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解雇が有効(適法)であるための条件は?

第82回で強行法規違反による違法な解雇について、第83回第84回では労働契約法第16条に絡んだ違法な解雇について解説しました。ややこしくなってきたので、ここで復習の意味もこめて、違法な解雇について整理しておきたいと思います。

ちなみに、解雇が違法であるなら、その後、本人訴訟の労働審判ないし民事訴訟で地位確認請求あるいは損害賠償請求をして、その違法な解雇に対抗していきます。しかしここでは、「その解雇は違法である」という解説までにとどめ、その後のプロセスは後のnoteで説明とさせてください。

解雇が有効(=適法)であるには、次の4つの条件すべてを満たす必要があります。

① その解雇が、労基法第20条が定める解雇予告手続きに従っていること
② その解雇が、就業規則に定められた解雇要件に従っていること
③ その解雇が、強行法規に違反していないこと
④ その解雇が、労契法第16条の客観的合理性と社会的相当性を伴うこと

まず、①について。第78回で述べたように、解雇は必ず普通解雇か懲戒解雇か整理解雇かの3つのうちどれかに当てはまります。しかし、その解雇が3つのうちのどれであれ、労働基準法第20条に定められた解雇予告手続きに従っていなければ、その解雇は違法です。(第82回note参照)

次に、②について。繰り返しですが、解雇は普通解雇か懲戒解雇か整理解雇かのどれかです。就業規則には、どのような具体的なケースで普通解雇になるか、懲戒解雇になるかが定められています(第78回note参照)。そうした就業規則上の要件に従っていなければ、その解雇は違法です。なお、周知されていない就業規則には、法的拘束力はありません。

次に、③について。第82回では6つの法律・条文を挙げましたが、それらに違反する解雇は、即、違法です。これを強行法規違反と言います。通常、②の就業規則に定められた解雇要件は、③の強行法規違反とはバッティングしないようになっているはずです。つまり、「その解雇は、就業規則に定められた解雇要件に合致しているが、強行法規に違反する」といったケースは基本的にはないということです(もしあれば争点になります)。

次に、④について。第83回第84回で述べたように、その解雇には、労働契約法第16条に基づいて、客観的合理性と社会的相当性の両方が伴っていなければなりません。客観的合理性と社会的相当性のどちらか一つでも欠けていれば、その解雇は違法となります。客観的合理性と社会的相当性の具体的内容については、第84回をお読みください(この後も、具体的に説明します)。

この時、③と④がバッティングすることはあり得ません。そもそも、③の強行法規違反の場合、その解雇は即違法ですから、④の客観的合理性と社会的相当性について考える必要もありません。逆に、③の強行法規違反がない場合、その解雇は④の客観的合理性と社会的相当性が伴うかどうかかで違法か適法かが判断されます。

しかし、②と④がバッティングすることはあり得ます。その解雇が②の就業規則で定められた解雇要件に従っていたとしても、従業員は労働審判ないし民事訴訟の場でその解雇の客観的合理性と社会的相当性を争点にすることも可能です。

なお、その解雇が②の就業規則に従っていないものであるなら、その解雇は違法ということになり、その時点で④の客観的合理性と社会的相当性について考える必要はありません。例えば少し極端ですが、「その従業員が飲み会に参加しないから」という解雇理由は就業規則に定められるはずもありませんから、その解雇は違法です。この時は、④の客観的合理性と社会的相当性について考える必要はないでしょう。(その意味では、②と④はバッティングしません・・)。

ところで、①②③を満たしているが、④の客観的合理性が伴っているとは言えない、しかしそのような場合でも、雇主の経営上の必要性からその解雇を正当化しなければならない状況である時、はじめて整理解雇の適法性、すなわち4要件(要素)を満たしているかが論じられることになります(第78回note参照)。

今回はこの辺りで区切ります。第84回では「客観的合理性」と「社会的相当性」それぞれの具体的な判断要素を挙げましたが、次回以降その判断要素についてもう少し具体的に掘り下げてみたいと思います。お楽しみに!

街中利公

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。


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