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すべりだい -春を待つということ。 #第2夜

初めましてのみなさまも、おなじみのあなたもこんにちは、MAKIです。

東京の空に雪が舞うと思い出すのは
かつて、一生懸命に恋をしていたあの頃。

北国生まれの彼の背中を愛おしく追いかけて
しあわせというマヤカシに浸っていた記憶は
まるで赤の他人の人生のように昇華され
干支が一周するというのは
これほどまでに冷静になることを指すと
しみじみと、
過去世くらい遠くに思うわたしがそこにいて。

生きているなかで
大恋愛なんて呼べる出逢いはそうそう無く
始まったそれを大恋愛だと思い込むチカラが
備わっているか否かで
運命の相手の数は変わっていくと気づいたのは
いつのことでしょうか。


わたしたちオンナの性として
このひとが大恋愛の相手だ、と決めた瞬間、
カラダの芯から見えない疼きのスイッチが押され
想うだけで体温が上がる現象を
目具合の準備だと本能が認識するのです。

汗ばんだって恥じらったって
理由もなく触れたがったりしたのは、

手を繋ぐだけで愛おしさがあふれだし
絡ませた指から伝わる心拍数が呼応し
ああ、
このひととまるごと蕩け合いたい、と
覗かれたら恥ずかしさでひとたまりもないような妄想で脳内が埋め尽くされていくことが
恋愛の初期衝動だったから。


そのひとの体温を感じる行為全般が愛撫で
8度7分の声を使うことを性技としてきた、
それがわたしの得手だったと振り返るのです。

では、いまのわたしは?


触れたい、と思って
衝動に任せて触れることが
好きなひとにだけ、できない。
スキンシップを取ることに
躊躇いがなかったはずのわたしが、
想いびとには、
素直にアプローチできない。


手順を間違うのが、怖い。
この恋を失うのが、怖い。

イップス、なのかもしれません。


つづく

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