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Boyfriend - Challenges by Ms Thandeka

テンデッカちゃんにはつきあって一年ほどになる彼がいる。彼女の自宅から乗合タクシーで45分ほどのところに住んでいて、SNSで知り合ったらしい。小さな食堂でシェフをしている。

高級ステーキハウスで働き始めて初めての休日、大家さん版「白熱教室(反省会)」を終えた後、大家さんとテンデッカちゃんと私の3人で近所のレストランでランチを食べて、その後、おやつにアイスクリームを買って、食べながら帰ろうかというところだった。テンデッカちゃんの携帯電話が何度か鳴って、彼が「いいものをあげるから帰ってきて」というらしい。最後は、バスターミナルまで迎えに行くから帰ってきて、と。

既に15時過ぎで週一日の彼女の休日はそろそろ終盤に差し掛かっており、明日も朝から仕事で、しかもこちらに引っ越してきてまだ一週間。大家さんは課題まで出して本気で彼女の挑戦を応援していて、しかも一週間働いてひとつもメニューが頭に入っておらず、片道一時間半かけて彼に会いに行ったり来たりしている場合でもないはず。それでも彼女は慌てて荷物をまとめて彼の待つ自宅へ帰って行った。大家さんは「あれだけ時間を掛けていま何をすべきか説明したのに彼女は全くわかっていない。これはちょっと関心しない」と、本気なだけに落胆の大きさが伺えた。

ただ、プライベートも大切だよね?という気もする。大家さん曰く「彼女の人生にとって重要なチャレンジで、そのことが理解できず、彼女がいま何をすべきなのかわかっていない、サポートできない彼に何の価値もない」とバッサリ。南アは割と嫉妬する文化のためか、パートナー間の暴力や虐待の被害が後を絶たない。例えば、彼女が友達と遊びに行くというだけでよく思わない彼がいるとも聞く。テンデッカちゃんの場合、彼女が都会に引っ越して、新しい職場で、しかも高級ステーキハウスで新しい出会いもあるだろうし、そうなると彼としては自分の立場が危うい、なんとか彼女と距離を保たなくては、と思うのも無理もない。

翌朝彼女は予定通り仕事に間に合うように帰ってきた。大変に余計なお世話だが、遅刻を心配していたのでちょっとほっとした。彼女は「私は自宅へ帰るのは嫌だったんだけど仕方なかった」といった感じの話しをしていた。

面白いなと思うのが、この件を意に介さず、この後も休日のたびに彼女は片道一時間半かけて自宅に帰っていく。教会に行くので、自宅の屋根の補修等、最初はいろいろ言いながら帰っていたけど、最近ではいつ戻るか共有するくらいの感じになった。ここにいる方が冷蔵庫に食べ物もたくさん入っているし、ベッドもふかふかだし、シャワーも電気も心配ないし、物理的には間違いなく快適だと思うのだけど、友達もいないし、大家さんや私とは英語で話さないといけないし、結局気兼ねなく過ごせる自宅が一番心地よいのかもしれない。他人に価値観を押しつけないことは重要なのだと思う。

テンデッカちゃんの挑戦は続く。

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