でチョココロネを食べて歩く 夕方の高校生たち ぼくの通れなかった道は 彼らの捨てたゴミで汚されてしまうのに その手前で座っているぼくは どこにも行かない そこを通らないとどこにも行けないのに 時間切れでその道には入れないんだ 慰めがあるとしたら そこを通れなかったのが ぼくだけじゃなかったってことだけ 彼らの笑いは通り過ぎていかなかった 制服もチョココロネも夕方も高校生も 彼らにはついていかない それらは ぼくのそばでずっと笑っている #模範解答の問題

          042

          白髪が目立ってきた母の 後に湯船につかっている 毛が浮いていて気になるので いちいち掬って湯船の外に捨てる 捨てても捨てても浮いてくるから 適当に切り上げて気にしないことにした 目を閉じて身体を伸ばす 湯の気持ちよさを感じて 再び目を開けると いつの間にか 白髪と黒髪が寄り集まって ひとつの塊になっていた 気持ち悪いから捨てようとすると 黒髪が文字として読めることに気づいた そこには いつまでも自立しないぼくへの 要望が書き付けられていた とても長い手紙だった #手紙の問題

          041

          ベッドの下から 大きな鏡が出てきた 壁に立て掛けてみると 映ったぼくの顔が 包帯で覆われていた そこに恋人が訪ねてきた 全身が覆われていた わたしたち似てきたような気がする と言っていたのは 最近のことのように思うのだけど あの時にはすでに 鏡の向こう側にいたのかもしれない 恋人 というよりもぼくの方が #鏡の問題