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地テシ:367 ゴールデンウィークに坂道を散策する、など

去る5/10は「BURAI3」映像配信の最終日だったり「天號星」BD予約開始日だったりしましたが、それぞれ気になる物へのアプローチはできましたでしょうか。終わる映像もあれば始まる映像もある。そういうもんです。そして次へと続いていくのです。多分。


さて、せっかく久しぶりのオフなのにゴールデンウィークに丸かぶりで、あまり散歩に出掛けられなかった粟根さん。前回も書いたけれど、博物館美術館も観光地も繁華街も住宅地も、だいたいがノンビリした人々で一杯なんです。まあ、私もノンビリした人のひとりなんですけれども、とにかく人が多くて大変なんです。
でも散歩には行きたい。初めての道を歩いてみたい。色んな発見をしてみたい。そんな私が出した答えが「じゃあ坂道にでも行けば良いんじゃない?」でした。え? 坂道? ええ、坂道ですよ。坂道だったら人は集まらないでしょ。


先日、JR鶴見駅辺りを調べておりまして、なにげなくGoogle Mapを拡大縮小しながら見ていたら、なにやら気になる表記を見つけました。それが「伊藤の坂」

Google Mapあるあるの同じ表記が連呼されるの図

ここ数年、Google Mapには道や坂の名前がどんどん追加されておりまして、原宿辺りの「旧渋谷川遊歩道路」とか渋谷本町辺りの「国府道」とか雑司ヶ谷あたりの「弦巻通り」とか早稲田辺りの「日無坂」とか、以前には表記のなかった(ような気がする)道や坂などが次々と記入されていっています。
いや、もちろん有名な青山通りとか山手通りなどは以前から表記されているんですけれども、そういうメジャーな道とかじゃない、もっとマイナーな、地元の人しか使わないような通り名が増えているような気がするんです。そういった道は割と古い街道や暗渠であるコトが多く、古街道・暗渠好きの私にとっては気になっちゃってしょうがないんですよ。

だもんですから、以前からこれらの気になる表記を見つけては散歩に行っていました。上に上げたいくつかにももちろん行ってきましたよ。いずれも地形に沿ったグネグネと曲がる細い道でして、実に興味深い土地でした。いや、普通の人ならば興味が湧かないかもしれませんが、その土地の歴史を感じながら歩いてみると中々に面白いモノなのですよ。


そんなワケでね、鶴見にある「伊藤の坂」ってのも気になっちゃったら気になっちゃうじゃない。気になっちゃったら行ってみたくなっちゃうじゃない。GWでも坂道ならば混み合いますまい。じゃあ行ってみましょうか。

まずはJR鶴見駅を目指します。もちろん京急鶴見駅でも構いません。

初めて降りましたよ、鶴見駅

駅の西側に出て線路沿いにちょっと南下すると曹洞宗大本山總持寺の巨大な入口が見えてきます。

立派な入口。寄っている暇は無かった

それもそのはず、鶴見駅の南西部は總持寺の広大な境内で占められているのです。地図で見ると驚くほどの広さです。
總持寺がこの土地に移転してきたのは1911年(明治44年)。その際に、山手側の人々が鶴見辺りに行く時に使用していた手枕坂が總持寺の境内に飲み込まれてしまい、その迂回ルートとして作られたのが伊藤の坂なのだそうです。
大正の頃、この辺りに伊藤吉三郎という豪商が住んでいたから伊藤の坂と呼ばれるようになったのだとか。伊藤宅には猛犬が二、三匹いて、吼えたり飛びついたりして怖かったのだそうです。

總持寺のすぐ横が伊藤の坂の入口
坂が始まりました。あんまりキツく見えないかもしれないけど結構キツイ

まあとにかくキツイ坂です。海側から一直線に登らずに変な形で迂回しているのは、少しでも勾配を減らそうとしているのでしょう。

グネグネと曲がりながら登ります

この辺りは地質学でも有名な下末吉台地が沖積低地に接するトコロですから急な坂道が多いのです。他にも面白そうな坂をいくつか巡ってみましたよ。

伊藤の坂の西横にある子生坂(こいけざか)。坂下には芭蕉句碑もあります
さらに西にある貝助坂(けいのすけざか)。もはや坂ではなく階段です

伊藤の坂の少し南、下末吉台地の端っこには朝陽山八幡宮があって見晴らしが良いという情報もあったのですが、鍵が掛かっていてお詣りはできませんでした。

鳥居の向こうにある鉄扉には鍵が掛かっていて登れませんでした

でも、ちょっと西にある鶴見花月園公園に登れば見晴らしが良く、広くて綺麗な楕円形の広場もあって楽しめます。大正から昭和初期に掛けて、この辺りには花月園という巨大な遊園地があったそうで、戦後には競輪場となり、その名残で巨大な楕円形の広場なんですね。

広大な楕円の広場。凧揚げをするご家族が多くいらっしゃいました
南西を向いている階段。この二人はずっと座っていました
南東を向いている造成地の階段。海側を向いているのでさぞや見晴らしも良いでしょう


さて、坂やら広場やら高低差を楽しんだ後は、最後にもう一つの目的地であるJR国道駅へ向かいましょう。国道駅? ええ、JR鶴見線には国道駅という駅があるのです。

京成線花月総持寺駅へ向かう陸橋。JRだけでなく京成線もチラッと見えます
こちらが国道駅。そのまんま国道駅

現在の国道15号線(第一京浜)に面している駅なのですが、この15号線は昭和初期には国道1号でしたから、国道という駅名もあながち大仰すぎるというワケではありません。ちなみに駅の東端は旧東海道に面していて、実は年始に訪れた生麦の近所です。
こちらの国道駅は名前が面白いだけではなくて、色んな意味でも有名な駅です。まずは約100年前の1930年(昭和5年)の開業からほぼ改修されずに使われている貴重さ。そしてかつては営業していたであろう様々な店舗が軒並み閉店しているという廃墟感。この昭和レトロ感満載の佇まいが鉄道ファンだけでなく廃墟ファン、レトロファン、写真ファンなどを惹きつけてやまないのです。

どう! この廃墟感! いや廃墟じゃなくて現役の駅舎です
外壁の窓もたまらない。おそらく創建当時のままでしょう
駅舎下のテナントが軒並み閉店しています

さすがGWだけあって、数多くのなにがしかのファンたちが集まって写真を撮っていました。やはり無人の廃墟感が求められやすいので、お互いフレームに入らないように譲り合った撮影会のようになっていましたよ。

ホームへ向かう通路からは上からのショットが撮れます

そしてもう一つ有名なのが、駅外壁には第二次世界大戦末期のアメリカ軍機による機銃掃射の弾痕が残っていること。約80年前の傷もそのままに営業されているんですね。

この無数の傷が機銃痕、らしいです。違うかもしれませんけど

前々から行ってみたいと思っていた駅ですので、伊藤の坂ついでではありますが訪れるコトができて感無量です。最後はそのまま駅舎に入って鶴見線で一駅だけ乗って帰りましたよ。


そんなこんなの鶴見駅周辺の坂と公園と駅舎の旅。いやあ、面白かったなあ。GWに出掛けてみるのもいいもんですね。って、そんなまとめかい。

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