見出し画像

Prep. for her interview - Challenges by Ms Thandeka

Social development plan

いつも通りパソコンに向かって部屋でビジネススクールの宿題をやっていた日、母屋に住む大家さんに紹介されて初めてテンデッカちゃんに出会った。テンデッカちゃんは乗合タクシーで1時間半ほどかけて、この近所で大変評判の高級ステーキハウスのウェイトレスの面接に来ていた。

大家さん曰く、ステーキハウスのウェイトレスの月給はZAR10,000。チップの文化があるので頑張れば上振れも期待できる。テンデッカちゃんの現在の月給(ZAR4,800)の倍以上になり、アパートを借り、ピオちゃんを村から呼んで一緒に住むことができる金額になる。ステーキハウスの面接の機会は近所でかなり顔の広い大家さんが直接オーナーに交渉して取りつけていた。

テンデッカちゃんが工場で働き続けることは、ピオちゃんが母親であるテンデッカちゃんと離れたまま村で育つことを意味する。母と同じく村の高校を卒業し、村には仕事がなく町に出て工場で働き、何年働いても収入は一向に上がらない・・・このサイクルから一歩踏み出すためには教育が必要で、そのためにテンデッカちゃんがピオちゃんを村から呼べる経済力が必要なのだ、というのが大家さんのプランだった。大家さんは自分が経営する会社の収益の一部をテンデッカちゃんのお母さんとピオちゃんが暮らす村に様々な形のソーシャルディベロップメントとして充てており、テンデッカちゃんのお母さんとは20年来の友達だと言っていた。

Practice for her interview 

母屋でウェイトレスの面接の練習が始まった。大家さんが、なんでウェイトレスがやりたいのか説明してもらえますか?前職の辞職理由は?等、テンデッカちゃんに質問する。彼女の回答は全く聞こえてこない。完全に会話の内容を理解するには私の部屋は母屋から距離があるが、それにしても大家さんが質問しているはっきりしたトーンとは様子が違う。

英語で苦労している私が言うのもおかしな話だが、実はテンデッカちゃんは英語が得意ではない。テンデッカちゃんが特別なわけではなく、家族も友達も前職の工場の同僚も皆、ズールー語という言葉で話すため英語は使わない。高校卒業まで義務教育は英語で受けているが、南アフリカの公立教育は100点満点で30点取れれば試験に合格できるとも言われており、教育の質も関係しているのかもしれない。彼女が小さな声でとても自身がなさそうに答えているのは、久しぶりに英語を話すためだった。正直高級ステーキハウスのウェイトレスは厳しいかも・・・と思った。私のクラスメートは皆例外なく流暢に英語で話し、11の公用語がある南アフリカは基本皆が英語でコミュニケーションする、と思っていた。英語を殆ど話さないコミュニティがあることにこのとき気づいた。

Different sense of ethics

この日驚いたことがもうひとつ。面接で提出する履歴書に、新たな採用先が何かの際に前の職場にコンタクトするときの連絡先をリファレンスとして記載するのだが、テンデッカちゃんはお母さんの名前と電話番号を記載していた。大家さんは、「これは二度としてはいけないことだから、正しいリファレンスを書くか、リファレンスがないなら「ない」と書くか、どちらかに修正しないといけない」と彼女に説明していた。本当に誰かがリファレンスが必要でこの番号に連絡したとき、お母さんがうまく辻褄を合わせて話してくれることまで想定しているのだろう、とあとで大家さんに聞いた。

テンデッカちゃんの挑戦は続く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?