見出し画像

【前編】授業時間数特例校って何だろう?~4月からの探究的な学びや授業はどう変化していくか~

こんにちは!
2024年2月3日に、午後の授業の探究学習「シブヤ未来科」の取り組みについて紐解くまち+Co MEET UP!が開催されました。

渋谷区は、午後の授業を探究学習に使うにあたり「授業時間特例校」の制度を利用しているそうです。私自身は初めて聞く言葉で、どのような制度なのか全く知りませんでしたが、イベントの終了後はかなり頭がクリアに。

渋谷区議会議員の神薗のほか、教育関連のスペシャリストであるお二人の小髙さん、小林さんからの貴重なお話を含む、情報量満載の2時間となりました。
以下、ママインターンの磯部がリポートさせていただきます!

※ママインターンについては→こちら

なぜ、いま探究学習が必要なのか?

神薗:デジタルはどんどん進化し、世の中が大きく変わっています。中国ではAIがCEOをやっている会社もでてきているそうです。人間はどうあるべきなのか、VUCA(予測不可能な社会)において、感染症や災害、地震等いつ起きてもおかしくない状態で、私たちはどう生きていくのかも問われています。
そういった情勢を踏まえ、OECD Education2030が提示したのは、自分自身でなんとかしていく力の重要性です。具体的には、新たな価値を創造する力対立する状況に対処する力、そして責任ある行動で変革をもたらす力が挙げられています。

NPO法人八ヶ岳SDGsスクールより抜粋

こういった力をつけるために必要な学びがまさに、「探究学習」と言えます。

神薗:ちなみに、2022年調査の日本の子供たちの学力は?というと、科学的リテラシー1位、数学的リテラシー1位、読解力2位とすごいんです。一方で大きな課題と言われているのが、幸福を感じることができているか、困難な状況でも自分なら解決できると自信を持てているかという点です。これらのスコアが、日本の子供たちは平均よりも著しく低いんです。そういった状況を改善するための議論がなされ、現在の新学習指導要領にも反映されています。

文部科学省「新しい学習指導要領」より抜粋

新学習指導要領とは

以上の図には「主体的・対話的で深い学び」との記載がありますが、「主体的」というのは自分自身で進めること、「対話的」というのはみんなで力を合わせて進める協働のことを指します。そして「深い学び」というのは探究を意味します。これらを実現するために、「カリキュラム・マネジメント」を確立し、学習効果を最大化しようとしているのです。子どもたちの興味に合わせ、複数の教科を横断して、子どもたちの学びを構築していきます。また、学校だけでは解決できないため、地域と連携し学校教育を発展させていくことも重要です。これによって、目標である3つの力が育まれるというわけです。

神薗:私が考える、探究とは?の解釈なのですが
自ら「問い」を設定し、「解」を見つける、それを繰り返すことだと思います。これは、小学生、中学生、高校生でもテーマが変遷したり、深まり合ったりはしますが、プロセスを繰り返していくことは変わりません。

Smart Teachers.netより転載

高校の新科目・大学入試の変化という動き

2022年から高校のカリキュラムが変わり、「総合探究」という科目が追加されました。すでに高校での探究活動は始まっており、一部の学校では15年前から、あるいは私立の中高一貫校では設立当初から行われているところもあるようです。
また、大学入試も大きく変化しています。2000年には筆記試験中心の一般入試が65.8%を占めていましたが、現在は半分以下に減少しています。代わりに総合型選抜(AO入試)や推薦入試が増加し、それまでの活動や学び、その大学を志望する動機などといった点が問われるようになっています。小中高の学習指導要領も新たなものに変わりつつあり、大学入試も変化している中で、探究学習が注目される傾向が強まっているようです。

MBSNEWSより転載

授業時数特例校とは?

授業時数特例校という制度自体は、令和4年度からスタートしています。これには、文科省が有識者を集めて行う中央教育審議会において、令和の日本の学校における子どもたちの学びの姿について答申があり、生まれたという経緯があります。

神薗:子どもたちが主体的で対話的な深い「探究」的な学びを行うには、先生方が柔軟にカリキュラムや教科の枠組みを組み立て、対応できる制度を作る必要があります。こういった点が答申で示され、授業時数特例校の制度が導入されるに至りました。この制度を簡単に説明すると、ある教科の1割の時間を他の教科に移動させることができる仕組みです。渋谷区はこの制度を導入し、各教科の1割の時間を総合的な学習の時間に充てることで、午後に探究活動を行う方向に進んでいます(下図参照)。

日経新聞記事より転載(2021/06/28)

渋谷区の動き

では、渋谷区が探究学習をどのように導入するかが気になるところですが、4限目までは従来通りの授業が行われ、午後が探究学習の「シブヤ未来科」や道徳・特別活動の時間となるようです。

神薗:突然探究学習を始めるのではなく、段階的な進め方を取るようにします。まずは探究基礎で、子どもたちに考える材料を提供します。そこでの経験や体験を通じて、自分が何に興味を持ち、どんな問いを立てたいのかを考える期間となります。次の段階では、共通のテーマに基づく探究を友達と協力して行います。このような協働的な学びを通して、子供たちは自分だけでは気付かなかったことに気付くことができます。そして最終的には「My探究」で、自分自身の考えを深めていくことになります。
授業時間はほぼ倍増し、元々総合学習の時間に70時間あてられていたものが、130〜150時間になります。だからこそ、割り当てられたこれらの時間を有意義に活用することが重要になってくるんです。

教育新聞記事より転載(2023/12/27)

神薗:街頭演説中、偶然通りかかった小学校の先生に午後の探究について聞いてみたところ、「色々やってみた結果、いままでやっていたことと変わらないかな。」とおっしゃっていました。というのも、小学校の先生は教科横断で授業を持っており、20年近く前から子どもたちを主体としたアクティブな学びの研究が進んでいるので、探究学習も真新しいことはないのだと思います。むしろ、中学校での探究の実施の方が壁にぶつかりやすいかもしれません。中学校では教科ごとに授業が行われるため、他の先生が何をしているか分かりにくく、また中学3年生は受験に集中することも考慮しなければならないからです。

探究をすすめる3種の神器?

神薗:これは私の意見なんですけど、探究をやるためには、ICT・先生・地域の3つが揃っている必要があると思います。
まず、ICTは外部の人との連携やフィールドリサーチに絶対に必要です。
地域が開かれていることも重要で、なぜなら地域には社会課題のリソースがあり、子どもたちに問いを提供するようなものがあるからです。
そして、探究的な学びを提供するためには、先生方の労働環境を改善することも必要不可欠だと言えます。

そう考えると渋谷区は、既に布石が打たれているんですよね。下記の表のように、タブレットの配布や先生向けのサポートプログラム、地域一体型の活動、学校の建て替え計画などといった様々な取り組みが行われています。

年表で見る世界と日本と渋谷の教育

神薗:最初にご説明したOECD Education2030ですが、実は、東日本大震災の後の東北OECDプロジェクトがその基盤となっているのです。2014年には、パリで東北の子どもたちが発表会を行い、津波や地震といった過酷な状況から立ち上がり、前を向いて生きるために学びがいかに大きく変わったかを示しました。これの成果が2015年に決定されたOECD Education2030に繋がりました。
OECD Education2030が示すように、スキルはもちろん大切ですが、そのスキルを何のために使うのかを深く追求することも非常に重要です。日本では新学習指導要領がその流れを汲み、また探究的な学びを促進する動きにもその価値が表れています。
2019年のGIGAスクール構想も、パンデミックの影響でその2年後に急速な加速が見られましたが、渋谷区では2017年には既にタブレット導入などの取り組みが行われていました。2022年には、カリキュラムの変更が必要であると中央教育審議会から答申が出され、そして2023年には授業時数特例校制度導入へと進展していったのです。

神薗より、改めて年表に沿った説明を受けると、10年ほど前から教育の在り方に大きな変化が見られたことがよくわかります。いきなりやるぞ!と始まった話ではなく、渋谷区は着実に準備を進めてきたことが理解できます。

続く【中編】では、
埼玉県戸田東小で校長を務め、実際に探究学習の舵取りをなさった小髙美惠子先生と、ソニー教育財団での経験を経て、現在はご自身が立ち上げたミライプラスにて探究的な学びに携わっておられる小林誠司さんから、お話を伺います💡

★神薗まちこのLINE公式アカウント★
情報発信やご相談受付などを強化中!よろしければご登録をお願いします。
LINEのご登録はこちらから!

★神薗まちこの各種SNSはこちら★
InstagramFacebookX(旧Twitter)にて、様々な情報を発信しています!
よろしければフォローやシェアをお願いします✨

★神薗まちこのHPはこちら★



いただいたご支援は、渋谷papamamaマルシェの活動資金(イベント運営費用、取材、見守りボランティア謝礼など)として使わせていただきます。