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事業承継にも強いプラットフォーマーへ。M&Aクラウドの第2フェーズを語る

マッチングプラットフォームを核にしたM&Aと資金調達の支援サービスを展開し、特にスタートアップ支援において強みを発揮してきたM&Aクラウド。M&A業界のプラットフォーマーを目指す当社は今、新たなフェーズに入ろうとしています。

先日デットファイナンスによる12.5億円の資金調達を行い、今後M&Aアドバイザー採用やマーケティングを一層強化していくことは、3月4日のプレスリリースで発表した通りです。そして、アドバイザーの採用強化を通じて私たちが目指すのは、事業承継領域での対応力アップです。

M&Aクラウドがなぜ今、事業承継への注力を打ち出すのか、M&Aクラウド×事業承継で何ができるのか。CEOの及川厚博が語ります。

創業時から温めてきた事業承継M&Aへの想い

M&Aクラウドと事業承継の組み合わせを意外に思われる方もいるかもしれません。確かに当社はこれまで「スタートアップM&AでNo.1」を掲げてきました。しかし、実は事業承継M&Aもまた、創業当初から事業計画の重要パートを占めていました。まずは、これまでの経緯からお話ししたいと思います。

M&Aクラウドは2015年、現COOの前川と私が共同創業した会社です。前川との出会いは、ある日コワーキングスペースに居合わせた北海道出身者同士という全くの偶然でしたが、私たちには2つの大きな共通点がありました。

1つは、それぞれ自分で立ち上げた事業の売却経験があり、その際に参考にできる情報が少なすぎて苦労したこと。「今、職場を探す働き手に向けた情報なら、ネットでいくらでも手に入るのに、事業を譲りたい起業家向けの情報はなさすぎる……」。2人とも同じ課題認識を持っていました。

もう1つの共通点は、どちらも父親が経営者であり、事業承継問題の当事者だったことです。私自身は「自分の手で社会を変える事業を興したい」という強い想いがあり、起業家の道を選びましたが、一方で父が大切に育ててきた事業や社員への想いも理解していました。ですから、同じく自分の希望に沿った道を選択し、結果的に父親の会社が廃業する形になった前川の気持ちはよく分かりました。「M&Aという手段があることも当時は知らなかった。後継者さえ見つかっていれば、存続できた会社なのに……」。同じ状況に直面している人は、日本中に大勢いるはずです。

自分たち世代の起業家のチャレンジを支えるためにも、親世代の築いてきたビジネスの存続のためにも、M&Aの活用が鍵になると私たちは確信しました。「この情報化時代に、M&Aの世界はアナログすぎる。もっと情報をオープンにして、誰でもM&Aを活用できるようにしたい」。それを端的に表現したのが当社のミッション「テクノロジーの力でM&Aに流通革命を」です。

スタートアップ支援と事業承継問題の解決は、どちらも日本経済が活力を維持していくために重要なテーマ。前者は「攻め」、後者は「守り」に位置付けられます。M&Aクラウドのロゴに対照的な2色を選んだのも、この両方に取り組んでいく意思表示でした。攻めを表現したInnovative Redと、守りを象徴するTraditional Blueです。いずれ事業承継M&Aに取り組むことは、創業時からの固い決意でした。

マッチングプラットフォームを核に、複数事業でユーザーニーズに応えてきた

M&Aの世界にテクノロジーを持ち込む手始めとして、私たちが選択したのはマッチングプラットフォーム。自分でM&Aプロセスを進める意思のある経営者でも、買い手とのファーストコンタクトの取り方が分からないことがネックになりやすいと分かったからです。オンライン上で、それも売り手が主体的に行動できるよう、買い手側がM&A戦略を公開し、買い手担当者に直接連絡できる場として、「M&Aクラウド」をローンチ。サービスの性質上、ITツールやオンラインコミュニケーションに慣れた若手起業家からユーザーが広がっていきました。

現在、当社はM&A業界でも数少ない複数事業を展開する会社です。もともと売却経験者2名で立ち上げた会社だけに、ユーザーニーズに応える形でサービスを増やしてきたためです。

マッチングプラットフォームでは、事業会社からの資金調達を支援するの「資金調達クラウド、オフラインのサービスでは、マッチング以降のM&Aプロセスにも伴走するアドバイザリーサービスの「M&A Cloud Advisory Partners(MACAP)。さらに、昨年は独立した経験豊富なM&Aアドバイザーが当社専属の契約エージェントとしてM&Aアドバイザリーを提供する仕組み「M&Aクラウドエージェントも発表しました。結果的にそれぞれがユーザーの流入チャネルともなり、ユーザーの多様化も進んできました。

M&Aクラウドだからできる事業承継の形がある

ここからは、今、当社が事業承継M&Aへの取り組みを強化したい背景をご説明します。まず挙げられるのは、当社がこれまで複数事業化を進めるにあたっての原動力ともなってきた、お客様への価値提供を最大化する視点です。

最近、事業承継M&Aが活発化している中でも、特に当社が注目しているトレンドとして、新たな視点で売り手のアセットを再活用しようとするケースが目立ってきたことが挙げられます。主に同業者が買い手となる従来型の事業承継と異なり、店舗や車両などのアセットを持つ売り手を取り込み、買い手独自のビジネスモデルに当てはめていく、新しいタイプの事業承継M&Aです。ゲームセンターのM&Aを繰り返しているGENDA、受託開発・SES領域のストロングバイヤーであるSHIFTなども、このタイプの買い手と言えます。

当社のお客様の中にも、実際にこうしたM&Aを希望する買い手がいます。買い手がメガベンチャーないしスタートアップであるケースが多く、これまで当社が培ってきたスタートアップ支援の知見を駆使しながら、売り手の事業承継にも貢献できる事例が今後増えそうです。

事業承継先を探している会社の側からも、「同業者に買われるよりも、新しいビジネスを展開している会社の方が将来展望に期待が持てる」という声が聞かれ、ニーズは相当あると見ています。こうした売り手とスタートアップの買い手をつなぐハブとして、M&Aクラウドは最も信頼いただける事業者になっていけると考えます。

事業承継M&Aにリソースを投入する好機が到来

当社が事業承継M&Aへの注力を決めた背景には、もう一つ重要な視点があります。M&Aクラウドが創業時から大切にしてきた経営理念、「企業価値最大主義」の視点です。

今、事業承継M&Aはますます活発化し、プレイヤーの数も増えています。将来的には、幅広いユーザーに対してプラットフォーマーとしてサービス提供していくことを目指す当社としては、ここで一定のプレゼンスを獲得しておきたいところです。

さらに株式市場においても、事業承継M&Aのプレイヤーへの評価は高まっており、上場を目指す当社としては、この好機を逃すべきではないと判断しました。

社内的にも、新たなチャレンジに踏み切る条件はそろったと考えています。これまでに、「資金調達クラウド」「M&Aクラウド」の2つをそろえ、経営者のニーズに応えてきたオンラインプラットフォームは、すでに一定の認知度を獲得。特にスタートアップ起業家の間では、それなりにメジャーなサービスになってきました。MACAPも日本国内ではまだ普及途上にあるスタートアップM&Aの世界で実績を積み、トップレベルの知見を持つプロ集団としてプレゼンスを築いてきました。

会社創業時に取り組むことを誓った日本経済活性化の「攻め」と「守り」のうち、これまでは「攻め」、つまりスタートアップM&Aの領域にリソースを集中させてきました。マッチングプラットフォームになじみやすいスタートアップM&Aでの認知度獲得を優先してきたためですが、ここからは「守り」、こと事業承継M&Aにもリソースを振り向け、プラットフォーマーとしてのカバレッジを拡大していきます。

「M&Aクラウドならではの事業承継M&A」にどう取り組む?

これまでスタートアップの支援において、当社はオンラインプラットフォームとアドバイザリーの双方をそろえ、各ユーザーのニーズに応じたサービスを提供してきました。事業承継においては、人力によるサポートの重要性が一層増していくと考えている一方、当社の強みであるプラットフォームとの融合も加速していきます。

たとえば、売り手のソーシングでは、MACAPのアドバイザーはプラットフォームに記事掲載中の買い手と連携し、リアルな買い手のニーズに即したレターをM&A対象の候補先に送ることもあります。受け取った会社にとっても、「M&Aクラウド」を見れば実際に売り手募集中の会社であることは分かるので、信頼性は高いと自負しています。

売り手起点の買い手候補探しでは、プラットフォームを核とした当社データベースを活用し、キーワード検索をかければ、精度の高いロングリストをごく短時間で作成できます。このスピードとクオリティも、売り手の満足度にかなり影響する部分です。

また、アドバイザーが売り手に代わってプラットフォームを活用し、効率的に買い手に打診できるのは、当社独自のメリットと言えるでしょう。プラットフォームの機能拡張やマッチング精度の向上にも、社内のアドバイザーなど営業サイドと開発サイドが連携し、精力的に取り組んでいます。

チームの面においては、これまでにも事業承継の経験豊富なアドバイザーが多数、MACAPに加わってくれました。これからさらに多くのメンバーを迎え、強い事業承継アドバイザリーチームを作り上げていきます。それぞれの得意分野の業界知識に加え、事業承継M&Aに欠かせない“親身さ”――売り手の揺れる心に親身に寄り添いつつ、さまざまな不安や希望にきめ細かく対応する力――に長けたアドバイザーを増やしたいと考えます。

対スタートアップの場合は、アドバイザーに求められる資質もかなり異なり、効率的でスタイリッシュなコミュニケーション、複雑なスキームに関する知見などが重要になりますが、これらの点でMACAPはすでに他の追随を許さないレベルに達しています。ここに今後、事業承継M&Aの経験値が融合していけば、先に触れたスタートアップ(買い手)×伝統産業(売り手)の「新しい事業承継M&A」においても、最強のチームができると考えています。

5つの“高齢化”に直面する日本社会。M&Aクラウドが提供できるソリューションとは

M&Aクラウドは今後の事業展開を通じ、日本社会にどう貢献していくのか。改めて今の私の考えをお話ししたいと思います。

創業時から「攻め(スタートアップ支援)」と「守り(事業承継)」の両面での経済活性化を掲げてきたことは、繰り返し述べてきました。では、なぜこの2つの方向性が必要とされているのか――その背景に目を向けると、日本社会がさまざまな切り口で「高齢化」に直面している現状が見えてきます。

M&Aクラウドは今後、以下の4つの高齢化に向き合い、課題解決に取り組んでいきます。

①日本の高齢化
労働人口の高齢化に伴い、各企業の人件費が重くなっていくと利益が目減りし、給与にも響いてきます。これは企業の活力を内部から失わせる要因ともなります。
特に成熟産業ではバックオフィスをいかに効率化するかが問われている中、M&Aは利益構造改善の抜本策と言えます。

②産業の高齢化
平成初期、日本のメーカーが世界の時価総額ランキングの上位を占めていた時代から、30年で情勢は一変しました。GAFAMが世界を席巻し、日本企業ははるか遅れを取っています。
日本社会も製造業の黄金期に作り上げられた価値観から早く脱却し、GAFAMに匹敵する新たな産業を育てていかなくてはなりません。政府もスタートアップ支援に本腰を入れ始めた今、スタートアップエコシステムの活性化のためには、資金調達やM&Aを巧みに活用し、強いスタートアップ、強い起業家が生まれていくことが鍵になります。

③企業の高齢化
伝統産業の中には、たとえばタクシー会社→ライドシェアのように、発想を変えれば新たな形で今後の社会にフィットしていけるポテンシャルを持つ企業もありますが、自ら変革していくことはハードルが高いものです。「新しい事業承継」として紹介したように、M&Aによって新たな血を入れることは、変革の大きな推進力になります。

④経営者の高齢化
事業承継M&A市場は活発化しているものの、まだ顕在化していないニーズも多いと考えられ、M&A業界のマンパワー不足は続くでしょう。未経験から十分な教育を受けることなく現場に出るM&Aアドバイザーが増えたことによるサービスクオリティの低下、ひいては業界の信頼失墜を招かないためには、真に当事者目線に立った、質の高いサービス提供を拡大していくことが求められています。

⑤VCファンドの高齢化
多くのスタートアップを資金面で支えるVCファンド。日本では2010年代前半に相次いで立ち上がったため、今、続々と償還期限を迎えています。一方、IPOをめぐる環境はよいとは言えない状態が続く中、VCの持ち株を事業会社に譲りたいとのニーズが高まっており、今後スタートアップのM&Aはますます活性化していくと見込まれます。

これらの5つの高齢化を見据えつつ、M&Aクラウドはスタートアップ支援にも事業承継にも対応できるプラットフォーマーとして、引き続き市場のニーズに応えるべく、新たな事業機会を模索していきます。

人材業界と同様に、M&A業界でも将来は業界のあらゆるニーズに対応できるプラットフォーマーが勝っていくでしょう。M&Aクラウドは今、業界最強のプラットフォーマーを目指す道のりにおいて、新たなフェーズに入りました。今後の事業展開にぜひご期待ください。



文:中名生明子


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