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独裁から逃れる香港人と、無意識のうちに独裁を歓迎する日本人

10年近く住んだ香港を離れたのは2014年。理由は大気汚染と息子の教科書に見た中国共産党の影響力でした。


中国語(国語)の教科書に、「中国の国旗掲揚に参加しよう、国歌を歌おう」という文章が載りました。そして、この国歌は日本軍に迫害された人民を鼓舞し、勇敢に立ち向かえという内容であり、平和になった現在では人民が団結し祖国の繁栄のために努力しようという意味なのだと締めくくっています。

私は香港人である夫や義姉に以前からこのような文章が教科書に載ることがあったのか確認しました。夫も義姉も驚きの表情を浮かべながら、彼らの世代ではなかったと教えてくれました。

日本を敵とみなす文章が教科書に載ることで、日本人の血が混じる我が子が今後どのような影響を受けるのか。私の不安は高まりました。


私にとって第二の故郷であり、子供たちにとってはHometownであった大好きな街、香港。思い出の詰まったアパートを出る時涙が止まりませんでした。


香港の中国化のスピードは想像を絶するもので、どれほど多くの人々が抵抗してもブレーキをかけることができませんでした。一党独裁。圧倒的な力による支配は、個人の自由や人権などいとも簡単に踏みにじるのです。


香港に住んでいた頃の息子のクラスメートの多くは、すでに国外の学校に進学しています。友人や家族の中にはカナダやイギリスなど国外に移住した人、もしくは移住の準備を進めている人がかなりいます。


自分の手の中にあった自由と人権を無理矢理奪い取られる事は、もともとそれらを持っていなかった者には理解のできない憤りと悲しみの極みです。


2014年に日本に帰国して以降、日本もほぼ一党独裁のような状況です。なぜか野党を育てようという気運が日本にはありません。モリ・カケ・サクラ問題さえ究明しようとしない国民の政治に対する関心の低さ。先の参議院選挙では、ほぼ2人に1人の有権者が投票に行きませんでした。


声を上げたくてももう声を上げられない香港人たちの目に、私たち日本人はどのように映るのでしょうか。まだこの手中にある自由と権利を失わないために、私たち日本人は国外の出来事から学ばなければならないと思うのです。

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