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煙の道で天に戻る!マカピーな日々#0449

マカピーです。

ネパールのバグマティ川というのは聖なるガンジスにつながる宗教的に重要な川です。その支流がカトマンズ市にあるパシュパティナートという外国人が入れない寺院の脇を流れています。

そしてそこには「ガート」と呼ばれる石造りのオープンの「遺体焼き場」があります。

竹で組んだ担架で白布にくるまれた遺体が運ばれてくるとガートで荼毘用の木材を井桁に組み遺体を乗せ点火します。

ヒンドゥー教では「親の遺体の荼毘の際に点火する役割り」を仰せつかるのが長男なのです。ですから長男がいないと養子縁組をしてでも家系にこだわる文化でもありました。

親がなくなると息子たちはガートで剃髪して、1年間喪に服するために白い服以外身に付けません。衣服全部、帽子から靴まで白なんです。

そもそもカトマンズ盆地は水資源の少ないところに人口が集中しているので水不足が常態化している土地柄なんです。

パシュパティナート付近のバグマティ川の支流は乾季ともなると申し訳程度の流れになっても、人口増で荼毘の数は増えるばかりで「聖なる河」も遺灰受け入れが困難な状況が続いています。

パシュパティナートへはネパールに遊びに来た人を案内して、家族で荼毘の様子を見る機会が幾度もありました。

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マカピー妻の会津にいた曾祖母が100歳で亡くなる際に、マカピー家族がちょうど一時帰国と重なりました。マカピー妻は空港から帰宅しないでそのまま福島に行きギリギリ臨終に立ち会う事ができました。

曾祖母は死の3か月前までは、面倒を見ていた伯父夫婦が商売をしていたので一人で新聞や本を読み、お風呂に入って大相撲をテレビで鑑賞しながらビールの小瓶を一本空けるのが楽しみだったそうです。

曾祖母は体調を崩し入院したのですが回復の見込みがなく、本人の希望で最後は自宅で迎えることになりました。ある日、曾祖母の様子を定期的に見に来る主治医は「どうも不思議なんですよ。お婆ちゃんの体は殆ど機能してないので、いつ亡くなってもおかしくない状態なのですが何とか持ちこたえているんです。もしかして本人が気にしている事ありますか?」と伯父に尋ねたのだそうです。

伯父は「ああ、お気に入りの孫娘が海外にいるんで、一目会いたいって言ってましたね。2-3日で戻ってくることになってんでけど、それまで持ちますかね」と答えると主治医は「きっと、その思いが婆ちゃんを生かしてるようです」と納得したようでした。

マカピー妻は三男だけ引き連れて新幹線と磐越西線を乗り継いで曾祖母宅に駆けつけ、曾祖母の娘であるマカピー義母に合流しました。

早速、曾祖母の耳元で「婆ちゃん、M子だよ。いま帰って来たよ!」と声をかけるとそれまで目をつむっていた彼女がゆっくりと目を開けて「M子か・・・」とつぶやくとまた目をつむったのでした。

臨終が近いと知らせを受け、二日ほど前から泊まり込んでいたマカピー義母も「あら、アンタがきたらバアチャンが目を開けたよ!バアチャンよかったね。M子がネパールから帰って来たんだよ!」と更に声をかけたのですが、こちらには反応がありませんでした。

マカピー妻と義母はしばらく何の変化もないので、曾祖母の呼吸を確かめると手に何も感じません。

「あら、どうしたのかしら?」とマカピー義母も不思議に思い、居間にいた伯父夫妻に「あんちゃん、バアチャンが息してねえけど大丈夫かな?」と尋ねると「あん?最近はちょくちょく息してねえことがあるんだよ。めずらしくねえんだ、大丈夫だあ」と答えたのだそうです。

マカピー妻と義母は曾祖母の息が戻るまで、しばらく待っていたのですが様子がおかしいので、手の脈を確認すると拍動がありません。

マカピー義母は「あんちゃん、こっちさ来て、ばあちゃん死んじまったよ!」と居間に声をかけると、驚いた伯父夫婦が駆け寄ってきました。

「なんだかなあ、オレたちずっとこの時を待ってたんだけどなあ。結局M子がネパールから帰って来て、ばあちゃんに引導を渡したってか!てーしたもんだ!」

「まんずばあちゃん、長げーことお疲れさまでした。ほれ、先生に電話しろ、ばあちゃんが亡くなってさ!」と奥さんに指示しました。

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その二日後葬儀後、曾祖母の遺体が斎場で焼かれた時に、マカピーの三人の子供たちが「なんで、ばあちゃんをオーブンに入れるの?」と不思議そうに尋ねたのでした。

そうです。彼らは日本の葬儀を知らないで育ったのでした。マカピーは「ほら、パシュパティナートで死んだ人の体を焼いていたろう?あれと同じなんだよ」

すると、長男は「違うよ!オーブンに入れたんじゃ、煙に乗ってばあちゃんは天国に行けないじゃないか!」と抗議したのです。

何を言い出すのかと周囲の人たちの注目を浴びたので、マカピーは子どもたちを斎場の外に連れ出し、建物を振り返りながら話しました。

「ほら、あそこにチムニー(煙突)があって煙が出ているのが分かるかい?ばあちゃんは煙の道を空に戻っているから、大丈夫だよ

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マカピーでした。

最後までお読みいただき感謝します。インドやネパールではコロナ禍で荼毘用の木材燃料が枯渇しているそうです



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