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有名なおにぎり屋さんに行って感動した

おにぎりが嫌いな人は読まないで下さい。
美味しかったおにぎりの思い出をとりとめも無く書き出した後に、大塚の『ぼんご』というおにぎり屋さんでおにぎりを食べて感動したという話です。

時々降りてくる強烈な『おにぎり欲』

心も体も、おにぎりを求める時がありませんか?
私はあります。あなたにもあるはずです。

もしも無いのであれば、きっと母親の胎内に”それ”を置いてきたのでしょう。
もしくは、「無い」と考えるように激しい記憶改竄の拷問を受けたのだと考えられます。

その『おにぎり欲』が吹き上がった時にどうするのか?
もちろん、大抵の欲望は布団のなかにくるまりながら数時間にわたってTwitterをする事でやり過ごす事ができます。

自分とは直接関係のない国際的な事件に怒ったり笑ったり揶揄したツイートをRTしたり、したり顔で専門家でもないのに「こうだ!」とツイートを繰り返すうちに明け方になって、圧倒的な時間の無駄・自分というブランドの毀損・増えるミュート・減るフォロワー、そういった負の土石流で押し流せばせせり上がった気持ちを抑えて寝るなど造作も無いことです。

私の『おにぎり欲』の原風景

しかし、それでも勝てない時がある。
長周期でやってくる、超強烈な『おにぎり欲』が。

そのとき食べたくなるおにぎりというのは、過去体験した最高に美味しかったおにぎりの記憶がベースとなって「このクラスのおにぎりを食べたい」と脊髄に襲撃をかけてきます。

予備校の食堂おにぎり

私が、札幌の駿台予備校に通っていた時。
誰もいない食堂で自習をしていると食堂のおばちゃんが何も言わず、おにぎりを2個作って持ってきてくれたことがあります。

「これね、もう今日のご飯は残っちゃうからね」
「いつも頑張っているね、遠慮なく持ってきなさい」

今思えば、そのご飯は本当に残ったものなのだろうか。
熱々の握られたご飯にパリッとした海苔でしっかり包まれつつ、キリッと塩が効いた、王道を極めた見事な美事なおにぎり。

涙は流さなくても、哭いて食べていたと思う。
予備校時代は毎日自分で適当なお弁当を作っていた。
他者から、優しい声がけとともに贈って貰えたその温かいおにぎりは沁みる美味しさがあった。
継母の圧のために可能な限り自宅に居たくなかった環境が、その美味しさを再現不能なレベルにまで押し上げる。

このおにぎりを思い出す時、札幌の駿台予備校は設立1年目でいろいろと気合が入っていたことも思い出す。
数学の秋山先生、化学の三国先生など、大昔の話なのにまだ顔と名前がセットで記憶に留まっているのは凄いことだと思う。

そんな中でも、食堂のおばちゃん……
貴女が、ナンバー1だ。

『ありんこ』のおにぎり。

もう最近は移転ししまって当時とは違う場所にお店があるはずだが。
札幌にある旧道庁『赤レンガ』の裏辺りに、『ありんこ』という音切り専門店があった。

そこでは基本的に、おにぎりと豚汁のセットにて攻めるものなのだが、ある時なんとなく『チーズかつお』を食べてみた。
今でも思い出す、上質の刺激。

熱々のご飯で溶けていくチーズ。
その熱気が醤油に浸ったおかかの薫りを励起し、噛んだおにぎりのその先から激しく旨味が噴き上がる。
口腔も鼻腔も、為す術も無く蹂躙される。

香りがここまで強力に作用したおにぎりを食べたのはそこが初めてだった。
当時は老女が「いやおばあちゃん、その炊飯器から出したばかりの凄い蒸気噴き上がっているご飯素手で握る???熱くない???」みたいな気持ちで厨房を観たような気がする。

それを、美味い豚汁と併せてホックホック言いながら食べるのだからもう、五感で食べる・体全体で楽しく格闘しながら食べるようなおにぎりと言える。
具の美味しさも、ご飯そのものの美味しさは言うまでも無い。

『食のマエストロ やなぎや』のネギトロおにぎり

読売ランド前駅から少し奥まって歩いたところに、和食の店で修行された方が開いた個人店があった。
大学生の僕には本来は通いようもない高級気味な店だったが、ある時ランチで勇気を出して結構な値段のするおにぎり定食を食べてみた。

感動した。
これまでの、自分の狭い幼いおにぎり感を破壊してくれた新しいおいしいおにぎりのフォーマットがそこにあった。

これは道民ならばみんな納得してくれると思うのですが、実は北海道とは凄く寒い場所であり、冷たいものを食べると体温が低下して最悪死にます。
なので、熱々の豚汁や熱々のおにぎりというのは正義とか正解とか以前にそれ以外の選択肢が無い、まず基本の”底(テイ)”なのです。

しかし、やなぎやで食べたそのネギトロおにぎりは、ご飯の温度が絶妙な低温でねぎとろの邪魔をしない。
そして、その柔らかさというよりも硬さもまた素敵で、小皿に注いだ醤油と山葵を付けて食べてもおにぎりは崩れない絶妙なバランスになっています。
「この方向のおにぎりもあるのかぁ~」と、世間知らずの少年は思ったものです。

ちなみに、値段に応じて素材諸々と技術も優秀だから成立するおにぎりなんだとまで理解するのはまだ先の話です。
ネギトロを都度その場で作るので常識的なおにぎり屋よりも時間かかってたし。

やなぎやの店長とはかなり仲良くなり、様々なエピソードが複数あるのでいずれ別記事でまとめます。

『味噌にぎり』に何を想うか

空腹時に食べ物画像を見ればなんでも刺激に感じる人っているかもしれませんけど、私は精神修養めっちゃ積んでいるので簡単にはそうはなりません。

しかし、Twitterでふらっと流れてきた『味噌にぎり』の画像。
おそらく、空腹なだけではなくタイミング悪く体が塩分不足もあったのかもしれません。

みなさんご存知のように、山間の村では塩を生産できないので海辺の村で作った塩気たっぷりの干したスルメに飛びつく光景同様に、私もまた味噌の味と塩気が舌にザクッと刺さるようなおにぎりを求めたくなりました。

美味しい味噌にぎりが食べられるおにぎり屋が知りたい!!
とツイートで叫ぶと、複数人が大塚(池袋の隣駅)にあるおにぎり屋『ぼんご』という初耳の店を推薦してくれました。

ここからが、私のめんどうな人間性といいますか。
嫌われるに値する性格の一部なのですが。
「ほほう!そんなにみんなが美味いというならば言ってみるか!!!」
という明るい前向きな気持ちの裏に
「……俺が過去食べた味噌握りより美味しいのだろうな」
みたいな厄介な陰湿な思考ももってしまうのです。

自分が思い出す限りでは、『おばあちゃんが作ってくれたおにぎり……あの味噌おにぎりは美味しかったなぁ~』という思い出があるので、それが基準点となります。

いくぜ大塚!いくぜ『ぼんご』!!

こういう時、「行くぜ」を使うべきなのか、別にひらがなのまま「いくぜ」でもいいじゃないかとか余計な事考えてしまうのですよね。

で、おにぎり欲が盛り上がりまくった翌日の午前中から早速向かいます。
無職だから、平日の火曜日でもすぐに動けるんですよね。
小田急の中で、「無職なのにこんな事をしていていいのか」「ほんとうは、こんなお出かけより大事なことが無職のお前にはあるんじゃないか」などの自分との戦いをしているうちにあっという間に到着です。

ぼんごのベテランの人たちが「2時間待った」「1時間は並ぶよ」などのアドバイスを色々と受けます。
もちろん、「おいおいおい大げさすぎないか?」「平日昼間だぞ?それも念を入れて11時30分の開店前に行くんだが???」「君たち、どうせ土日の混雑時間の事を言っているんだろう?」と心のなかでそのアドバイスを蔑ろにしながら、Twitter上で感謝のリプライをちゃんと返してました。

完全に僕が悪かった。
間違っていた。

開店25分前に付いたのに、行列が店の前から道路を挟んだ向こう側まで続いていることにしばらく気がつけなかった。
おにぎりに…… おにぎり屋に……
開店数十分前から数十人も並ぶか!?普通!??

開店の時間には、私の後ろにも大行列が続き、おそらくは100人ほどはいたのでは無いでしょうか。
店の広さとかは全く知らないので、この行列を消化して自分の番になるまでどれほどの時間がかかるのか、想像することをやめた。
覚悟して、私はアンドロイド版三國志Ⅲをその場で購入インストールして遊び始める始末です。

ちなみに、行列の殆どを構成しているのはカップルか女性です。
私のような孤独な男性もちらほらいなくも無いですが、ラーメン二郎や秋葉原で最新のWindowsOSを買おうとする行列などと比べると有意に女性が多いです。
きっと、女性が入りやすい清潔感があるお店なんだなって感じました。

じりじり進み、お店の前まであと10人ほど!というところで、程よい暖かさの湯飲みに入ったお茶を店員さんから頂きました。
その時、凄い良い予感がしたんですよね。

「このお茶の温度、美味しさ…… 考えられている……」
と。

入店して感じる、雰囲気の良さ

ついに着席。
メニューを見て色々と持ち帰り含めて注文します。

注文したのは、おにぎり三個とおしんことなめこの味噌汁。
素早く、おしんこが置かれます。

私、こんなに食べごたえのあるお新香食べるの初めてかも。
ベルセルクのガッツの『ドラゴンころし』より分厚いです。
そして、美味い。

続くは、お味噌汁。
これ、お替り自由って凄いですよね……
お味噌汁が空になると、店員さんが気がついてお替りを誘ってくれました。
コミュ障の人は「私なんかがお味噌汁をお替りする為の声がけなんか一生できない!!」って思っている人もいるとは思いますが、かなりそこは救済されそうです。

そして届く、おにぎり。

強すぎる。
左から、『ふき味噌』『肉そぼろ』『すじこ』です。
これらのおにぎりの美味しさの秘密等は、おにぎりマニアの皆さんにおまかせします。
ごはんと海苔の美味しさ、具の味わい、具のボリューム、そもそものおにぎりのボリューム!
それぞれの品質の高さと技術やバランスなどの研鑽は、グルメリポーターでも無い私には分析も出来ずただただ「美味しい!!」と喰うのみです。

私の視点で特に感動した点を挙げるなら、手元に届いた時のおにぎりの温度ですね。
ご飯を釜から出して、握って巻いて席に届ける過程の中で、熱がらずに程よく手で持って食べれる感じにまで熱が落ち着いていて。
それを、冷えているお新香と熱々の味噌汁で挟み撃ちという形になるわけです。

持ち帰り

あまりにも美味しいので頼む、というのもありますが。
持ち帰りで食べてどれくらい美味しいのだろうという気持ちもあり追加注文を。

そう、『味噌にぎり』と『鮭マヨネーズ』です。
お店の中に、おにぎりは三時間以内に食べて欲しいという掲示があったので、帰宅してきっちり3時間後に食べてみました。

ふあぁ……
美味しい、美味しいです!
心のなかでぼんやりと「こうあって欲しい」というイデアの味というものは、現実にそれを実現できているのに「いや、何かが違う!」とか面倒なことを思いがちです。
美味しんぼとかで勉強したのでそういう人間は必ずいます。
それは、僕かもしれない。

でも、この味噌にぎりはちゃんと、私の期待を込めた美味しさをちゃんと超えて満足感を与えてくれました。
具体的に何がどう美味しいのかはきっと幾千幾万ものグルメライターが解説してくれているでしょうから、私からは「ここで味噌おにぎりを食べて外すことは無い」とだけ申し伝えておきます。

また、鮭マヨネーズも当然ガッツリ美味しいのですけれど、おにぎりの硬さが程よくて素晴らしいですね。
おにぎりをパックに入れれば、普通はその蒸気でもっと海苔が崩れるとか気合が入っていなさすぎる食感になりがちでしょうけど、パックの下に敷いてあるシートが狙い通りの効果を出しているのか、品質を損なわずむしろさらなる完成型の美味しさかのように満足させてくれます。

『ぼんご』振り返り

うん、これはね……
並ぶよ、並んででも食べたいよ……

私のツイートに「ただの米と海苔なのにこの行列に並びたくなると言うのは凄いなぁ」というコメントがありましたが、その感覚感想もわからなくもないです。

しかし、おにぎりを提供することに様々な工夫や気遣いをして、米と海苔の提供ではなく、食糧を振りまいているのではなく、情報を食わせているのではなく、素直に満足感と感動を提供しているお店だと思いました。

また行こうと思います。

まとめ

おにぎりは、馳走になる。
この記事を読んだ人には、もっとおにぎりの事を想って欲しい。
みんなのおにぎりストーリーも聴きたい。
明日、僕も味噌にぎり作ってみよ!!

無職へのお布施

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